オーディション「THE FIRST」を大々的に開催し、新人グループBE:FIRSTをあっという間にスターダムに押し上げたSKY-HIさん。アーティストと経営者の二足のわらじを履き、それぞれで確実に結果を残し続けるその背景には、幼少期から育まれた読書習慣にヒントがありました。

SKY-HIの基礎をつくったライフハック本

 幼少の頃から、本はよく読んでいました。母も姉も読書家だったので、家にはよく本が置いてありましたし、日常生活のなかに読書が自然に組み込まれていましたね。これまでも、本を読むことで価値観がガラリと変わったり、転機を迎えるときに本を頼りにしたりしたことが数多くあります。

 自分の読書歴を思い返してみて、まず強烈に印象に残っているのは、小学5年生のときに読んだ本ですね。 『小さいことにくよくよするな!』(リチャード・カールソン著、サンマーク文庫) との出合いです。

『小さいことにくよくよするな!』(リチャード・カールソン著、サンマーク文庫)
『小さいことにくよくよするな!』(リチャード・カールソン著、サンマーク文庫)

 その頃は、もちろん『コロコロコミック』(小学館)のような周りではやっていた漫画もたくさん読んでいましたが、自宅の本棚にある母や姉の本を読むことや、本屋さんで小説を買うこともありました。

 わが家には、テストの成績が良かったら図書カードをもらえるというルールがあって、ある時、もらった図書カードを持って本屋さんに行ったら『小さいことにくよくよするな!』のタイトルが目に入ってきたんです。パラパラとめくってみると、「まさに、最近イライラしている自分のことが書いてあるな」と驚きました。

 当時の僕は、サッカーに真剣に取り組んでいて、中学生になっても思う存分サッカーに打ち込みたいという理由から自らの意思で中学受験に挑みました。ただ、自分の決めたこととはいえ、サッカーと受験勉強の両立でイライラすることも多かったんですよね。そんなときに出合ったのがこの本です。とにかく、具体的な対処法がたくさん書かれているのが魅力でした。

「中学受験とサッカーの両立で、ちょっとストレスがたまっていた小学5年生のときに出合った本です」
「中学受験とサッカーの両立で、ちょっとストレスがたまっていた小学5年生のときに出合った本です」
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 大人になってからもライフハック系の本はたくさん読みましたが、やっぱりこの本のインパクトは大きかった。一番効果があったように思います。

「怒らなければ、うまくいく」

 当時、読んで感じたのは、「怒らなければ、大抵のことはうまくいく」ということ。実際、それを意識するようになってから何度もそれを体感する場面がありました。この本を読んだ経験は、自分の人生の大きな糧になっていると思います。

 ただ、今でも僕は基本的に怒るということは少ないのですが、最近は「もうちょっと怒ることも必要なのかな」と悩んでいるところです(笑)。

 中学生になると、学校でも朝の読書の時間が設けられていたので、毎日本を読む時間がありました。さらに、中学校まで電車で片道1時間もかかっていたので、通学中はずっと本を読んでいました。三浦綾子とか司馬遼太郎とか、好きでしたね。

 ちなみに僕の姉は2歳上で彼女は不良だったんですけど(笑)、僕よりすごく本を読む人だったんです。「読書をする不良」です。僕が司馬遼太郎を好んで読んでいると、姉が「歴史ロマンなんて嘘だよ」って、茶々を入れてくる。姉はその手のものが苦手だったようですが、姉弟のけんかの延長で、そんなふうに本のセレクトでちょっとした言い合いをすることもありましたね。

 でも、母が「お姉ちゃんはたまに素行の悪いところもあるけど、本をしっかり読んでいるから、ひどい状況にはならないはずだ」なんて冗談を言っていたのは、鮮明に覚えています(笑)。

人の心を動かす人は本を読んでいる

 BMSGの所属アーティストは、僕を除けば、平均年齢20歳。最年少には16歳のトレーニー(研修生)がいます。若い彼らにも本は読んでほしいとは思いつつ、自ら薦めることはあまりありません。でも、なかには「どんな本を読んだらいいですか?」と聞いてくれる子もいて、そんなときはきちんと答えるようにはしています。

 先日、高校生になったばかりのトレーニーの子に自分の本 『マネジメントのはなし。』(日経BP) や星新一のショートショートを薦めました。特にショートショートのような短くてすぐ読み切れるものは、読みやすくてよいかなと。

「そういえば、彼は、読んでくれたかな……(笑)」
「そういえば、彼は、読んでくれたかな……(笑)」
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 僕は、受験勉強を含め、真剣に勉強に取り組んだ経験を通して、「自分で何かを得ようと考えて、自ら学ぶ」ことの大切さを実感しています。今、振り返っても、勉強に費やしたあの時間は大事でしたね。だから、所属アーティストにもきちんと義務教育は受けてほしいですし、できればいろいろな本と出合って、読書から学びを得てほしい。

 周囲を見渡しても、説得力のある話ができて人の心を動かす言葉をかけられる人は、読書家や普段から本に親しんでいる人が多い。アーティストという職業は、文章なり言葉なりで人の心を動かす職業です。楽曲制作はもちろんのこと、ライブでMCをすることもありますし、言葉を発する機会は多い。言葉できちんと表現できるということは、音楽業界で生きていくうえでも必要なことなんです。

読書習慣をつけたいなら、読みやすい本から

 そういえば、すぐ読み切れるという意味でも、最初に挙げた『小さいことにくよくよするな!』を薦めるのはよさそうですね。

 小学5年生の僕でも、スイスイと読み進めることができました。本にはライフハックが100個書かれているんですが、1個2~3ページで完結するので、読んだ達成感も得やすい。しかも、読みながらすぐに実践できることばかりで。本を読むのが苦手な人や読書習慣をつけたい人が最初に読む本としても、お薦めですね。

 こうして話していると、久々に読み返したくなりますね。小学生のときに読んでとにかく感動したことは覚えているんですが、今改めて読んだらどう感じるのだろう。どの場面でどんなふうに感動したのか、当時の気持ちを思い出してみたいですね。

取材・文/磯部麻衣 構成/長野洋子(日経BOOKプラス編集部) ヘアメイク/椎津 恵 写真/上野裕二(SKY-HIさん)、スタジオキャスパー(本)