親から殴られたことはない。愛情ももらった。それでも、「何かがおかしい」と親子関係に違和感や悩みを抱くことはありませんか。必要なのは、親子関係があなたの心に与えている影響に自覚的になることです。現実の親子関係を変える必要はありません。『毒親グレーゾーン 親の目から自由になれない大人への処方せん』(鈴木裕介著/日経プレミアシリーズ)から抜粋・再構成して、その具体的な方法をお伝えします。第3回は、「家族を変えなくても、自分は変われる」という事実についてです。
家族の問題より自分を優先して、ヘルシーに生きる
不具合を起こしている家族というシステムのなかで、献身的な子どもが「自分さえもっと頑張れば」と家族の問題を引き受けようとしていることがしばしばある。
ただし、システムのなかに踏みとどまり、懸命な努力を尽くしても、根本的な解決や変化に至るとは限らない。
システムの問題は、当事者が、なかからだけ見ても解決できないことがある。それどころか、解決のために試みられた努力そのものが、かえって問題を維持する悪循環になることすらある。
つまり、家族を何とかしようとする献身が、結果として、その家族システムの不具合を保ったまま回り続けることを支える「材料」になってしまうのである。
パターンを変えていくには、この悪循環に気づき、これまでとは違う「流れ」を起こしていく必要がある。
たとえば、家族の問題を引き受けて頑張り続けることをいったんやめ、外の世界に目を向けることで、よい出会いやさまざまな経験に恵まれ、だんだんと自分自身の物語を生きるようになっていくことがある。その過程で、自分の傷ついた心を癒やす機会を得て、心がヘルシーになっていく。
逆説的であるが、その「ヘルシーな空気」が、閉じていた家族というシステムに持ち込まれることにより、不具合を起こしていた家族が、うまく回りだすことがある。
そして、あくまでも私見であるが、少なくとも臨床の場で出会う景色において、その最初のきっかけをもたらすのは「子ども」、とりわけ「娘」であることが多いように感じている。
もちろんこれは、「娘が家族を救うべきだ」という意味ではない。自分を変えようとする誠実さと、そのために行動できる力と柔軟さを持ち合わせていることが多い、という意味である。
まずは自分の物語を生きる
自分自身がヘルシーに生きようとすることは、少なくとも自分の守備範囲にある。家族全体を変えることほど、制御不能な難易度ではない。
だから、まずは自分の物語を生きてみることからはじめることを強くお勧めしたい。
親の問題よりも、自分の回復を先にやろう。親と和解するのではなく、まず自分と和解しよう。そっちのほうが、いろいろうまくいくことが多い。
鈴木裕介著/日本経済新聞出版/990円(税込み)

