人生の後半は、どのような人と付き合えばよいのでしょうか。『 55歳から やりたいことを全部やる!時間術 』(日経ビジネス人文庫)の刊行を記念し、著者の臼井由妃さんと、日刊書評メールマガジン「ビジネスブックマラソン」編集長の土井英司さんがトークイベントを行いました(主催は丸善ジュンク堂書店)。その模様をお届けします。第2回は「時間をムダにしない、心がラクになる人間関係」について。

「付き合いたくない相手」をリストアップ

土井英司さん(エリエス・ブック・コンサルティング代表取締役)(以下、土井) 前回「 臼井由妃×土井英司『やめるべきことリスト』が生む自由 」では、「人生が楽しくなる時間術」について聞きました。今回は人間関係について教えてください。

臼井由妃さん(著述家・講演家)(以下、臼井) 私が「やめるべきことリスト」を書いたとき、「実はあの人とは付き合いたくない」という仕事関係の人がずらりと並びました。そのノートはとても見せられません。でも、自分しか見ないのですから、正直に書いていいんですよ。「人間関係を整理しよう」と言うと、「人間関係はモノじゃない」と考える人もいると思いますが、ここは冷静に「55歳以降もこの人と付き合いたいのか」を考えてみてください。

土井 『55歳から やりたいことを全部やる!時間術』には「55歳からは会社の人とは付き合わない」とも書かれていますね。

臼井 はい。自分の世界を広げるためには、会社外の人との付き合いを増やしていくほうが楽しいですよ。

土井 どういう視点を持てば、面白い人に出会えますか。

臼井 私は新しい人間関係を構築しようと思って、自分が住んでいる静岡県熱海市で、ボランティア活動、マンションの管理組合など仕事以外のことを始めました。それで地域の高齢の方から古いしきたりを教わったり、若い方からは「臼井さん、○○だったらもっと簡単にできる方法がありますよ」と突っ込まれたりして、すごく刺激を受けました。

 そうした場所では50代、60代はまだまだ若手。男性の参加者が少ないケースも多く、男性の力が必要とされています。今まで見たことのなかった回覧板や地域情報にも目を向けてみてください。

「自分の世界を広げるためには、会社外の人との付き合いを増やしていくほうが楽しい」と話す臼井さん。対談はオンラインで行われた
「自分の世界を広げるためには、会社外の人との付き合いを増やしていくほうが楽しい」と話す臼井さん。対談はオンラインで行われた
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土井 僕は40代半ばのときに、自ら「遊び人です」と名乗る人に出会ったんですよ。「今まで遊び人って、会ったことないな。話してみよう」と思ったら、そこから世界的に著名な東京画廊の山本豊津社長を紹介してもらえて、ビジネスが始まったことがありました。心にゆとりがないと、そういう資産家の方には出会えない気がしますね。

臼井 そうなんですよ。普段からゆとりのある顔を心がけましょう。これから人生の後半を盛り上げてくれる人に出会うには、自分自身が心豊かで、健康で、いきいきして、笑顔でいないと。

友達は3人いればいい

土井 人生の後半戦では、資産を防衛するのも大事だけれど、ゆとりのある人はゆとりのある場所にしか集まってきませんよね。

臼井 私はあえて平日の昼間に美術館に行きます。そうすると、ゆとりのある人しか来ていませんから。そこで作品を鑑賞しているうちに、友達になった人もいます。今はもう、「真の友達は3人いればいい」と思っています。

土井 3人は少ないですね。どういう3人ですか。

臼井 「3人は少ない」と思われるかもしれないけれど、これが私が考える最善です。一方的に自分が何かを与えるのではなく、刺激をもらえ、気づきをもらえ、学びをもらえる相手がいいですね。

 私の場合は年代、性別の違う友達です。自分よりも一回りぐらい年上の女性とは趣味の世界で鍛錬し合うと同時にLINEやメールでお互いに生存確認をし、10歳ほど年下の男性にはパソコンスキルを教えてもらい、同年代の女性はご近所さんとして支え合っています。

土井 僕も自分の人間関係を振り返ったとき、損得勘定で付き合っていた人は人生の後半では関わりが薄れていくのかな、と思うことがあります。

 一方、とある会社の50代の営業部門トップの人がゴルフに誘ってくださって、「いつか勤め人の人生は終わるから、まだ会社の権限があるうちに、退職後も付き合いたい人だけをゴルフに誘ってるんだよ」と言われて、「すごいな、そこまで考えているんだ」と感心したことがあります。

臼井 いいですね。きっと、みなさんのお付き合いの中でも、そうしたつながりはできるはずですよ。

「見切る人」「付き合いたい人」は?

土井 心がラクになる人間関係とは反対に、臼井さんの「心がつらくなる人間関係」とは、どんなものですか。

臼井 「時間術」の著者なので、いろんな事情があるにしても、5分でも時間に遅れる人はダメですね。それがどんなに偉い方であろうと、地位のある方であろうと。それから女性の50代、60代って、一人ひとり本当に立場が違うんですよ。独り身の人、お子さんを嫁がせた人、孫の世話をしている人、年老いた親の介護をしている人…と。本当の意味での友達じゃないと、愚痴の言い合いになってしまうんですね。それはムダな時間ですから、そういうことを言い出した人からはフェードアウトしました。

土井 なるほど。ネガティブなものが積もっていきますよね。

臼井 人は、人に影響を与えるし、影響を受けるものです。人を育てるのも人だし、人をダメにするのも人。そう考えると、自分も気をつけないと、と思います。もし、今、この記事を読んでいる人で、「何だか最近ツイていないな」「何だかうまくいかないな」と思ったら、人間関係をチェックしてみるといいですよ。

 もちろん、Win-Winばかりではない関係もあるけれど、ずっと自分が与え続けるだけだったら、疲弊しますよ。55歳からはもういい大人なんですから、割り切っていいはずです。

「損得勘定で付き合っていた人は、人生の後半では関わりが薄れていくのかな」と話す土井さん(写真/土井さん提供)
「損得勘定で付き合っていた人は、人生の後半では関わりが薄れていくのかな」と話す土井さん(写真/土井さん提供)
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土井 では、臼井さんが付き合いたい人はどんな人ですか。

臼井 自分が苦手なことを知っている人、教えてくれる人ですね。先ほども言いましたが、一回り下のパソコンに詳しい男性はパソコンや動画編集に詳しいので、何か困ったことがあるとすぐ駆けつけてくれます。偶然ですが、彼はもともと私の著書を読んでくれていたそうです。

 それから私は主婦の経験がほとんどありませんが、主婦の方ですごく苦労されて、お子さんを育て上げた経験を、苦労話ではなく、すごく楽しそうにする方のお話は勉強になりますね。

 人に会うのは、時間が削られることでもあります。だからこそ人を選び、相手から何かを得られ、私も相手にとって必要とされる人間でありたいと思っています。

土井 僕の知り合いで山地章夫さんという方がいます。ヤマチユナイテッドというグループ年間総売上が250億円近い会社の経営者です。60歳を過ぎていますが、人生がすごく楽しそうなんですよね。経済的に成功しているだけではなく、部下にいろんなことを任せるのが好き。「THE 100VISION」といって部下に事業を任せて、100の会社をつくろうとしています。「55歳」がありがたい年齢だと思うのは、みなさん権限を持っているんですよね。

臼井 そう、権限もあるし、ある程度のお金もあります。

土井 だから、その人たちがちゃんと学んで、視野を広く持って、若い世代と付き合うと、本当にこの国がもっと面白くなると思うんですよね。

臼井 若い人を育てるだけでなく、自分が新しく事業を始めるにしても、むしろ55歳からのほうが向いている仕事もあります。例えば、年配の方が「結婚コンサルタント」と名乗ったら、「きっと多くの人を結び付けてきたんだな」と思われますよね。「50歳といえば終わり」という時代もありましたが、今のみなさんは知識も人脈もお金もあり、本当は行動力もあるんですよ。これから自由になれるときなのに、やりたいことをやらないのは、ただただ、もったいないと思います。

構成・文/三浦香代子

「人生後半の達人」の実践ヒント

ベストセラーシリーズ最新刊! 大人の時間術は「効率」よりも「密度(質)」が大事。カギは、「捨てる、始める、大事にする」こと。仕事は「60歳で5時間、70歳で3時間」/「友達」は3人いればいい……など仕事、人間関係、学び直しのヒント満載。

臼井由妃著/日本経済新聞出版/880円(税込み)