どうして残念な資料が多いのか? 多くの資料で、曖昧な言葉が使われていることが原因の一つだ。例えば、「我が社は攻めるべきだ」と書いてあっても、「攻める」の意味がわからない。海外に進出することが攻めなのか、研究開発費を倍にすることが攻めなのか、読み手にはわからない。残念な資料の改善テクニックを、『 ロジカル資料作成トレーニング コンサルタントが必ず身につける定番スキル 』(丸健一著/日経BP)から抜粋・再構成してお届けする。
キーワードだけでは誤解を招く
相手に中身が伝わらない残念な資料には、主に3つの症状がある。(1)何のために書いた資料なのか、目的が曖昧な資料、(2)結論が書かれていない資料、(3)結論の根拠が書かれていない資料、である。
本来は、目的・結論・根拠の3つ全てが資料に書かれていることが望ましい。例えば、(1)「自社製品の価格を決めたい」という目的の資料であれば、(2)結論部分には、××円という価格が明記されているはずで、(3)なぜ××円にすべきかの根拠も書かれているはずだ。3つの要素のどれかが欠けていると、相手には伝わらない。
前回「 『〜のまとめ』という資料のタイトルはなぜダメなのか? 」は、資料を書く「目的」を定めることの重要性をお伝えした。今回は、目的に対応する「結論」を書く方法をお伝えする。
資料の結論は可能な限り「具体的」に文章で書く方がよい。よくあるダメな例が、文章ではなくキーワードだけが並べられている場合だ。
キーワードだけ並べられていたりすると、読み手は意味がわからない。例えば、「競合がコストを削減している方法を明らかにする」という目的に対して、「2極化」や「2極化している」とキーワードだけ書いてある場合だ。少なくとも、「方法Aを選ぶ企業と方法Bを選ぶ企業に分かれている」と書かないと、方法を知りたいという目的に対応した結論、すなわち答えになっていないので、目的と結論の一貫性が保てない。
短すぎる文章に加えて、「→」などの記号や英語でごまかす場合もある。例えば、「1人当たりの労働時間を減らすために、総人員数を増やす」と書くべきところを、「人員増加→負担低下」と書いてしまったり、「垂直統合と水平統合のどちらかを採用すべきだが、結論は出ていない」と書くべきところを「垂直統合 vs 水平統合」と書いてしまう。
×:人員増加 → 負担低下 ○:1人当たりの労働時間を減らすために、総人員数を増やす
×:垂直統合 vs 水平統合 ○:垂直統合と水平統合のどちらかを採用すべきだが、結論は出ていない
カタカナや英語はなるべく使わない
結論部分には、曖昧な言葉を使うことをなるべく避けた方が良い。例えば、「我が社はより攻めるべきだ」と書いてあっても、「攻める」の意味がわからない。人によっては、海外に進出することを攻めと表現するかもしれないし、研究開発費を倍にすることを攻めというかもしれない。人によって解釈が分かれる言葉は避けた方が良い。
自分が曖昧な言葉を使っているか不安だった場合は、2つのことを試してみよう。1つ目は、カタカナや英語をなるべく使わないこと。2つ目は「例えば」「なぜならば」を文章につけてみることだ。
カタカナ・英語は、耳なじみがよく、賢くなった気がするが、実は相手に伝わっていない、あるいはそもそも自分も意味がわかっていないことが多い。リピート、ライフタイムバリュー、エンゲージメントなどなど。それぞれ意味がわかるだろうか?
例えばリピートも、定義が実は曖昧だ。1年ぶりに来店したことはリピートしたと言えるだろうか? 駅前のコンビニ、銀行、家具店、車のディーラーなどなど、業態によっても違うであろう。毎日来店するようなコンビニで1年ぶりに来た人はリピーターとは呼ばないかもしれないが、家具だったら頻繁に買い替えるものではないので1年ぶりの来店もリピーターと定義するかもしれない。
定義が曖昧なカタカナ言葉を使うくらいだったら、「1年以内に2回以上来店した客」と直接的に表現した方が良い。
もう1つ考えるきっかけを作ってくれる言葉が「例えば」だ。先の「攻める」という言葉に「例えば」をつけてみたら、具体例が出てくるはずだ。ここで具体例が出てこない場合は、資料を書いている本人が、実はしっかり考えずに結論を書いていることが多い。
それでも自分の書いた結論が薄いと思ったら、「なぜならば」をつけるとよい。「我が社はより攻めるべきだ。なぜならば、売り上げが昨年度比較で3/4に減少しているからだ」と書いてあれば、おそらく「攻め」の内容は売り上げ増につながる内容を書きたいのだと、自分も読み手も認識することができる。
ぱっと見、ちゃんとしているのに、「残念な資料」「伝わらない資料」はそこら中に転がっている。年齢、役職、業種を問わず、様々な資料を添削してきたコンサルタントが、その原因と対策について詳細に解説する。
丸健一著/日経BP/1760円(税込み)

