仕事をしながら自身で定めた目標に向かって勉強している社会人男女を多数取材しました。学びの“現場”である自宅の勉強机にスポットを当てて紹介しつつ、学ぶ理由やキャリアのヒストリー、その人なりの勉強のコツなどを掘り下げます。そこには、大人の学びを効率的かつ前向きに取り組むためヒントがたくさんありました。ムック『THE DESK リアルな「勉強机」から⾒えた⼤⼈の学び100のヒント』から抜粋してお届けします。
シェアハウス暮らしで「美しい戦略」を追求する人のデスク
――33歳・フリーランスコンサルタント 吉山淳平さん
Q 何を学んでいる?
A 戦略コンサルティングの知識やスキル
戦略コンサルタントとして必要な戦略の理論、フレームワーク、事例などを学べるSTRATEGY SCHOOL(戦略スクール)の講座をオンラインで受講。また、仕事で担当するプロジェクトに必要な知識を書籍でインプットしている。
Q デスクのある場所は?
A 神奈川県内のシェアハウスの自室(15㎡)
4年前から住んでいる、全84室のシェアハウス。「海外で2年ほど働いていて、転職を機に帰国した際、家具や家電を持っていなかったので調達する手間を省くためシェアハウスに。洗濯機やキッチン家電は共用部にあるし、施設のクオリティーも高いので満足しています」。自室のほか、共用スペースで仕事や勉強をすることも。
Q デスク周りのお気に入りアイテムは?
A エルゴヒューマンのオフィスチェア
コロナ禍で在宅ワークが始まった際、長時間座っていても疲れない椅子を求めて、人間工学に基づいて作られたこの高級チェアを購入。「フルセットで15万円以上しましたが、快適です」。
A Surfaceを保護するカバー
愛用のSurfaceのノートパソコンに傷がつかないよう、アマゾンで探して購入したカバー。下の面に取り付ける穴開きのカバーは、パソコンを少し傾斜でき、キーボード入力がしやすくなっている。
地球規模でどこでも仕事ができる人材になりたい
「26歳で外務省専門職試験に落ちたとき、この先、何を目指したらいいのか分からなくて苦しかった。けれどそのあと、がむしゃらに自分のやりたいことに近づこうとしてきたことが、結果的に今の自分の独自性につながっていると思います」
そう語る吉山淳平さんは、フリーランスの戦略・ビジネスコンサルタントとして独立1年目の33歳。独立と同時に受講し始めたのが、米国在住のコンサルタント、戸田輝氏が運営するSTRATEGY SCHOOL(戦略スクール)のオンライン講座だ。戦略的なアプローチを仕事や人生に生かすための方法を学び、実践することをコンセプトとしたスクールで、2週間に1回の定例の講義をベースに、グループワークや課題の提出などもある。吉山さんは学んだ内容を、コンサルタントとしての仕事だけでなく、自身の人生にも役立てようとしている。
「国内外にとらわれず、地球規模でどこでも生活し、仕事ができる人材になりたい。戦略的な思考や行動力を身に付けることで、理想の自分のあり方が実現できればと思っています」。
山口県で生まれ、浪人中に世界史の面白さに目覚めて志望を理系から文系に変更。立命館大学の国際関係学部に進学した。国際的な仕事をしたいと外務省専門職を目指し、大学在学中に予備校へ通って卒業後に受験するも、面接で不合格に。目標が絶たれた失意のなか、リフレッシュしようとフィリピンのセブ島へ1週間の語学留学をしたことが転機となった。現地で知り合った留学仲間が、海外企業の現地採用の求人に応募するという選択肢を教えてくれたのだ。「海外の求人サイトで英語が使える国に的を絞り、ビザの要件が比較的厳しくないフィリピンでの求人に応募するなか、1社だけ受かったのがアクセンチュア フィリピン。いきなり海外で就職する不安もあったけれど、藁をもすがる思いで飛び込みました」。
アクセンチュア フィリピンでは約2年間、日本の大手企業の人事業務の現地への移管の支援に携わった。「身ひとつで異文化の環境に揉まれて、不確実な状況に対して動じない耐性が身に付きました」。日本人のクライアントと現地のオペレーターとをつなぐのが主な役割で「いわゆるコンサル的な、何かを改善するといった仕事ではなかった」が、あるとき、これぞコンサルタントという仕事を目の当たりにする。「プロジェクトの支援のためにアクセンチュア日本法人のチームが来て、現状の業務を次々と改善していった。とてもかっこよくて、こうしたコンサルタントの真髄といえる仕事をするには、日本でキャリアを積むほうがいいだろうと思い、日本での転職先を探しました」。転職サイトに登録すると日本のKPMGコンサルティングからオファーがあり、面接を受け採用が決定。「日本企業からの駐在ではなく、海外の現地採用で働いているところが珍しがられました」。
本による学びで「美しい戦略」に気づいた
帰国してKPMGに転職後、先輩に教わって購入したのが 『論点思考』 、 『仮説思考』 (ともに内田和成著/東洋経済新報社)などの本だ。「コンサルタントとしての考え方、課題へのアプローチ法が書かれていて、今でも手元に置いています」。同社に在籍中の約3年間は、DX(デジタルトランスメーション)による業務改善などコンサルタントとして10件近くの案件に携わる。手応えのある仕事ができたという実感を持てないなか、記憶に残る案件が1つだけあった。「携わっている渦中にはプロジェクトマネージャーの意図がよく分からなかったけれど、終わった後に本で学んだことを当てはめてみると、あれが仮説で、あれが検証だった、などと気づくことばかりで、美しいまでに戦略を実現させたプロジェクトだったと気づいたんです」。
もっと戦略コンサルティングといえる仕事に挑戦してみたいという気持ちが高まっていくと同時に、「会社員として働く限り、自分が本当に興味の持てる案件を選べない」というもどかしさもあり、独立を決意する。30代前半で独立するコンサルタントは少ないというが、「自由度の高い働き方ができる状態に身を置きたい」気持ちが強かった。独立後は複数の案件に携わり、「次も依頼したい」という声ももらえ、手応えを感じている。「フリーになると、自分のやっていることの成果も責任も、全部自分に降りかかってくる。うまくいけば次も頼まれるけれど、そうでなければ切られるドライな世界。だからこそ今は全力で働いているし、戦略スクールでの学びも仕事に取り入れています」。
机の隣の本棚には、ビジネス書に混じって、伝説のパリコレモデルとして活躍した山口小夜子や、シャネルの創設者であるココ・シャネルに関する本が並ぶ。「独自の価値観で新しい道を切り開いた彼女たちのように、自立した美しい人の生き方に惹かれる。海外経験×コンサル×フリーランスという自分の独自性を生かして理想に近づく方法を、戦略的に考えていきたいと思います」。
実践でつかんだ学びのノウハウ
1 「手に入れたいこと」を常に意識しながら取り組む
現在オンラインで受講している戦略スクールでは、戦略に関するインプット、アウトプット、フィードバックを繰り返すプロセスで講義が進められる。「授業の最初に『この授業で学びたいことは何か』『今、うまくいっていることは何か』などをメンバーのルームでシェアするなど、逐次自分を振り返るようなカリキュラムになっている。仕事のプロジェクトを成功させる、将来的に好きな場所で好きな人と好きなことができる状態を実現するなど、目的を常に頭に置いて、それに必要な戦略は何かを意識しながら学ぶことができています」。
2 インプットしたことは仕事で積極的に使う
本でのインプットも習慣化しており、重要なところに赤ペンで線を引いて読む。前職のKPMGに転職した際、先輩から教わって購入したのが 『論点思考』 『仮説思考』 (ともに東洋経済新報社)、 『イシューからはじめよ』 (英治出版)。「コンサルの考え方とアプローチの基本が書かれています」。 『起業の科学』 、 『顧客起点の経営』 (ともに日経BP)などは、現在仕事で取り組んでいる企業の組織改革のコンサルティングのためのフレームワークを学ぶ本として購入。「本でインプットしたフレームワークや言葉などは、仕事のプレゼンで積極的に使うようにしています」。
3 講義は手書きでルーズリーフにまとめ、定期的に見返す
戦略スクールのオンライン講義を聴きながら、ポイントをルーズリーフにまとめ、気づいたときに見返している。自分で手書きでまとめたものを見返すことで、興味を持ったポイントをすぐに思い出せ、記憶の定着にもつながる。
4 心惹かれたアイコンの本でモチベーションを高める
世界的に活躍したモデル、山口小夜子の存在は、新卒でフィリピンの会社に就職することになった際、たまたまテレビで見たドキュメンタリーで知った。「ひとりで海外へ行くのが不安だったとき、この方もパリへ行く前にいろいろと葛藤があったことを知って共鳴しました。本は絶版になっていましたが、ネットで中古本を探して手に入れました」。 『シャネル哲学』 (ブルーモーメント)はガブリエル・シャネル展で購入。「惹かれるのはなぜか女性ばかりなのですが、自立した、たくましい生き方に勇気をもらいます」。
勉強がはかどる部屋づくりのアイデア
1 多彩な読書で思考回路を刺激
イケアで購入したラックをデスクの隣に置き、蔵書を収納。勉強や仕事の本はアマゾンで、趣味の本は書店で買うことが多い。「太宰治や夏目漱石など古典の純文学を読むと、人間の思考は昔と変わっていないと感じる。『風の谷のナウシカ』のマンガは、映画よりも深いからと人に薦められたもの。 『ナウシカ考』 (岩波書店)は、ナウシカに対する自分の考察とどのように違うかが気になって購入。点を線に、線を面にしていくように自分の思考回路を広げていくのが好きなんです」。
2 隣人と気持ちよく酔えるバーコーナーを設置
自室の小さな冷蔵庫の上にバカラのグラスやウイスキーを並べ、バーコーナーに。壁にはアマゾンで購入した「BAR」の電飾看板やアメリカのレトロなポスター類を飾り、色の変わる照明で照らしてムーディーに。「シェアハウスの住人たちを部屋に招いて酒盛りをすることも。ここに住んでいると、人と交流できないもどかしさを感じることはないです」。
取材・文/藤川明日香 写真/工藤朋子
日経ホームマガジン 日経WOMAN別冊、1430円(税込み)












