「頭がいい人とそれ以外の人の違い」について、偏差値35から東大に合格した僕(西岡壱誠)が考える本連載。今回のテーマは「なぜ?」の力です。

「なぜ?」の力というのは、なかなか奥深いテーマで、頭のよさの本質を突くと同時に、昨今の入試トレンドを読み解くうえでも重要であり、そのため、今回の原稿はとても長くなってしまいました。そこで今回と次回の2回に分けて、お届けします。ぜひ最後までお付き合いいただければと思います!

 みなさんは日常生活において「なぜ?」と感じることはありますか?

 頭がいい人ほど「なぜ?」が多いと、僕は感じます。もっといえば、「なぜ」を「なぜ」 で終わらせず、そこから仮説を立てて、検証し、理由を突き止めるということを、マメにやっています。頭がいい人とそうでない人とを分けているもののひとつに、この「なぜ?」 という疑問の質と量があると思うのです。

せっかく「なぜ?」と思っても……

 人間、生きていれば、普通に生活しているだけでも、疑問に感じることや、不思議に思うことはたくさん出てくるはずだと思います。しかし、多くの人は、自然に湧き上がる「なぜ?」を無視してしまいます。せっかく「なぜ?」と思っても、次の瞬間には、「そんなこと考えても仕方ない、何の意味もない」と、思考停止してしまったりします。そんなふうに考えてしまっている人は、自分で自分の頭をよくする機会をみすみす逃しているのかもしれません。

 この連載の第1回( 『ドラゴン桜』が教えてくれる「頭がいい人と悪い人の決定的な差」 )でも取り上げた、『ドラゴン桜』の国語特別講師、芥山龍三郎(あくたやま・りゅうざぶろう)先生の叱咤激励を思い出してください。

『ドラゴン桜』第5巻・44限目「屋外での授業」(C)Norifusa Mita/Cork
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 「だからあなたはバカなのだ!」

 こんな厳しい言葉を、芥山先生が矢島勇介に投げかけたのは、どんなタイミングだったでしょうか?

「ちょっと調べてみる」の壁

 そうです。東大を目指す矢島と水野直美に、駅の案内表示に外国語があることを指摘し、「なぜか?」を、尋ねたときのことでした。しつこく問われてキレた矢島に、芥山先生が投げかけた言葉は強烈ですが、的を射ています。「なぜ?」を考えるのが面倒になった瞬間、 僕らは確実に、頭が悪くなっていきます。

『ドラゴン桜』第5巻・44限目「屋外での授業」 (C)Norifusa Mita/Cork
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 では、日常生活において、僕らのなかから「なぜ?」が出てくるのは、どんなときでしょうか?

 例えば、テレビでニュースを見ているとき。「円安によって家計の負担が増加」 と聞いて、「なぜ?」と一瞬、思ったりしませんか? 円安というのは、円の価値が下がるということ。とすれば、例えば1ドルのコーラがあったとして、これまでは110円で買えたのが、140円かかるようになるようなもので、 コーラが値上がりするのと一緒。こういうことが、コーラだけでなく、いろんな商品で起きるわけだから、確かに家計は苦しくなる……。こういう理屈をパッとわかって、納得できているという人は、意外に多くないと思います。納得できていなくても、「テレビでそういっているし、そういうもんなんだね」という感じで流してしまって、深く考えていない人も結構いるんじゃないでしょうか。

 あるいは、街を歩いているとき、わりと近い距離に同じチェーンのコンビニがあるのを見かけて、「なぜ、こんな近い距離に2つもお店を出しているんだろう」などと疑問に感じたことはありませんか。ちょっと調べてみれば「ドミナント戦略」というマーケティング用語に出合ったりします。けれど、仕事で必要にでもならないかぎり、「ちょっと調べてみる」ということをする人はあまり多くないと思います。

 円安の意味を一瞬、立ち止まって考えなおす。なんでコンビニが密集しているのかを、 興味本位で調べてみる。こんなふうに、毎日、何かしらの「なぜ?」をつかまえて考えていると、自然と新しい知識が頭に入ってきて、勉強になります。そして何より、先生や親にいわれなくても、自分からいろんなことを考え、学ぶことができる人になっていきます。 「頭のよさ」というのは、こうして身についていくものです。

 僕が東大生と接していて、一番「頭がいいんだな」と思うのは、一緒に勉強しているときとか、宿題のレポートを見せてもらったときとかではありません。では、どんなときかというと……。

街歩きでわかる「東大生の頭のよさ」

 実は、ただなんとなく一緒に街を歩きながら、しゃべっているときです。この人たちは、普段からこんなに「なぜ?」に気がついているのかと、驚かされます。

 最近、冷凍餃子の自動販売機をよく見かけるようになったが、これは感染症が流行しているからではないかとか、畑にソーラーパネルがたくさん置いてあって、どうやらこの地域は太陽光発電が盛んなようだとか、東大生は街の小さな変化や違いに敏感です。

 変化に気づくとさらに、「なぜ、増えたのだろう?」「本当に、盛んなのだろうか?」「本当だとすれば、なぜだろう?」などと、疑問を見つけてはそれについて考察しながら歩くのです。

 その姿はさながら、「外国語がある案内表示から推測できること」を解説する、芥山先生のようです。「なぜ?」から始めて、さまざまな考察を繰り広げるのが東大生で、芥山先生も同じです。

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『ドラゴン桜』第5巻・44限目「屋外での授業」 (C)Norifusa Mita/Cork
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読解力を上げるには、「なぜ?」が必要

 普通の人は、仮に「なぜ?」と思っても、深くは考えずに放っておいてしまいがちです。

 「まあ、いいか」「考えてもわからないし」などと、疑問をそのままにして忘れてしまうのは、僕自身の自戒もこめて、よくあることだと思います。しかし、東大生は、街歩きの途中に見つけた「なぜ?」にきちんと向き合います。仮説を立てたり、仮説を検証するための検索をしたり、謎を解くのに役立ちそうな問いを立てたりするなどして、「なぜ?」の解決までたどりつこうとするのです。

 この力こそが、頭のよさの土台です。好奇心旺盛であると言い換えてもいいでしょう。

 芥山先生は、「なぜ?」から始まる推測が、「正しく読む」ことにつながるといいます。 なぜでしょうか?

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『ドラゴン桜』第5巻・44限目「屋外での授業」 (C)Norifusa Mita/Cork
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 正しく読むとは、書いてある内容と筆者の意図がしっかり把握できる読み方。そして、筆者の意図を把握するには、文章を読みながら、「なぜ?」と筆者に問いかけ、その答えを推測する姿勢が欠かせない、ということです。読解力を上げるには、「なぜ?」を問いかける習慣が必要ということですね。

 国語だけでなく、理科の勉強でも、「なぜ?」の力が重要であると『ドラゴン桜』は説いています。

 理科特別講師の阿院修太郎(あいん・しゅうたろう)先生は、理科嫌いの矢島と水野に、理科の面白さを伝えるため、精子と卵子の受精について問う、中学入試の問題を出します。そこになんと、芥山先生が”参戦”します。

理科も国語も土台は同じ

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『ドラゴン桜』第7巻・61限目「精子と卵」 (C)Norifusa Mita/Cork
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 「なぜ?」を解き明かしたい気持ちは、理科にかぎらず、すべての学問の土台であり、「理科も国語も土台は全く同じ」なのだと、阿院先生は教えてくれます。そればかりではありません。

どうして、理科が嫌いになってしまうのか?

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『ドラゴン桜』第7巻・61限目「精子と卵」 (C)Norifusa Mita/Cork
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 理科の面白さは推理小説と同じ。つまり、「なぜ?」を解明するのが、理科の面白さ。小学生までは理科が好きだった水野や矢島が、理科を嫌いになってしまったのは、「なぜ?」が失われてしまったからなのだと。

 さて、東大生たちはいつ、この「なぜ?」の力を身につけているのでしょうか?

 この答えについては、次回。「なぜ?」力の観点から、教育格差の存在と、その乗り越え方について、考えてみたいと思います。

日経ビジネス電子版 2023年6月1日付の記事を転載]

本連載を基にした新刊が好評発売中です。偏差値35から東大を目指し、合格した著者だからこそわかる、「頭がいい人と、そうでない人の違い」とは? 「分解力」「裏技力」「アップデート力」など20個の力に分けて、漫画『ドラゴン桜』を使って解説します。「頭のよさ」をつくるのは、思考と行動、心の習慣。だから、誰だって、いつからでも、頭をよくできる! そんなメッセージをこめて、解き明かします。

西岡壱誠(著)、日経BP、1760円(税込み)