2022年5月にいったん閉店し、3年後に営業再開予定の三省堂書店本店。そのリニューアルチームでリーダー補佐も務める同店・営業推進部次長、店売推進担当の岡田健太郎さん。今回お薦めしてくれるビジネス書は、『“未”顧客理解 なぜ「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?』(芹澤連著/日経BP)と『Web3とDAO 誰もが主役になれる「新しい経済」』(亀井聡彦、鈴木雄大、赤澤直樹著/かんき出版)の2冊。

三省堂書店本店のリニューアルチームでリーダー補佐を務める営業推進部次長の岡田健太郎さん
三省堂書店本店のリニューアルチームでリーダー補佐を務める営業推進部次長の岡田健太郎さん
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新規顧客=“未”顧客の獲得にスポット

 前回 「三省堂書店・岡田健太郎さん 本店リニューアルに役立つ1冊」 でお薦め本として紹介してくれたのはビジネス系で、新しいコンセプトづくりに関する1冊だった。今回2冊目として紹介してくれるのも同じビジネス系だが、マーケティングに関する『“未”顧客理解 なぜ「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?』(芹澤連著/日経BP)だ。

 著者はマーケティングサイエンティストという肩書を持ち、企業のマーケティングや事業拡大を支援するとともに、社内研修などの講師を務めている。本書は2022年6月に発売された新刊で、本店のリニューアルオープンに向けて新規顧客開拓も担う岡田さんは、「新規顧客=“未”顧客の獲得にスポットを当てたマーケティング本はあるようでなかったので、思わず手に取った」という。

「データのない“未”顧客を獲得するマーケティング手法が分かり、新規開拓するのは実は楽しいことだと気づけました」
「データのない“未”顧客を獲得するマーケティング手法が分かり、新規開拓するのは実は楽しいことだと気づけました」
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 岡田さんが最も参考になったのは、「市場を俯瞰(ふかん)する」ことだった。

 「顧客像がない“未”顧客を獲得するには、市場を俯瞰して、自社の商品やサービスはもっと他の大きな市場の一部ではないか、と考えることが重要、と。この点が大変勉強になりました。例えば、書店はアパレルやエンターテインメント業界の一部なのかもしれない、という考え方。実際に、書店とアパレルやエンタメに相関があるかは分かりませんが、既存の市場にとらわれずに新しい視点を持つことで、新しい展開が生まれて“未”顧客の獲得につながることが期待できるわけです」

 本書は、漫画も挿入されていて、マーケティング本を読むのが初めての人にもとっつきやすい。「巻末に“未”顧客を理解するための難解な数式が載っていますが、それはマニアックに理解したい人向けでしょう。スルーしてもまったく問題ないと思います」と岡田さんはアドバイスする。

Web3とDAOの概念を理解する入門書

 そして、3冊目のお薦め本として紹介してくれたのは、『Web3とDAO 誰もが主役になれる「新しい経済」』(亀井聡彦、鈴木雄大、赤澤直樹著/かんき出版)。最近、売れ行きが伸びている話題の1冊だそうだ。

 Web3とは、現在のGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)などの巨大IT企業がデータを管理する中央集権型のインターネットWeb2から脱却した分散型インターネットを指し、次世代インターネットのスタンダードを担うと考えられている。「そのWeb3を実現する仕組みの一つとして注目されるDAO(分散型自律組織)のほか、メタバース(仮想空間)やNFT(非代替性トークン)の関連書籍は最近ようやく出そろった感じがしますが、概念的な内容のものが多く、理解するのはなかなか難しい印象です」と岡田さん。そのなかで本書を選んだ理由は、「構成が素晴らしくて、分かりやすいから」という。

『Web3とDAO』。本書を選んだ理由は「構成が素晴らしくて、分かりやすいから」
『Web3とDAO』。本書を選んだ理由は「構成が素晴らしくて、分かりやすいから」
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 「1章はWeb1からWeb2、Web3に至るまでの歴史について。2章はストーリー仕立てで、デジタル世界に疎い上司に最新技術を熟知した新人社員が教えるという設定で進みます。3章はWeb3の全体像をつかむために、NFTやメタバースなどのキーワードを解説し、4章以降は、DAOという新しい概念について具体的に展開します。この分野に明るくない私でも、読み進めるうちに、名だたる起業家やクリエイター、アーティストなどがなぜWeb3やDAOに注目しているのかがつかめてきます」

 翻って、「私が身を置く出版業界は、いい意味でも悪い意味でも旧業態の業界と言われています」と岡田さん。Web3やDAOは知らなくても生きていけることで、知らないと時代に取り残されるとあおるつもりもない。「ただ、今の自分の仕事には関係ないことだから知る必要はない、と毛嫌いする必要もないと思います」と言う。

 「Web3やDAOは今後の経済や社会、技術革新に大きく影響すると言われる概念なので、どの業界で働いていても、関わることになる可能性はあると思います。それがどのタイミングで訪れても、事前にある程度の知識を持っていれば、頭の中でイメージできて話についていけますよね。そのための入門書として、本書をお薦めします」

「Web3やDAOは今後の経済や社会、技術革新に大きく影響すると言われる概念。どの業界で働いていても、関わることになる可能性はある。そのための入門書としてお薦めします」
「Web3やDAOは今後の経済や社会、技術革新に大きく影響すると言われる概念。どの業界で働いていても、関わることになる可能性はある。そのための入門書としてお薦めします」
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取材・文/茅島奈緒深 写真/尾関祐治

「知らない」「使わない」「興味ない」を変える「ブランドの再解釈」

海外の豊富な先行研究に基づくエビデンスを示しながら、未顧客を理解して事業成長するためのマーケティング原則を、漫画や図表を用いて丁寧に解説します。マーケティング担当者はもちろん、販売、企画、開発などに携わるビジネスパーソン必携の1冊です。

芹澤連著/日経BP/2420円(税込み)