「頭がいい人とそれ以外の人の違い」について、偏差値35から東大に合格した僕(西岡壱誠)が考える本連載。今回のテーマは、前回( 『ドラゴン桜』に学ぶ、頭のいい人が「なぜ?」を問い続ける理由 )に引き続き、「なぜ?」の力です。

 僕の考える「頭がいい人の条件」のなかで、「なぜ?」を問いかける力は、最も本質的な条件のひとつです。「なぜ?」は、すべての教科・学問の基本。国語の読解力の基本でもあるし、多くの人が、子どものときには好きだった理科を嫌いになってしまう理由も「なぜ?」を忘れてしまうから。そして、僕の観察するところ、東大生の特徴は、朝から晩まで、日常的に「なぜ?」を考えているところにある。そんなお話を、前回はしました。

 さて、では、東大生たちはいつ、この「なぜ?」の力を身につけているのでしょうか?

「1日16時間の勉強」が可能な理由

 もちろん、大学に入ってから身につけたわけではありません。受験生活中からこの知的好奇心を生かして勉強をしてきたのです。

 僕もそうでしたが、東大に合格するとよく、「受験生のときは1日に何時間くらい、勉強していたの?」と聞かれます。「東大に入るくらいだから、1日10時間くらい勉強していたんじゃないか」と思うかもしれませんが、実はこれは間違いです。確かに、机に向かっていた時間は1日10 時間くらいという人もいますが、そもそも東大生たちにとって、勉強時間は「机に向かっている時間」だけではないのです。

 前回、述べたように、頭がいい人は朝、起きぬけにニュースを見ているときも、通学途中も、帰宅途中も、ありとあらゆるところで「なぜ?」と考え、その答えについて考察しています。そうなると、あらゆる場面が学びの場になります。

 つまり、1日24時間のうち、睡眠時間が8時間だとしたら、それを除く16時間は、ずっと勉強していたといっても過言ではありません。どんなときでも、どんな場所でも、最大限に知識を吸収しようとする姿勢こそ、頭がいい人を、頭がいい人たらしめている習慣のひとつです。

 このように、常に好奇心旺盛でいること、知識に貪欲であることは、できれば幼少期から身につけておきたい習慣です。

 『ドラゴン桜』のなかに、桜木建二先生が水野直美の「思考力の弱さ」について、考察する場面があります。

思考力と家庭環境の関係性

 東大を目指す水野が書いた小論文を初めて読み、あまりのレベルの低さにショックを受けた桜木先生。その原因は、幼少期の母親、父親とのコミュニケーションにあると芥山先生はいいます。

『ドラゴン桜』第5巻・47限目「桜木の説得」(C)Norifusa Mita/Cork
『ドラゴン桜』第5巻・47限目「桜木の説得」(C)Norifusa Mita/Cork
画像のクリックで拡大表示

 水野はシングルマザーの母と二人暮らしで、母が営む小料理店に住んでいます。母の恋人も出入りする自宅兼店舗には、どこか荒んだ空気も感じられ、そんな実家から「自分の力で出ていく」というのが、水野が東大を目指す強いモチベーションになっています。

『ドラゴン桜』第1巻・9限目「スパルタ合宿」(C)Norifusa Mita/Cork
『ドラゴン桜』第1巻・9限目「スパルタ合宿」(C)Norifusa Mita/Cork
画像のクリックで拡大表示

 そんな水野の幼少期の環境が、思考力の形成にマイナスに働いたというのは、なぜでしょうか? その理由を芥山先生と桜木先生が解説します。

子どもの疑問は、本当に鋭いのか?

画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
『ドラゴン桜』第5巻・47限目「桜木の説得」(C)Norifusa Mita/Cork
『ドラゴン桜』第5巻・47限目「桜木の説得」(C)Norifusa Mita/Cork
画像のクリックで拡大表示

 要するに「なぜ?」の考察が、幼少期から習慣化されていれば、考える力が身につくということです。

 しかし、そのような環境に恵まれずに育った人は、水野にかぎらず、多くいます。 「なぜ?」が大事といわれても、すぐに「なぜ?」が思いつかないとしたら、そういう事情も関係しているかもしれません。

 そうだとしても、あきらめる必要はありません。大人になってから、「なぜ?」の力を鍛える方法も、たくさんあります。

教育格差を乗り越える「型」の力

 芥山先生は、「なぜ」を起点とした、議論の「型」を身につけることを、水野に勧めていました。こんな「型」です。

画像のクリックで拡大表示
『ドラゴン桜』第5巻・46限目「型を覚えろ!」(C)Norifusa Mita/Cork
『ドラゴン桜』第5巻・46限目「型を覚えろ!」(C)Norifusa Mita/Cork
画像のクリックで拡大表示

 つまり、次の3ステップですね。

 STEP1:「なぜ?」に対して、自分なりの意見を述べる
 STEP2:自分の意見に対し、予想される反論を述べる
 STEP3:その反論を否定して、自分の論理の正当性を証明する

 このような型を使って、議論したり、小論文を書いたりすることは、「なぜ?」の力を高めるトレーニングになります。「型」の力は、侮れません。

『ドラゴン桜』第5巻・47限目「桜木の説得」(C)Norifusa Mita/Cork
『ドラゴン桜』第5巻・47限目「桜木の説得」(C)Norifusa Mita/Cork
画像のクリックで拡大表示

 ちなみに、「なぜ?」の力を高める方法として、僕のお勧めは……

「なぜ?」力アップの推薦図書

 「なぜ?」がテーマの本を読むことです。「なぜ○○は××なのか?」といったタイトルの本は人気があって、多く出ています。

 代表格は、『さおだけ屋は なぜ潰れないのか?』(山田真哉著/光文社新書)。潰れそうで潰れないさおだけ屋さんなど、身近な「なぜ?」を起点に、会計学を学んでいくベストセラーです。

 『ニュースの”なぜ?”は世界史に学べ』(茂木誠著/SB新書)は、「ウクライナ紛争が起きたのはなぜか?」といった、ニュースから生まれた「なぜ?」を、歴史を振り返って探るという人気シリーズ。

 いずれも中身を読まなくても、疑問の投げかけとともに、それについての答えを知るヒントが本のなかにあると教えてくれるタイトルです。

 高橋書店の「楽しく学べる」シリーズも、『たのしい! かがくのふしぎ なぜ? どうして? 1年生』など、「なぜ? どうして?」を強調したタイトルで人気がある、子ども向けのシリーズです。ほかにも池上彰さんが監修された『なぜ僕らは働くのか』(Gakken)など、「なぜ?」をテーマとした本は多彩です。

 僕は子どものとき、『週刊そーなんだ!』(デアゴスティーニ・ジャパン)シリーズを愛読していました。科学や社会の不思議について、さまざまな「なぜ?」を交えてわかりやすく解説してくれるこの雑誌は、世の中のさまざまな物事をもっともっと知りたいと思うようになる原点だった気がします。

 「なぜ?」は、あらゆる科目の土台です。僕が特に好きな科目は地理なのですが、「地上の理(ことわり)」と書いて「地理」と読みます。それは地球上で起こっている現象や事象、人間の営みの理由について学ぶから「地理」と書くのです。

 そもそも勉強すること、つまり学問とは、「なぜ?」の連続で成り立っているようなものです。

 東大の入試でも、「理由を説明せよ」といった形で「なぜ?」に答えさせる問題が多く出題されます。それは、自ら疑問を提起し、仮説を立てて解決を目指せるような人材を求めているからだと思います。

 ちなみに、「なぜ?」型の出題は近年、東大にかぎらず、中学、高校も含めたあらゆる入試のトレンドになっています。例えば……

入試で急増する「なぜ?」型の出題

 「なぜ、鎌倉幕府は鎌倉に置かれたのか?」
 「なぜ、猪の肉を『ぼたん』、馬の肉を『さくら』、鹿の肉を『もみじ』と呼んだのか?」
 「自転車のかごに入れたボールと水筒は、急ブレーキをかけるとどう動くか? またそれはなぜか?」

 など、日常生活のなかにあふれる「なぜ」が問題になっています。

 上に挙げた3問のうち、最初の「鎌倉幕府が鎌倉に置かれた理由」は、中学受験でも高校受験でも、いまや定番の出題です。あとの2つは、私立中高一貫校の名門、麻布中学の入試問題からです。

 頭がいい人とそうでない人の違いは、常に「なぜ?」を頭のなかで巡らせているかどうか。「なぜ?」を通じて、新しい知識に貪欲でいるかによる。そんな話をしてきました。

 頭をよくするには、常に好奇心旺盛でいることがとても重要なんですね。逆にいえば、毎日、特に何を考えるということもなく、ただ流されて思考停止していては、頭はよくなりません。みなさんもぜひ、「なぜ?」をたくさん考えて、楽しく、賢く、毎日をすごしていただければと思います!

(次回に続く)

日経ビジネス電子版 2023年6月2日付の記事を転載]

本連載を基にした新刊が好評発売中です。偏差値35から東大を目指し、合格した著者だからこそわかる、「頭がいい人と、そうでない人の違い」とは? 「分解力」「裏技力」「アップデート力」など20個の力に分けて、漫画『ドラゴン桜』を使って解説します。「頭のよさ」をつくるのは、思考と行動、心の習慣。だから、誰だって、いつからでも、頭をよくできる! そんなメッセージをこめて、解き明かします。

西岡壱誠(著)、日経BP、1760円(税込み)