昭和世代から見ると、ナゾが多い「Z世代」。Z世代から見ると、昭和世代はえたいの知れない「昭和人間」。両者が共生するためにはどうすればいいのでしょうか。『Z世代の頭の中』(日経プレミアシリーズ)でZ世代を徹底的に深掘りした牛窪恵さん(世代・トレンド評論家)と、『昭和人間のトリセツ』(同)で昭和生まれの人間の不可解な生態をつまびらかにした石原壮一郎さん(コラムニスト)が語り合いました。2025年7月に紀伊國屋書店新宿本店で開催されたイベントの模様を収録。2回目はZ世代の親子関係、恋愛観・結婚観などについて。

Z世代は「いい子症候群」

牛窪恵さん(世代・トレンド評論家)(以下、牛窪) 前回、退職代行の話が出ましたが、今のZ世代は総じていい子で、「いい子症候群」ともいわれます。普段、いい子でいなきゃと思っているからこそ、ギリギリまで悩みを抱え込んでしまい、自分で「辞める」とは言いづらいんですよね。

 一般的には、親子関係も良好だといわれます。『Z世代の頭の中』でも紹介したのですが、「Hint-Pot」編集部の2023年の調査によると、大学の入学式どころか会社の入社式にも、14.4%の親御さんが出席しています。その手前の就活では、特に母親の発言力が高まっていて、マイナビの調査では「内定が決まったときにアドバイスをもらう相手」の1位が「父親・母親」。博報堂生活総合研究所では、頼れる現代の母親を「メンター・ママ」と呼びますが、Z世代の母親は共働きが多く、社会と深くつながっているからこそ、仕事についても相談しやすいのだと思います。

 ただ、先ほどの調査で「入社式に親が出席した」と答えた若者に「そのことをどう思ったか」と聞いたところ、「うれしかった、安心した」が45.4%。反対に「出席しないでほしかった、正直、嫌だった、恥ずかしかった」が35.2%。正直なところ恥ずかしい、でも言えない若者が、3人に1人以上いるんです。

「Z世代は総じていい子で、『いい子症候群』ともいわれます」と話す牛窪さん
「Z世代は総じていい子で、『いい子症候群』ともいわれます」と話す牛窪さん

石原壮一郎さん(コラムニスト)(以下、石原) これをZ世代の問題だと言うのはかわいそうです。どちらかというと、親の問題ですよね。親が手と口を出し過ぎている。我々の世代は「就職のことは親だけには聞いちゃいけない」と思っていました。なぜなら、自分が行きたい業界に行く際、最も邪魔になるのが親なんですよ。親の世代は高度経済成長期に育ったから、「鉄鋼業界が一番だ。ゲーム業界なんて遊んでるみたいじゃないか」とか言うわけですよ。特に母親は就職に口出ししそうですが、母親の過干渉、過保護は見ていて心配になりますね。

牛窪 私は長年、住宅や食品関係のメーカーさんなどと、家族について研究してきました。一般には母親が過干渉、過保護になりやすいご家庭って、夫婦仲があまり良くないんですね。その分、母親がわが子に依存してしまったり、自分の存在意義を子どもに求めてしまったりする。子どももそれが分かっているから、「お母さんがかわいそう」「かまわないで、って言いたくてもできない」と言うんです。

石原 母親は自分の存在がどこまで悪影響を与えているか、自覚しないといけませんね。昭和の時代には雷おやじっていましたよね。「黙ってオレの言うことを聞いてりゃいいんだ」という迷惑なおやじが。表面的な当たりはソフトかもしれないけど、今一部の母親が、同じように「迷惑な存在」になっているんじゃないでしょうか。

牛窪 雷おやじぐらい、分かりやすいとまだ良いのですが…現代の親子関係は、結構複雑なんですよね。

女性は恋愛よりも推し活

牛窪 昭和世代とZ世代の違いといえば、友達関係もそうです。私たちの時代と違い、今は「いじめ」が学校の中だけでなく、スマホに入り込んでくるから(「LINE外し」など)、24時間逃げ場がないんですよね。

 また、『Z世代の頭の中』の若者インタビューでは、「結局、先生に見て見ぬフリをされた」や、「大人は大ごとにしたくないみたいだった」といった声も聞こえてきました。早い段階から家族以外、特に大人に対する不信感を抱いていた若者も多いようです。同時に友達との仲も、一部の親友以外に対しては、一様にクールな印象でした。

石原 友達付き合いにそんなに深入りしないのは、傷つきたくないからですかね。

牛窪 というよりは、「深く分かり合える相手なんて、地球上にほんの一部しか存在しない」と、割り切っているようでもありました。

 また、インタビューでは恋愛や結婚についても聞いてみましたが、「仕事と結婚はトレードオフ(両立できない)」といったクールな言葉を口にする若者も複数いました。2023年卒の、就活中の若者に聞いた調査(マイナビ)でも、約6割の男性(学生)が「将来、育児休暇を取って、積極的に育児をしたい」と答えています。逆に言えば、「結婚して子どもができると、家事や育児に時間を取られる」「仕事に集中できない」と、女性だけでなく男性までもが感じているということです。

石原 ここ数年で「男のくせに」と言ってはいけない、という意識が浸透してきましたが…。でも、本当に育児と仕事を両立できている人がいるかというと、まだなかなか難しそうだなと。

「親が手と口を出し過ぎている」と話す石原さん
「親が手と口を出し過ぎている」と話す石原さん

牛窪 日本は働き方に、まだフレキシビリティーが足りないんですよね。多くの場合、正社員は週に5日間、9時5時で働いて、転勤もあるかもしれない。それが嫌なら、多少待遇が劣る「時短勤務」や「限定正社員」を選べと。

 また、先ほどのように、なぜ男性が「育休を取って、積極的に育児に参加したい」と考えるかというと、実は社会の変化とも深く関係しています。2021年の国立社会保障・人口問題研究所の調査では、未来の夫に「家事・育児能力や協力姿勢を求める」と答えた未婚女性(18~34歳)が、なんと96.5%もいました。一方、未来の妻に「経済力を求める」と答えた男性(同)は約5割(48.2%)。その水準はどれぐらいかと民間の調査を見ると、「年収300~400万円台」がボリュームゾーンです。それだけの年収を得ようとすれば、女性もフルタイムで働かないと厳しいでしょう。

 そうなれば当然、女性も「夫婦で家事・育児をシェアするのが当たり前」となりますし、「仕事に専念するから、家のことは任せた」なんて男性は、よほど稼がない限り、結婚相手として選ばれない。

石原 「女性の希望をかなえないと結婚できない」と、ひしひしと感じているんでしょうね。仕事と育児を両立できない職場には就職したくない。もしくは、そんなに面倒くさいなら結婚しなくていいと。

牛窪 また近年は、若い女性たちを中心に、「恋より推し活」の傾向も強くなっています。2022年、CCCMKホールディングスが「あなたにとって大事なものは何ですか」と聞いたところ、若い社会人女性(19~29歳)では「恋人や恋愛」が6位で、その上の4位、5位に「趣味」と「推し活」が入っています。

 脳科学的に見ると、推し活で得られる喜びは、ドーパミンという報酬系ホルモンの放出による部分が大きいらしく、この作用は「恋愛」のときと非常に似ているそうです。自分が夢中になれる推しがいれば、あえて恋愛を必要としにくくなるんでしょうね。

石原 推し活って傷つく心配はないし、楽しそうです。

牛窪 あと、恋愛は基本的に1対1なので、ときには友達と恋愛対象を取り合う状況にもなる。でも推し活は、同じアイドルグループのメンバーの推しを、(暗黙のうちに)友達とかぶらないように決めたうえで、一緒に盛り上がったり、高揚感を味わえたりします。争わなくていいんですよね。

石原 でも、推しはなかなかこちらを振り向いてくれないのでは。

牛窪 そうなんですけど、推し活メディア「Oshicoco」による2025年の調査では、ライブやコンサートなどに行く前に「美活(美容活動)」をする若者(主に女性)が約8割もいて、そのうち2人に1人は、1回あたり1~3万円も使っています。インタビューでも、「もしかしたら、推しと目が合うかも」といったほほえましい、あるいは切ない感情があるんですよね。

石原 我々の時代は恋愛しかすることがなく、恋愛しなきゃいけないというプレッシャーがあったものでした。

Z世代をつなぐのは○○界隈

牛窪 今回、『Z世代の頭の中』の執筆にあたって、55人の若者たちに1対1のインタビューを行ったのですが、象徴的だったのが、「○○界隈(かいわい)」という言葉です。有名なところでは、「お風呂に入るのがおっくう」と感じた人が「お風呂って入らなくてもいいよね」との主旨をSNS(交流サイト)に投稿したところ、「自分もそう思っていた!」と共感の声が相次いで生まれた、「#風呂キャンセル界隈」というハッシュタグ由来のコミュニティー。ほかにも、同じような価値観を持つ若者たちを中心に、「〇〇界隈」との言葉が使われています。

 また今回、CCCマーケティング総合研究所とZ世代1600人以上に行った定量調査では、学校や職場でのいじめに「一度も遭遇したことがない」と答えた若者が、4人に1人(24.1%)しかいませんでした。彼らは、スクールカースト(学校内の序列)も含めた複雑なヒエラルキーにさらされて生きてきた世代で、「全員に自分を分かってもらおうとは思わない」や、「同じような嗜好を持つ仲間(界隈)とだけつながれればいい」などと話しました。Z世代らしい価値観だと思います。

それぞれの著書を持つ牛窪さんと石原さん
それぞれの著書を持つ牛窪さんと石原さん

石原 いろんな界隈がありそうです。「子どもいらない界隈」「結婚したくない界隈」とか。

牛窪 「界隈」は大衆に迎合せず、背伸びもし過ぎない、Z世代の「自分らしさ」を象徴する言葉でもあります。その分、多様な界隈が存在するうえ、自分なりに日々アップデートしていけばいいのだから、最初から完璧でなくてもいいわけです。こうしたアップデート志向は、スマホ世代ならではだと思います。

 これに対し、上司の昭和世代は、「全社一丸となって」や「自分は完璧な上司であらねば」と考える人が多い。でも私は、彼らにこうお伝えしています。「最初から完璧を目指そうとしなくていいんですよ」「言い過ぎたなと思ったら、『さっきはごめん』と後から謝ればいいんですよ」と。Z世代の多くが好むのは、多少不完全であっても、日々アップデートやアジャイル(短期間で検証や改善を繰り返すこと)に取り組む、前向きな姿勢です。完璧な上司より、むしろ「改善に向けて頑張っている上司」のほうがZ世代に受け入れられやすいと思います。

石原 完璧であろうとするほど、Z世代は違和感を覚えるのかもしれませんね。僕も今回、『Z世代の頭の中』を読んで、「Z世代といっても恐ろしい魑魅魍魎(ちみもうりょう)じゃなくて、我々がかつて新人類と呼ばれたときと同じなんだ」と思いました。みんな同じように悩んだり、迷ったりしながら、もがいているという点では我々と変わらないんだと安心しました。

取材・文/三浦香代子 写真/鈴木愛子

日経プレミアシリーズ『 Z世代の頭の中
会社をすぐ辞める。恋愛・結婚は面倒。お金を使わない。メディアで語られる若者像はどこまで正しいのか? 実際のZ世代は、何を考え、なぜそう振る舞うのか? 令和の若者1600人への大規模調査と55人への直接取材で、彼らのナゾに迫る。

牛窪恵著/日本経済新聞出版/1210円(税込み)
日経プレミアシリーズ『 昭和人間のトリセツ
ややこしくもデリケートな「昭和生まれ」の深淵に切り込む本邦初? の書籍

なぜ10年前の出来事を最近のことのように語ってしまうのか? LINEが無意味に長文になる理由は? ――仕事観やジェンダー観など多様な切り口から「昭和生まれの人間」の不可解な生態に肉薄し、その恥部をもつまびらかにする日本初の書籍。「【注】知っておかなくても構わない昭和・平成用語集」も収録。

石原壮一郎著/日本経済新聞出版/990円(税込み)