『うかる!FPシリーズ』 に収録している項目をもとに、暮らしに役立つ知識を紹介します。第5回は、「年金の納付猶予」を解説します。

学生納付特例制度・保険料納付猶予制度

 日本国内に住むすべての人は、20歳になった時から国民年金の被保険者となり、保険料の納付が義務づけられています。

 ただし、学生については、申請により在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」が設けられています。

 この制度を利用することで、将来の年金受給権の確保だけでなく、万一の事故などにより障害を負ったときの 障害基礎年金の受給資格を確保することができます。なお、「学生納付特例制度」の申請は毎年必要になります。

【対象者】
大学、大学院、短大、高等学校、高等専門学校、専修学校等に在学する学生等で、学生納付 特例を受けようとする年度の前年の所得が基準額以下(約128万円以下)の者または失業等の理由がある者が対象です。

【申請書類の取得方法】
申請用紙は、国民年金関係届書・申請書一覧からダウンロードできます。また、20歳になる者は、20歳になってから概ね2週間以内に「国民年金保険料納付書」、「国民年金の加入と保険料のご案内)「保険料の免除・納付猶予制度と学生納付特例制度」の申請書が送付されますので、申し込みできます。

【申請書の提出先】
住所地の市区役所・町村役場の国民年金担当窓口、または年金事務所です。

【メリット】
(a) 学生時代の保険料を支払う必要がなく、保険料を支払っていなくても未納扱いにはなりません。

(b) 老齢基礎年金を受け取るためには、原則として保険料の納付済期間等が10年以上必要ですが、学生納付特例制度の承認を受けた期間は、この10年以上という老齢基礎年金の受給資格期間に含まれることとなります。
ただし、老齢基礎年金の額の計算の対象となる期間には含まれません。なお、猶予された保険料は過去10年分を追納でき、年金額を増やすことができます。

(c) 親が子どもに代わって、猶予された保険料を追納する場合、支払った保険料は親の社会保険料控除の対象になります。

(d) 障害や死亡といった不慮の事態が生じた場合に、(1)その事故が発生した月の前々月までの被保険者期間のうち保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が3分の2以上ある場合、または(2)その事故が発生した月の前々月までの1年間に保険料の未納がない場合には、障害基礎年金や遺族基礎年金が支給されますが、学生納付特例制度の承認を受けている期間は、保険料納付済期間と同様に当該要件の対象期間になります。また、この制度の適用を受けている期間中に、障害等級1級・2級に該当する障害を負った場合、障害基礎年金を受給することができます。

【デメリット】
猶予された期間分に対応する年金額は、追納しないと減額になります。

学生以外の者を対象とした保険料納付猶予制度

 20歳から50歳未満の方で、本人又は配偶者の前年所得(1月から6月までに申請される場合は前々年所得)が一定額以下の場合には、申請することで保険料の納付が猶予されます。これを「納付猶予制度」といいます。

【メリット】
保険料納付猶予制度の承認を受けた期間は、この10年以上という老齢基礎年金の受給資格期間に含まれることとなります。ただし、老齢基礎年金の額の計算の対象となる期間には含まれません。なお、猶予された保険料は過去10年分を追納でき、年金額を増やすことができます。

 保険料納付猶予を受けた期間中に、ケガや病気で障害や死亡といった不慮の事態が発生した場合、障害年金や遺族年金を受け取ることができます。

※ 本文中の金利等の数値は2022年9月時点のものです
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