私たちは、悩むことは大切だと考え、そこに費やす時間をあまり気にしません。しかし、それがいつの間にか「解決につながらない悩み方」になっていることがあります。その結果、問題は前に進まず、年間900時間もの時間を失うことも。では、どうすれば解決につながる悩み方ができるのでしょうか。新刊『 悩み方が10割 「どうしよう?」が「行動」に変わる頭の使い方 』から一部抜粋してお届けします。第1回は、「ネガティブな気持ちと上手に付き合う方法」についてです。
過去を変えたい気持ちが悩みを深くする
悩みだけではなく、不安も、後悔なんて特にそうなのですが、自分のネガティブな気持ちにおいて「コントロールできないこと」がただ一つあります。たった一つだけです。
この一つの真理の捉え方を変えるだけで、誰もがもっと悩みと上手に向き合えるようになります。
それは、「過去はコントロールできない」ということです。
「当たり前じゃないか!」と思われるかと思います。しかし、この「過去の失敗や恥ずかしい思い、つらい経験」が起因となって、今の悩みに結びついてしまっているほうが、実は多いので、あえて詳しくお伝えします。
例えば、過去の恋愛の失敗。自分の何気ない一言が恋人を傷つけてしまい、大ゲンカの末にそのまま別れてしまったようなケース。仮にこれが5年前の出来事だとします。タイムマシーンがあれば、過去に戻ってこんな言葉を当時の自分に伝えるかもしれません。
「私は5年後から来た君だ。君に伝えたい大事なことがある。
君は今日、恋人と些細なことで口論になる。その口論は絶対にしてはいけない。
むしろ、意地を張らずにまずは”ごめんね”と謝るんだ。
その一言が言えれば、きっと君は恋人と別れることはないんだ」
言えたら最高ですよね。もしかしたらその恋人とあなたは今、幸せな家庭を築いているかもしれない。しかし、現実は映画ではありません。覆水盆に返らず。起きてしまった事象をなかったことにはできません。
過去を「失敗」ではなく「事実のデータ」として捉える
では、過去とは何か。
なんのために存在するのか、という話をします。
結論、過去は「学びを得るためのデータ」。それ以上でも、それ以下でもありません。
先程の恋人との口論の話からは、いくつも学びがあります。
「なぜ、自分はあの時、自分の怒りの感情をコントロールできなかったのか? どのようにコントロールすべきだったのか?」
「そもそも恋人は、それ以前から自分に対して何らかのストレスを貯めていたのではないか? 自分が当時恋人にどのようなストレスを与えていたのか?」
「そのあとすぐに自分が謝れば、もう一度やり直せたのではないか? なぜ自分は謝れなかったのか? くだらないプライドがあったのではないか?」などなど。
過去を「感情」ではなく「事実のデータ」として捉え分析することができれば、どんな痛々しい失敗も必ず学びになります。
このように学びとは、過去を悔やむためではなく、「未来の自分に活かすもの」です。
過去をコントロールしよう、なかったことにしようとするのではなく、事実として認識し、分析するデータとして役立てれば、同じシチュエーションを迎えた時に「今の自分だったらこうする。同じミスは繰り返さない」と自分を立て直す教科書になるのです。
「行動次第で変えられる未来」を優先する
ところが、この過去の失敗や、そこから生まれた自己否定の悩みに、今の自分までもが深く縛られていることが多くあります。特に人間関係においてこのケースは多く、過去の人間関係の苦い経験と、今の人間関係の悩みが、頭の中で勝手にオーバーラップしてしまうことが多々あるのです。相手が全くの別人であっても起こりうる恐ろしい現象です。
例えば、過去、前の職場で上司の機嫌を損ねてしまい、皆の前で理不尽に怒鳴られ、不当に評価まで下げられたという嫌な記憶があったとします。今、あなたは転職をして新しい会社にいます。新しい上司は、以前のパワハラ上司とは全く違うタイプで、論理的で穏やかな人です。
しかしある日、ちょっとした意見の食い違いで、新しい上司の表情がスッと曇ったとします。その瞬間、脳裏に「あの過去の苦い記憶」が強烈にフラッシュバック。
「あ、また怒られる」
「また評価を下げられるかもしれない」
そして、恐怖から言いたいことを飲み込み、ただただ上司の顔色をうかがって、過去と同じような悩みを抱えてしまうかもしれません。結果的に仕事のパフォーマンスは落ち、コミュニケーション不足から新しい上司との関係までギクシャクし始める。
これが、「過去のコントロールできないこと」に今の自分が縛られ、無意識のうちに新たな「悩みループ」を作り出している典型的なパターンです。ですが、過去の理不尽な上司と、今の目の前の上司は、全くの別人です。状況も環境も違います。
過去の失敗から学ぶには、「上司の顔色をうかがって意見を引っ込めること(逃避)」ではなく、「意見が食い違った時は、感情的にならずにどうロジカルにすり合わせるか(解決)」というアプローチの改善が必要です。
しかし、過去の恐怖という「変えられないもの」にフォーカスしてしまうと、今この瞬間の「行動次第で変えられる未来」まで歪めてしまうのです。
悩みを最短で解決するための一歩目は、こういった「過去への執着」を手放し、目の前の「As Is(現状)」だけをフラットに見つめることなのです。
堀昌之(著)/日経BP/1980円(税込み)



