相手に伝わらない残念な資料はどうして多いのか? その原因の1つが、誰に何を伝えるための資料なのか、すなわち「資料を書く目的」が不明確であることだ。「○○の概要」「○○について」のように資料のタイトルの抽象度が高いケースがそれにあたる。その改善テクニックを、『 ロジカル資料作成トレーニング コンサルタントが必ず身につける定番スキル 』(丸健一著/日経BP)から抜粋・再構成してお届けする。

残念な資料に抜けているもの

 残念な資料とは、書いてあることが相手に伝わらない資料のことだ。多くの人は自分が書いた資料が残念な資料なのかどうかは、判断ができない。判断するためには、残念な資料の症状を知っておく必要がある。症状は大きく3つの種類に分かれる。(1)何のために書いた資料なのかの目的が曖昧な資料、(2)結論が書かれていない資料、(3)結論の根拠が書かれていない資料の3つだ。

 本来は、目的・結論・根拠の3つ全てが資料に書かれていることが望ましい。例えば、(1)「自社製品の価格を決めたい」という目的の資料であれば、(2)結論部分には、××円という価格が明記されているはずで、(3)なぜ××円にすべきかの根拠も書かれているはずだ。3つの要素のどれかが欠けていると、相手には伝わらない。

 より大事なのは、(1)の目的を明確に定めることだ。何を伝えたいのかがわからない目的のない資料は、読み手を戸惑わせる。会社の中で作られる全ての資料は、最終的には何かしらの判断のもとになるはずだ。にもかかわらず、何を伝えたいのかがわからない目的のない資料を書くと、誰のためにもならない資料を作ることになる。

 目的のない資料が生まれるのは、得てして資料作成の指示を出す側の問題だ。他の部署や自分の部下に対して、そもそも資料を作成する目的が説明できていない。自分でしっかり考えて指示を出すのはとても面倒なので、「とりあえずまとめといて」「あり物でいいから」「概要がわかればいいから」と、その場しのぎの指示を出してしまう。このような指示では、資料の書き手は、本来ならば資料を書き始めることすらできないはずだ。当然、指示を出す側が、目的を具体化することが求められる。

 目的が明確であっても、結論と根拠を明確に書いていない資料は多い。これは基本的には、資料の書き手側の問題だ。自分の考えを明確に示すことを避けたり、あるいは結論の根拠を考えきれたりしていないと、しっかりと目的に対応する結論と根拠が書けないので、資料には関係ない情報だけが並ぶことになる。

本当に資料を書く目的を理解しているか

 まずは全ての資料において、資料を書く目的を定める必要がある。ビジネスにおいては、常に、議論をしたり、決断を委ねたりする相手がいるはずだ。その相手と、一体何を議論・決断するのか、すなわち資料を書く目的を事前に想定しなくてはいけない。

 目的は具体的に書かなくてはいけない。そこには理由が2つある。1つ目は、そもそも自分が何を書こうとしているのかを、しっかりと理解しているかチェックすることができるからだ。慣れていない人が目的を書こうとすると、「~のまとめ」「~の状況」「~の近況」「~の事例」「~の紹介」「~について」など、抽象度が高い表現を使う傾向にある。しかし、こうした抽象度の高い表現はそもそも何を書こうとしているのか、書き手が自分自身でわかっていない可能性が高い。

 目的を具体的に定めるために、語尾に「~を踏まえて伝えたいことや判断したいことは何?」と自分に問いかけてみよう。例えば「Xプロジェクトの状況」と最初に書いた場合、「Xプロジェクトの状況を踏まえて伝えたいこと、判断したいことは何?」と自分に聞いてみよう。人が少ないから増やしてほしいのか、予算が足りないのか、顧客の要望が定まらないのか、状況という言葉が含むものは多くあるはずだ。

 例えば、予算が少ないのだとすると、「予算が不足している理由」「必要な追加予算額とその根拠」などが資料を書く目的として出てくるはずだ。

なぜ、資料は残念になってしまうのか(写真/Shutterstock)
なぜ、資料は残念になってしまうのか(写真/Shutterstock)
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「聞き手に親切」な説明の仕方

 目的を具体的に書く2つ目の理由は、聞き手にとって親切だからだ。例えば、「Xプロジェクトの状況」と言われても、結論にどのような内容が来るかは全く想像がつかない。資料にはXプロジェクトに関わる全ての情報が詰め込まれているはずで、読んでも結局何が言いたいのかもわからない。一方で「Xプロジェクトの予算が不足している理由」と言われれば、少なくとも当初予算と実態がどの程度乖離(かいり)しているか、なぜそれが発生しているのかが説明されるのであろうと、想像がつく。

 「今から予算の話をするのだな」と最初にわかるのと、資料を読み終えてから「予算の話をしたかったのかな」と読み手に考えさせるのでは、読み手の負担の量が全く異なる。

 例えば、「筆者の自己紹介」という表現はまだ具体性が低い。みなさんは、今から筆者の何について説明されるか想像はつくであろうか? 趣味の話が始まるのか、年齢について話すのか、性別か、仕事の内容か、人生の悩みか、目標か、好きな服か、恋愛歴か、項目はたくさんある。筆者の全てを紹介しようとすると、大量の時間がかかってしまうのは想像がつくであろう。

 たかが自己紹介も、何のための自己紹介なのか目的を定めなくてはいけない。仮に仕事の顧客に対する自己紹介であれば、筆者が得意な仕事や、筆者の実績を紹介して、仕事を受注することを目指すだろう。例えば「筆者がA業界のプロジェクトが得意な理由」「筆者がA業界のプロジェクトで達成してきた実績」といった資料を用意するはずだ。

誰でも「伝わる資料」に改善させるノウハウを説く、画期的な1冊。

ぱっと見、ちゃんとしているのに、「残念な資料」「伝わらない資料」はそこら中に転がっている。年齢、役職、業種を問わず、様々な資料を添削してきたコンサルタントが、その原因と対策について詳細に解説する。

丸健一著/日経BP/1760円(税込み)