人生の後半は、どのように時間を使えば、充実した暮らしが実現できるのでしょうか。『 55歳から やりたいことを全部やる!時間術 』(日経ビジネス人文庫)の刊行を記念し、著者の臼井由妃さんと、日刊書評メールマガジン「ビジネスブックマラソン」編集長の土井英司さんがトークイベントを行いました(主催は丸善ジュンク堂書店)。その模様をお届けします。第1回は「人生が楽しくなる時間術」について。

60歳で5時間、70歳で3時間働けばいい

土井英司さん(エリエス・ブック・コンサルティング代表取締役)(以下、土井) 臼井由妃さんの「やりたいことを全部やる!」シリーズは17万部超え、著作の累計は170万部を突破していますね。今回は「55歳から」というタイトルが付いている「時間術」ですが、これは、人生の後半には後半の時間術があるということですか。

臼井由妃さん(著述家・講演家)(以下、臼井) はい。私の若いときは効率が一番。タイパ(タイムパフォーマンス。時間対効果)、コスパ(コストパフォーマンス。費用対効果)重視で走り回っていましたが、50歳の坂を越え、それなりに働けるけれど、ふと「このままの働き方をしていいのかな」と疑問に思ったんですね。

 なぜ、そんなことを思ったかというと、私の周りには「そろそろ人生後半に向けて、自分の暮らし方や生き方について考える」という人が多かったのです。そうか、私にもついにそのときがやって来たのかと、暮らし方、生き方を変えて、「これまで」と「これから」という感じにシフトチェンジしました。

 でも、この本を読むと、みなさん「えっ、そんな生き方でいいんですか?」と突っ込みたくなると思います。でも、いいんです。たぶん、みなさん働き過ぎです。

土井 僕も20代、30代は死ぬほど働いて、ボロボロでした。働いたら働いたなりにお金や見返りはありますよね。ただ、それだけでは満足できないのが人生の後半なのかな、という気がします。同じ働き方をしていると、むなしくなってしまうというか。

臼井 そうですね。勤め人の人生には必ず終わりが来るわけですよ。いくら仕事が好きでも。自営やフリーランスの人は、人生の最後まで仕事をしたいと思うかもしれないけれど、それでも仕事は相手があってできること。ですから、これまで通りのやり方を人生100年時代でずっと続けようと思うと無理があります。そこは自分でも走り過ぎた感がありますね。

「これまで通りのやり方をずっと続けようと思うと無理があります」と話す臼井さん。対談はオンラインで行われた
「これまで通りのやり方をずっと続けようと思うと無理があります」と話す臼井さん。対談はオンラインで行われた
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土井 著書『55歳から やりたいことを全部やる!時間術』には、仕事時間は「60歳で5時間、70歳で3時間」と書かれていて、これは魅力的ですね。

臼井 「そんな短時間でいいのか」と驚かれるでしょうが、具体的な数字があると意識づけになるので書いています。60歳のときは、目の前のことや締め切りを意識して、「集中して仕事をするのは5時間」と捉えてください。別に「5時間以上働いてはダメだよ」ということではありません。

土井 仕事時間を短くできると、チャンスも広がりますね。

臼井 ちょっと言葉は悪いですけれど、勤め人の場合はどうしても捕らわれの身です。それが定年退職に向けて、人によっては再雇用があるにしても、「これからは自分のために時間が使えるんだ」と考え方を変えるだけで、年を重ねることがつらいんじゃなくて、楽しくなると思います。だって、自由が増えるわけだから。

「いつかやろう」の「いつか」はない

土井 そのためにも「やめるべきことリスト」を作ろうと。これはどういうことですか。

臼井 みなさん、今まではやらなくてはいけないことがたくさんあって、真面目に「やるべきことリスト」を作っていたと思います。でも、人生後半に向けて、「本当はこれをやめたら楽になるんじゃないかな」ということ、自分にとって必要ではないことをランダムに書き出してみてください。最初はプライベートと仕事を分けなくてもいいですよ。パソコンよりも紙に書くのがお勧めです。

 書き出してみると人間関係が一番多いと思います。イヤイヤ参加している飲み会、何となく続いている手紙のやり取り、する必要があるのかなと思う会議──とか。今すぐそれをやめるわけにはいかないかもしれないけれど、まずは自分の立ち位置を確認するために書き出してみてください。

土井 なるほど。ボストン・コンサルティング・グループで日本代表を務めていた内田和成さんが『 仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法 』と『 論点思考 BCG流 問題設定の技術 』(いずれも東洋経済新報社)という本を書かれていて、「仮説思考は短期で問題解決するための本」、「論点思考はそもそもそれをやるべきなのかと考える社長の思考だ」とおっしゃっていましたが、55歳からは誰もが社長の思考を持ったほうがいいかもしれないですね。

「55歳からは誰もが社長の思考を持ったほうがいいかもしれない」と言う土井さん(写真/土井さん提供)
「55歳からは誰もが社長の思考を持ったほうがいいかもしれない」と言う土井さん(写真/土井さん提供)
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臼井 そう、まさにそうです。先ほども言いましたが、「勤め人の人生には必ず終わりが来る」ということを頭に置いておいてほしいんですよ。「これからは自分の時間を自分が営んでいく」というスタンスが必要です。

 みなさん、自分の人生のゴールっていつ来ると思いますか? 答えられませんよね。仮に「90歳まで生きる」「80歳まででいい」と決めたら、そこから逆算して、今が50歳だとしたら何年あるか、その年月で何をやりたいか、何をやり残したら悔しいのかを考えてみてください。一度、逆転の発想でゴールから今を見渡してみてほしいんです。きっと、目の前のことに追われて、やり残してきたことがあると思うんですよね。「とことん自由に生きる」が、人生の後半を楽しく生きる秘訣です。

土井 ただ、人生の後半戦は55歳から65歳、65歳から75歳、75歳から85歳、と均等に割れるものではなさそうですね。体力的な面も関係してきますし。

臼井 そうですね。やっぱり少しずつ体力は衰えてきます。気力だけではカバーできません。だから、正直言うと、50歳を過ぎたら、「やりたいことをいつかやろう」の「いつか」はないんですよ。それが仕事だったら「いつまでに納品」という意識があるのに。真面目な人ほど、自分のことは完全に棚上げにしてきたのでは、と心配です。

 ちなみに、私は人生のゴールを100歳に設定していますが、毎朝7キロのジョギングで体力づくりに努め、朝は今まで取った資格のアップグレードをするための勉強時間に充てています。

 みなさんも一度、「これまでの時間術」と「人生後半の時間術」について考えてみてください。これまでが「効率重視」だったのなら、人生後半は「質重視」に。「ゴールを目指す」から「ゴールから考える」、「詰め込む」から「余白をつくる」、「いつかやる」から「今やる」、「仕事が中心」から「自分が中心」で考えると、やりたいことが見えてくると思います。

構成・文/三浦香代子

「人生後半の達人」の実践ヒント

ベストセラーシリーズ最新刊! 大人の時間術は「効率」よりも「密度(質)」が大事。カギは、「捨てる、始める、大事にする」こと。仕事は「60歳で5時間、70歳で3時間」/「友達」は3人いればいい……など仕事、人間関係、学び直しのヒント満載。

臼井由妃著/日本経済新聞出版/880円(税込み)