生涯の大きな出費となる「生命保険」。しかし一方で、「日本人は保険に入り過ぎている」という話もよく聞きます。どんな保険に入っておけば安心なのでしょうか? 『 「お金の増やし方のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。 』(日経BP)の著者の1人、藤吉豊さんが、お金の増やし方について書かれた100冊の書籍の内容を基に、お金を増やしたい人が「生命保険」について考えるべきポイントを解説します。

「日本人は生命保険に入り過ぎ」というのは本当か?

 僕たちは今回、お金の増やし方について書かれた100冊の名著から、著者たちが共通して「大切」とすすめるポイントを抽出しました。

 その中で、3割近くの本に書かれていたのが、「生命保険の見直し」でした。マネー本の著者の多くが、「日本人は、保険に入り過ぎている」「生命保険は、正しく入らないと損をする」と指摘しています。

 生命保険文化センターが発表した「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、生命保険(個人年金保険を含む)の世帯加入率は89.8%、世帯年間払込保険料は平均37.1万円です。

 仮に30年にわたって37.1万円を払い続けると、合計で1113万円になります。これだけの保険料を払っても、契約条件にあてはまらなければ、保険金を受け取ることはできません。

「保険というものは、基本的に『払ったお金が必ず返ってくる』ものではありません。これが大原則です。(略)

『保険料を支払う』ということは、サービスを購入しているわけでもありませんし、投資をしているわけでもない。あくまで、リスクに備えるためのもの」

(池上彰『新版 池上彰のお金の学校』/朝日新聞出版)


 「安心のために」と保障を必要以上に大きくし過ぎると、保険料が高くなります。保障は必要な分だけ用意して、出費を抑えるのが理想的です。

 支出を抑えるためにも契約内容を見直し、自分にとってどのような保障が最適なのかを考える必要があります。

◆生命保険を見直すタイミング
  • 結婚したとき
  • 子どもが生まれたとき
  • 転職したとき、自営業になったとき
  • 住宅を購入したとき
  • 専業主婦(主夫)の妻(夫)が再就職したとき
  • 子どもが独立したとき など

「保険を見直すと、大きな節約になる!!(略)民間の保険に入るのが悪いことじゃないんだけど……なんとなく入るのがダメ!! 入った人に『それってどんな保険なの?』って聞くと……だいたいの人が保障の内容をわかってない……」

(大河内薫、若林杏樹『貯金すらまともにできていませんが この先ずっとお金に困らない方法を教えてください!』/サンクチュアリ出版)


「ほとんどの人は、生命保険の大半を解約してしまってもなんの問題もありません。資産形成から考えれば、生命保険ほど効率の悪い金融商品はほかにありませんから、その利用は最低限にとどめるべきです」

(橘玲『新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』/幻冬舎)


あなたが入っている保険はどのタイプ? 4つの保険

 生命保険は、保険金がどのように支払われるかによって、「死亡保険」「生存保険」「生死混合保険」「その他の保険」の4つに大別できます。

(1)死亡保険
 保険の対象者(被保険者/保険に加入した人)が亡くなったとき、または高度障害状態になったとき、受取人に保険金が支払われる保険です。

 死亡保険は、保障される期間が定められている「定期保険」と、保険期間が一生涯続く「終身保険」に大別されます。

定期保険……保険期間が定められている。決められた保険期間内に、死亡または高度障害状態になったときに保険金が支払われる。死亡または高度障害状態に至らなければ、保険金は支払われない。いわゆる「掛け捨て保険」。

終身保険……一生涯、保険期間が続く。死亡したら保険金が必ず支払われる。定期保険よりも保険料が割高。途中で解約した場合は「解約返戻金」が支払われるため、保険料がまるごと掛け捨てになるわけではない(解約返戻金の額は解約時期や保険料払込期間に応じて決まる)。

(2)生存保険
 契約時に定めた満期日(保険契約時に定めた所定の期日)まで生存していた場合に、保険金が支払われます。学資保険(教育資金のための貯蓄型の保険)や、「個人年金保険」(老後資金のための貯蓄型の保険)も生存保険です。

(3)生死混合保険
 「死亡保険」と「生存保険」を組み合わせた保険です。一定期間中に被保険者が死亡した場合(あるいは、高度障害状態になった場合)には保険金が支払われ、ある一定期間まで被保険者が生存していた場合には生存保険金(満期保険金)が支払われる保険です。代表的なものに「養老保険」があります。

養老保険……亡くなった場合でも満期まで生きていた場合でも、同じ金額を受け取れる貯蓄型の保険(死亡した場合には死亡保険金、満期時には死亡保険金と同額の満期保険金)。老後の生活資金向けに貯蓄をしながら、万が一の死亡リスクにも備えられるという特徴がある。保険料は割高。

(4)その他の保険
 病気やケガによる入院、手術に備える「医療保険」「がん保険」、病気やケガで働けなくなった場合に備える「就業不能保険」、要介護認定を受けた場合にサポートが受けられる「介護保険」などがあります。

マネー本の著者たちが見直しをすすめる保険はこれ!

 マネー本100冊の中には、「医療保険の見直し」をすすめる意見が目立ちました。医療保険を見直すべき理由は、

「高額療養費制度を利用すれば、治療費の自己負担額を抑えられる」
「貯金でまかなうほうがお金の負担が少ないこともある」

からです。

 日本の健康保険制度は、長期入院や高額医療で治療費がかさんでも、患者の自己負担額を一定額に抑えられるしくみです。たとえば、「70歳未満で、年収約370万~約770万円」であれば、1カ月の医療費(自己負担額)の上限額は約8万円程度です(約8万円を超えた分が戻ってきます)。自己負担額は年齢と所得によって異なります。

 高額療養費制度では、入院中の食事代、差額ベッド代、先進医療にかかる費用をカバーできませんが、それでも多くの著者が「医療保険の必要性は低い」と考えていました。

「筆者は、これらの費用に民間の保険で備える必要はないと考えています。そもそも健康保険や高額療養費制度があることで、医療費はそれほどかからないのですから、食事代や差額ベッド代については、できるだけ貯蓄でまかなうようにすべきでしょう。また、先進医療が必要になる確率は非常に低いものです」

(頼藤太希『定年後ずっと困らないお金の話』/大和書房)


 この他にも、医療保険の加入については、

「医療保険に加入せず、保険料分を貯蓄に回したほうが何にでも使えるお金が残って得」
「貯蓄が十分にあるなら、掛け捨ての医療保険はもったいない」
「病気やケガには、『公的保険+貯金』で備えるのが基本」
「医療保険は、年齢が上がるにつれて保険料が高くなるので、高齢者は貯金のほうが合理的」
「公的な保障と現在の貯蓄だけでは病気やケガによるお金の不安を解消できないのであれば、加入を検討する」
「貯金が増えるまでのつなぎとして加入する手もある」
「フリーランスや自営業は、働けなくなると収入が激減するので、医療保険が必要な場合がある」

 といった意見がありました。

 厚生労働省が発表した令和2年度の生涯医療費は、2695万円でした(70歳未満は1331万円、70歳以上は1364万円)。自己負担するのは、そのうちの1~3割です(割合は年齢や所得に応じて決まる)。生涯医療費の約半分は70歳以降にかかっています。

 民間の医療保険は、公的保障の不足を補うものです。まずは自分がどれくらいの公的保障を受けられるのかを確認し、その上で、「公的保障と現在の貯蓄だけでは病気やケガによるお金の不安を解消できない」のであれば、医療保険で対応します。

「万が一への備え」の効率は、結局、貯金が一番いい

 保険には、「掛け捨て型」と「貯蓄型」があります。

貯蓄型保険……万が一に備えながら、将来のための貯蓄ができる保険。保険料の一部が積み立てられ、満期時(満期保険金)や解約時(解約返戻金)にお金を受け取ることができる。終身保険、養老保険、学資保険、個人年金保険など。

 貯蓄型保険には、

  • 保険料が毎月引き落とされるので、計画的に貯金できる
  • 解約したときに保険料の一部が返ってくる
  • 入院や手術をしなかった場合でもお金が受け取れる
  • 「もったいない」という気持ちになりにくい

 といったメリットがあります。

 ですが、マネー本の著者の多くが、「貯蓄と保険は別々に考えるべき」「資産形成のための手段として、貯蓄型保険は向かない」と考えています。

  • 途中で解約した場合、支払った保険料の全額が戻ってくるとは限らない。
  • 保険よりももっと利回りのいい金融商品が存在する。他の金融商品(米国株のインデックスファンドなど)に投資をしたほうがリターンは期待できる。
  • 保障の割に保険料が高い。
  • 支払った保険料を大きく上回る満期保険金は期待できないため、資産運用として考えると利回りはよくない。
  • ほとんどの貯蓄型保険は、長期的な資金準備を前提としているため、短期的な資金準備をしたい人には向いていない。
  • インフレに対応しにくい。

「貯蓄は生命保険でなく、リスクの幅が小さい堅実な投資信託を利用するなどしたほうがいいというのが私の意見です。金融商品が豊富な今の時代、生命保険で貯蓄を考えるのは得策ではないと感じます。つまりは、生命保険に求めるものは『保障』部分のみでいいのです」

(横山光昭『年収200万円からの貯金生活宣言』/ディスカヴァー・トゥエンティワン)


(写真:Shutterstock)
(写真:Shutterstock)
画像のクリックで拡大表示
「お金の本はたくさんあって、どれを読んでいいか分からない」…そんな方のために、お金の増やし方に関する名著100冊のエッセンスを凝縮した1冊ができました。なるべく負担なく将来の不安に備える方法が分かる。投資信託・保険・住宅・iDeCo・NISA・税金・外貨預金・FX・金利などの「お金の基本」が身に付く。100冊分のエッセンスを「大事な順」に読める1冊です。

藤吉豊、小川真理子(著)、日経BP、1650円(税込み)