頭がいい人は何が違うのかをみなさんにお伝えするこの連載。今日のテーマは「やる気のスイッチ」です。

 頭がいい人というのは、なんだかんだいっても、ちゃんと勉強しています。努力なんてしていないように見せていたって、こっそり努力していたりするものです。

 そうやって一生懸命に勉強している人や、実は勤勉な人の姿を目の当たりにしたとき、「自分はそんなに努力をし続ける能力はない」「努力が続くかどうかも才能じゃん!」と考える人は多いのではないでしょうか。僕も偏差値が低いときはそう思っていたなぁと思います。

 でも、そうではないんです。

「努力の天才」は案外ズボラだったりする

 東大に合格するために毎日10時間勉強していたなんていう人も、僕はたくさん見てきましたが、その人たちも、天性の才能によって真面目になっているというわけではありません。「努力の天才」なんて呼ばれたりする人も、朝は眠いし、やりたくない日だってあるのです。実際に付き合ってみると、案外ズボラな一面を見せてくれることもあります。

 努力を続ける「才能」なんてものはないんです。

 じゃあ一体、何が違うのか? それは「技術」の問題です。努力し続けられる人というのは「努力を続ける技術」を知っていて、自分の中にしっかり持っているのです。それを「やる気スイッチ」と言い換えてもいいでしょう。

 今日は、僕が頭のいい人を観察するなかで見つけた「努力を続ける技術=やる気スイッチ」を3つ紹介したいと思います。

 最初は「ちょっと残し効果」です。漫画『ドラゴン桜』でも紹介されています。

漫画で学ぶ「ちょっと残し効果」

『ドラゴン桜』第20巻・184限目「東大過去問対策術」©Norifusa Mita/Cork
『ドラゴン桜』第20巻・184限目「東大過去問対策術」©Norifusa Mita/Cork
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丸付けを、あえて翌日の朝に回す

 勉強や仕事は、0からスタートするときが1番大変です。

 例えば朝起きてすぐに「さあ!勉強だ!」ってならないですよね。「眠い!」「やりたくない!」「学校行きたくない!」って思った経験、皆さんもあるのではないでしょうか。物事はなんでもやり始めが一番大変なものです。

 そこでお勧めなのがこの「ちょっと残し」です。前日に仕事や勉強を「区切りのいいところ」まで終わらせず、ちょっとだけ「続き」を残しておいて、その「続き」から始めるというやり方です。

 僕は受験生のとき、数学や英語の問題を前日の夜に解くと、そのままベッドに入っていました。丸付けをせずにそのままにして眠るのです。

ボールを転がすように、スタートを切る

 そうすると朝になって「昨日のあの問題、合ってたのかなぁ」と気になりますよね。丸付けなんてそんなに時間のかかる大変なものでもありませんから、それだけはやろうという気になります。

 そして、間違っている問題があったら「これ、なんで間違えたんだ?」「あれ?なんで自分はこう答えたんだ?」と気になります。そうすると「じゃあ解説を読もう」「参考書に戻ろう」とそのまま勉強を続けられるわけです。逆に、全問正解だったら全問正解だったで「よっしゃ! 幸先がいい! このまま頑張ろう!」とその勢いのまま一日頑張れるわけです。

 ボールを転がすとき、最初にある程度の力が入っていれば、ボールはそのまま自然に転がっていきますが、最初の力が弱いと転がっていってくれません。ましてボールに触れもしないようでは、転がりようがありませんよね。それと同じで、やはり一番肝心なのは「最初の一歩」です。だからこそ最初の一歩に着手するハードルを下げることで、その後に勢いをつけるということが大事なのです。

頭がいい人が選ぶのは「喫茶店」と「リビング」

 2番目の「やる気スイッチ」は、「他人の視線がある場所で努力する」ということです。

 みなさんは勉強や仕事に集中したいとき、誰も見ていない個室などで頑張ろうとしていませんか? 一人きりの空間のほうが集中できるとおっしゃる方は多くて、そういう場面も、確かにあるかもしれません。

 しかし、努力を継続するとなった場合、誰かに見られているところのほうがいいことが結構あります。「サボったら誰かが見ているかもしれない」「他人に怠けていると思われたくない」という意識は、人間をいい意味で縛ってくれます。例えば喫茶店で勉強しているようなとき、「今ここで寝ていたら、隣の奴から怪訝(けげん)な目で見られるかも」という意識が働くと、それだけでも長時間頑張るモチベーションになります。

 喫茶店までいかずとも、例えば家で勉強や仕事をするときに、自室からリビングに移ってみるというのもいいと思います。

 『ドラゴン桜2』に「東大合格必勝法 家庭の10カ条」が出てきます。ドラマ日曜劇場「ドラゴン桜」でも使われ、受験生の家庭などで話題になった10カ条です。

『ドラゴン桜2』第5巻・37限目「家庭の10カ条」©Norifusa Mita/Cork
『ドラゴン桜2』第5巻・37限目「家庭の10カ条」©Norifusa Mita/Cork
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 このうちの6番目に「リビングはいつでも片付けておくこと」という項目があります。

 10カ条のなかでも、特に「なぜ?」と思われる方が多い項目ですが、なぜかというと、リビングがいつもきれいであることで、受験生が「リビングで勉強する」という選択肢を持てるからです。自分の部屋で勉強していて煮詰まったときに、リビングに移動して勉強していたという東大生って、意外と多いです。確かにちょっと集中力が切れてきたときに「場所を変える」というのはいい選択肢で、そこに「他人の視線」があると緊張感も高まります。僕もやっていました。

「今の自分の力は偽物かも」という不安

 では最後、3番目の「やる気スイッチ」は、「自分の成長を、自分で実感する」です。

 『ドラゴン桜』で、桜木建二先生が、人間は「成長」を実感すると、「もっと努力しよう」という気持ちになれると語るシーンがあります。

『ドラゴン桜』第14巻・127限目「成長した!」©Norifusa Mita/Cork
『ドラゴン桜』第14巻・127限目「成長した!」©Norifusa Mita/Cork
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「今日の70点」を何と比べるか?

 「今日は70点だった」という結果をどう見るかは、人それぞれかもしれません。けれど、「昨日は60点だった」「1カ月前は60点だった」と、過去の自分と比べて「成長がある」と捉えられれば、やる気が湧いてきます。「今日は70点だった」が「明日は80点取れるかもしれない」になり、「このままいけば100点だって取れるかもしれない」というモチベーションに変わっていきます。

 今やっていることに意味がないと感じると、人は「こんなことやっても意味ない」「やりたくない」と思ってしまいます。今の自分の努力が、次につながっているんだという意識がないと、努力は続かないのです。だから、過去に努力したことの結果が、今に表れてきているんだという実感を持つことが非常に重要で、努力を継続させてくれるのです。

 だからこそ必要なのは、進捗の管理です。

 「進捗管理」とは、「今、自分のやっていること」を、あとどれくらい頑張って継続すれば「ゴールに到達するか」を知ることです。例えば、ToDoリストを作って「あとこれくらいやれば終わりだ」と考えてみたり、テストを受けて自分がどこまで成長できているのかを把握したり、勉強の予定や実績を手帳に書いてみたり。いろんな進捗管理がありますが、東大生を観察していると皆、自分なりの進捗管理の方法を工夫していることに気づきます。進捗を確認することで、自分の前進と成長を実感し、やる気に変えています。

 いかがでしょうか?

 人生には「やりたくないこと」があふれていて、「やりたくない」と思ってしまうのは、変えようのないことです。けれど「やりたくない」と思いながらも、なんとかやり始めて、継続させるための工夫というのは、いくらでもあります。今回紹介した3つの「やる気スイッチ」は、僕が個人的にお勧めする「ベスト3」ではありますが、数ある工夫のほんの一部にすぎません。

 みなさんは「最初の一歩」を踏み出すために、どんな工夫をされているでしょう。ぜひ、頑張ってください!

(次回に続く)

日経ビジネス電子版 2021年9月3日付の記事を転載]

本連載を基にした新刊が好評発売中です。偏差値35から東大を目指し、合格した著者だからこそわかる、「頭がいい人と、そうでない人の違い」とは? 「分解力」「裏技力」「アップデート力」など20個の力に分けて、漫画『ドラゴン桜』を使って解説します。「頭のよさ」をつくるのは、思考と行動、心の習慣。だから、誰だって、いつからでも、頭をよくできる! そんなメッセージをこめて、解き明かします。

西岡壱誠(著)、日経BP、1760円(税込み)