コツコツ頑張るのが苦手。やらなくちゃと思いながらも、つい先延ばしにしてしまいがち。こういった悩みを抱える人は多いのではないでしょうか。その悩みを解決するヒントになるのが、『努力は仕組み化できる 自分も・他人も「やるべきこと」が無理なく続く努力の行動経済学』(山根承子著、日経BP)と、『「時間術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(藤吉豊・小川真理子著、日経BP)をはじめとする「ベストセラー100冊」シリーズです。今回は著者の藤吉豊氏と山根承子氏に、「努力」について語っていただきました。1回目のテーマは、他人からの評価とこだわりについて。
他人からの評価が気になる人・ならない人、あなたはどっち?
藤吉豊氏(以下、藤吉) 山根さんの新刊『努力は仕組み化できる』、とても面白く読ませていただきました。特に印象に残ったのが、努力と「他人からの評価」の部分です。
自分としては頑張ったつもりなのに他人からは評価されなかった悔しい経験、あるいは、それほど努力したつもりがないのに高く評価されて驚いた経験は、誰にでもあると思います。その、少しもやもやしたところを学生たちへの調査で明らかにされていて、なるほどと思いました。
山根さん自身はいかがでしょう? 努力したのに評価されなかったこととして、何か強く覚えていることはありますか?
山根承子氏(以下、山根) あるんでしょうけど、覚えてないですね。うーん、ちょっと考えてみても、やっぱりない。いま「ある」と言いましたが、実はないのかもしれません(笑)。
藤吉 世の中には他人からの評価ばかりが気になる人が多いと思いますが、山根さんはそうではないんですね。
山根 私は周りの評価がどうでもいいというか、あまり意識していないんだと思います。そもそも、自分では努力しているつもりがなかったのに、後から「頑張ったんだね」とか「すごいね」と言われて驚くことも多いです。
藤吉 おお、例えばどんなことですか?
山根 大学院進学のときもそうでした。私は大学時代、文学部の心理学科に通っていて、経済学については学んでこなかったんです。でも、大学3年の最後に思い立って、経済学で大学院を受けることにしました。そこから猛勉強して、3カ月で受験に必要だった経済学を仕上げました。
この話をすると皆さんに「すごい努力ですね」と言われます。思い返せば、あれは努力だったのかな、と。
藤吉 すごい努力ですよ、それは間違いなく。
山根 藤吉さんはいかがですか? 努力したのに評価されなかった経験はありますか?
藤吉 もちろんあります。「あります」というか、僕の実感としては「そういうことばっかり」です。
僕は普段、ライターとしていろいろな方にお話を伺って、原稿にまとめる仕事をしています。毎回、一生懸命取り組んで、僕としては100点満点と思って納品しますが、それが相手にとっても100点満点とは限りません。よりよいものに仕上げていくための過程だと理解していても、完璧だと思って納品したものに修正が必要だという評価をされると、やはり気になってしまいますね。
山根 どんな仕事でも、最初に納品したもので100点が取れて、それで完成することってないですよね。それでも藤吉さんとしては、一発で相手の100点を目指したいんですか?
藤吉 お互いの意見を少しずつ擦り合わせて、最終的に双方が満足できるものに仕上がっていくことがほとんどですよね。ただ、「自分が思った通りの評価を受けない」ということがあると、僕としては、どうすれば評価されるかをやり取りの中で探っていき、ズレをなくしていきたいと思うんです。
「こんなもんでいいか」というクオリティーで納品したくはないですし、相手の100点になるかは分からなくても自分では納得して納品したいですね。
プロとしての「こだわり方」
山根 その点で言うと、私は藤吉さんとは違うタイプかもしれません。
先ほども話しましたが、私は周りの評価はあまり気にしません。自分が100点だと思って納品したものに対して「修正してください」と言われても、何も思いません。もちろん、自分の名前を冠して発表するものが変になったら困りますが。
藤吉 確かに僕とは違いますね。山根さんは、指摘されても何も思わず修正されるのですか?
山根 変にならないレベルであれば。修正したことで自分的にはクオリティーが多少下がるだろうなと思ったとしても、1回は自分の100点をつくれたなら、「まぁいいか」という感じです。
藤吉 今までたくさんの方に取材をしてきましたが、そういう意見は初めて聞いたかもしれません。
山根 私の人生と他人の評価は関係ない、と思うからかもしれません。ただ、確かに何かしらのこだわりを持っている人のほうが多そうですね。以前、大学で勤めていたときに、広報委員として学内誌をつくっていたことがあります。先生方から寄稿してもらって、まとめる仕事です。
そのときも、何回も直される先生がおられましたね。私も編集の立場から手を入れさせてもらうこともあったのですが、私が修正したものに、さらに修正を入れられる状況でした。
藤吉 分かります。そうなりがちですよね。
山根 新刊『「時間術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』の執筆の際はどうでしたか?
藤吉 それで言うと、僕は自分の名前を冠して発表するものには、かえってこだわりがないかもしれないですね。取材相手がいて、相手の名前が大きく出るような原稿の場合には、僕がきちんとやらないと取材相手のブランドや信頼に関わってしまうからこだわります。でも、自分の名前で出すものに関しては許容範囲が広いと思います。
山根 面白い。自分ですべての責任を負える立場ではないときこそ、こだわりが出るのかもしれないですね。
努力の仕方は千差万別。「正解」は存在しない
藤吉 山根さんは「周囲からの評価は気にならない」とおっしゃっていますね。それでいて、大学院受験など、僕から見たらものすごい努力をされています。そこまで勉強ができるのは、楽しいからですか?
山根 そうですね。大学院に入って研究者になりたかったので、目標に向かっている感じはありました。実は当時、試験を受けることはほとんど誰にも言っていなかったんです。自分の中で全部完結していました。
でも、考えてみれば、いつもそうかもしれません。例えばコロナ禍で時間があったときに、個人情報保護と知的財産に関する資格を取りました。これも自分の中で完結していて、誰にも言っていなかったです。
藤吉 自己完結型で、他人から見たら努力だと思えることをやっていく。その努力の仕方のタイプは、確かご本にも書かれていましたね。
山根 内発的動機付けのことですね。内発的動機付けとは、自分の内面から湧き上がる「やる気」がベースになっている状態のことです。反対に、外発的動機付けは、金銭報酬や他人からの称賛、評価など、自分以外のものから与えられる「ご褒美」がベースになっている状態のこと。内発的動機付けのほうが、努力の継続に重要な役割を果たすとされています。
藤吉 分かる気がします。
山根 私は内発的動機付けが圧倒的に多いんです。藤吉さんはどうですか?
藤吉 僕も内発的動機付けが多いですね。『 「お金の増やし方のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。 』(日経BP)をつくったときに、改めてお金について体系的に学びたいと思ったんです。それで、ファイナンシャルプランナー試験のテキストを読むことにしました。
山根 誰かに言われたわけではなく、自分でやりたいと思ってやっていることなので、確かに内発的動機付けですね。
藤吉 だけどなかなか読めなかったので、ファイナンシャルプランナー3級の資格試験に申し込むことにしました。お金を払って、試験日が決まったら、後はやるしかない。『 「勉強法のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。 』(日経BP)で得た知識を生かしながら勉強して、合格しました。
山根 具体的な目標を決めてそれに向けて頑張るのは、正しい努力の方法だと思います。
藤吉 他人からの評価の受け取り方は違うものの、僕も山根さんも結果的に努力をしているという点では同じですね。
山根 私は周りの評価を気にせずに、努力を努力と思わずにできるタイプ。藤吉さんは、周りの評価を気にしつつ努力を続けるタイプですね。
『努力は仕組み化できる』を書いてから、知人から「私はこういう努力をしているタイプ」と言われることがありますが、みんなタイプがバラバラです。努力の方法って本当に千差万別だなぁと感じます。
文/ミアキス 梶塚美帆、写真/尾関祐治
山根承子(著)/日経BP/1870円(税込み)
藤吉豊、小川真理子(著)、日経BP、1760円(税込み)



