しつこい肩こり、繰り返される腰痛……。そんな全身の不調の原因が、実は「首」にあるかもしれません。長時間のデスクワークやスマートフォンの使いすぎで首に負担がかかり、それが肩こりや頭痛、腰痛、疲労感などの症状を引き起こしているのです。フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんが、「首の骨=頸椎(けいつい)」をケアすることで不調を一掃するメソッドを解説した『 すごい頸椎 首・肩・腰を一気によくする 』から一部を抜粋・再編集してお届けします。今回は、デスクワークをしている人が腰痛を慢性化させないためにやるべきことをまとめました。
正しい座り方は「坐骨2点で座る」
前回(参照:くしゃみでなぜぎっくり腰に? スマホ首の人は腰の状態も悪い)、咳やくしゃみなどの「軽い動作」でもぎっくり腰が起きるメカニズムについて解説しました。慢性的な腰痛を抱えている人は、「フィードフォワード制御」がうまく作動しないため、椅子から立ち上がる、物を持ち上げる、歩くために一歩を踏み出すといった動き出しのときに、腰の骨である腰椎(ようつい)にストレスがかかり、やがてぎっくり腰になります。
慢性的な腰痛を根本から解決するためには、やはり「座る時間」の環境を整える必要があります。それが腰をいたわるための第一歩です。腰痛を治したいと思っても、1日のうち何時間も悪い姿勢で座る生活を送っていては、根本的な改善は望めないのです。
腰痛を改善し、予防するためには、「正しい座り方」を身に付けなければなりません。この座り方ができれば、「人間工学に基づいてデザインされた」高級な椅子を購入しなくても、腰に負担のかからない座り方ができます。
そのためにはまず、デスクワークをする際のパソコンのディスプレイを自分の「目線」に合わせ、背筋を伸ばしたときの視線の高さより少し下にモニターがくるようセッティングします。画面の位置が低すぎると、頭が無意識のうちに前に出てしまいます。ノートパソコンを使っているのであれば、画面を少し上に傾けたり、スタンドを使用して高くしてもいいでしょう。

そして、足の裏がきちんと床につくよう椅子の高さを調整し、肘が肩の下の位置にくるようにします。手を前に出しすぎてキーボードを操作すると、肘も前に出てしまい、肩や腰に負担がかかります。ノートパソコンを使っている場合は、外付けのキーボードを利用して手を前に出しすぎない環境をつくるのもおすすめです。
正しい座り方の仕上げは、骨盤のセッティングです。骨盤の理想的な状態は、わずかに前に傾いています。その状態になるよう座るコツは、「坐骨2点で座る」こと。坐骨とは、骨盤の底部にある左右一対のとがった骨であり、この左右の坐骨が座面に真っすぐ刺さるイメージで骨盤を立てて座ればいいのです。
こうすると、骨盤はわずかに前傾し、その骨盤の上に腰椎、胸椎、頸椎がS字を描くように自然と積み上がります。この状態が本来、最も自然で無理のない「ニュートラルポジション」です。
無理に背筋を伸ばそうとすると、腰の反りが強くなり、骨盤が過剰に前に傾いてしまうので、かえって腰椎に負担をかけすぎることになります。
「ペットボトル」で座り方を身につける
ただ、座っているといつの間にか姿勢が悪くなり、骨盤が後ろに傾いてしまう人も多いですよね。その都度、座り直して骨盤を立てる必要がありますが、なるべく骨盤が正しい状態で座る時間を長くしたいものです。
そのためにぜひ試していただきたいのが、ペットボトルを使って正しい姿勢を体に覚えさせる方法です。図のように、椅子の背もたれと背中の間にペットボトルをはさんでみてください。すると、腰がほどよく反った状態になります。1日に5分程度でもかまいません。

また、どんなに正しい座り方ができても、毎日長時間にわたって椅子に座り続ける生活を送っていては、腰や首にやはり大きな負担がかかります。
そこで、デスクワークの最中は「マイクロブレイク」の習慣を身に付けましょう。これは、ずっと座り続けて仕事をするのではなく、30~45分ごとに一度立ち上がり、少し体をほぐすというものです。机の周りを少し歩いたり、軽くストレッチをしたりするといいでしょう。このマイクロブレイクは腰痛の発生率を低減させるという研究報告もあります。
スマートフォンやスマートウォッチで30~45分のタイマーをセットして、そのアラームが鳴ったら強制的に「座りっぱなし時間」を断ち切るといいでしょう。

[日経ビジネス電子版 2026年10月2日付の記事を転載]
中野ジェームズ修一(著)/日経BP/1870円(税込み)
