コツコツ頑張るのが苦手。やらなくちゃと思いながらも、つい先延ばしにしてしまいがち。こういった悩みを抱える人は多いのではないでしょうか。その悩みを解決するヒントになるのが、『努力は仕組み化できる 自分も・他人も「やるべきこと」が無理なく続く努力の行動経済学』(山根承子著、日経BP)と、『「時間術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(藤吉豊・小川真理子著、日経BP)をはじめとする「ベストセラー100冊」シリーズです。今回は著者の藤吉豊氏と山根承子氏に、「努力」について語っていただきました。1回目のテーマは、他人からの評価とこだわりについて。

他人からの評価が気になる人・ならない人、あなたはどっち?

藤吉豊氏(以下、藤吉) 山根さんの新刊『努力は仕組み化できる』、とても面白く読ませていただきました。特に印象に残ったのが、努力と「他人からの評価」の部分です。

 自分としては頑張ったつもりなのに他人からは評価されなかった悔しい経験、あるいは、それほど努力したつもりがないのに高く評価されて驚いた経験は、誰にでもあると思います。その、少しもやもやしたところを学生たちへの調査で明らかにされていて、なるほどと思いました。

 山根さん自身はいかがでしょう? 努力したのに評価されなかったこととして、何か強く覚えていることはありますか?

山根承子氏(以下、山根) あるんでしょうけど、覚えてないですね。うーん、ちょっと考えてみても、やっぱりない。いま「ある」と言いましたが、実はないのかもしれません(笑)。

山根承子(やまね・しょうこ)行動経済学者/株式会社パパラカ研究所代表取締役社長。博士(経済学)。専門は行動経済学。大学教員を経て、企業や自治体に行動経済学のコンサルティングを行う法人を設立。行動経済学会常任理事、一般社団法人投資信託協会理事。著書に『努力は仕組み化できる』(日経BP)、『今日から使える行動経済学』(共著、ナツメ社)、『行動経済学入門』(共著、東洋経済新報社)など。
山根承子(やまね・しょうこ)行動経済学者/株式会社パパラカ研究所代表取締役社長。博士(経済学)。専門は行動経済学。大学教員を経て、企業や自治体に行動経済学のコンサルティングを行う法人を設立。行動経済学会常任理事、一般社団法人投資信託協会理事。著書に『努力は仕組み化できる』(日経BP)、『今日から使える行動経済学』(共著、ナツメ社)、『行動経済学入門』(共著、東洋経済新報社)など。
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藤吉 世の中には他人からの評価ばかりが気になる人が多いと思いますが、山根さんはそうではないんですね。

山根 私は周りの評価がどうでもいいというか、あまり意識していないんだと思います。そもそも、自分では努力しているつもりがなかったのに、後から「頑張ったんだね」とか「すごいね」と言われて驚くことも多いです。

藤吉 おお、例えばどんなことですか?

山根 大学院進学のときもそうでした。私は大学時代、文学部の心理学科に通っていて、経済学については学んでこなかったんです。でも、大学3年の最後に思い立って、経済学で大学院を受けることにしました。そこから猛勉強して、3カ月で受験に必要だった経済学を仕上げました。

 この話をすると皆さんに「すごい努力ですね」と言われます。思い返せば、あれは努力だったのかな、と。

藤吉 すごい努力ですよ、それは間違いなく。

山根 藤吉さんはいかがですか? 努力したのに評価されなかった経験はありますか?

藤吉 もちろんあります。「あります」というか、僕の実感としては「そういうことばっかり」です。

 僕は普段、ライターとしていろいろな方にお話を伺って、原稿にまとめる仕事をしています。毎回、一生懸命取り組んで、僕としては100点満点と思って納品しますが、それが相手にとっても100点満点とは限りません。よりよいものに仕上げていくための過程だと理解していても、完璧だと思って納品したものに修正が必要だという評価をされると、やはり気になってしまいますね。

山根 どんな仕事でも、最初に納品したもので100点が取れて、それで完成することってないですよね。それでも藤吉さんとしては、一発で相手の100点を目指したいんですか?

藤吉 お互いの意見を少しずつ擦り合わせて、最終的に双方が満足できるものに仕上がっていくことがほとんどですよね。ただ、「自分が思った通りの評価を受けない」ということがあると、僕としては、どうすれば評価されるかをやり取りの中で探っていき、ズレをなくしていきたいと思うんです。

 「こんなもんでいいか」というクオリティーで納品したくはないですし、相手の100点になるかは分からなくても自分では納得して納品したいですね。

プロとしての「こだわり方」

山根 その点で言うと、私は藤吉さんとは違うタイプかもしれません。

 先ほども話しましたが、私は周りの評価はあまり気にしません。自分が100点だと思って納品したものに対して「修正してください」と言われても、何も思いません。もちろん、自分の名前を冠して発表するものが変になったら困りますが。

藤吉 確かに僕とは違いますね。山根さんは、指摘されても何も思わず修正されるのですか?

山根 変にならないレベルであれば。修正したことで自分的にはクオリティーが多少下がるだろうなと思ったとしても、1回は自分の100点をつくれたなら、「まぁいいか」という感じです。

藤吉 今までたくさんの方に取材をしてきましたが、そういう意見は初めて聞いたかもしれません。

藤吉豊(ふじよし・ゆたか)株式会社文道 代表取締役/有志4名による編集ユニット「クロロス」のメンバー。日本映画ペンクラブ会員。神奈川県相模原市出身。編集プロダクションにて、企業PR誌や一般誌、書籍の編集・ライティングに従事。編集プロダクション退社後、出版社にて、自動車専門誌2誌の編集長を歴任。2001年からフリーランスとなり、雑誌、PR誌の制作や、ビジネス書籍の企画・執筆・編集に携わる。文化人、経営者、アスリート、タレントなど、インタビュー実績は2000人以上。2006年以降は、ビジネス書籍の編集協力に注力し、200冊以上の書籍のライティングに関わる。現在はライターとしての活動のほか、「書く楽しさを広める活動」「ライターを育てる活動」にも注力。「書く力は、ライターだけでなく、誰にでも必要なポータブルスキルである」(ポータブルスキル=業種や職種が変わっても通用する持ち出し可能なスキル)との思いから、大学生や社会人に対して、執筆指導を行っている。共著書に『「時間術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(日経BP)など、単著書に『文章力が、最強の武器である。』(SBクリエイティブ)がある。元野良猫を溺愛する日々。
藤吉豊(ふじよし・ゆたか)株式会社文道 代表取締役/有志4名による編集ユニット「クロロス」のメンバー。日本映画ペンクラブ会員。神奈川県相模原市出身。編集プロダクションにて、企業PR誌や一般誌、書籍の編集・ライティングに従事。編集プロダクション退社後、出版社にて、自動車専門誌2誌の編集長を歴任。2001年からフリーランスとなり、雑誌、PR誌の制作や、ビジネス書籍の企画・執筆・編集に携わる。文化人、経営者、アスリート、タレントなど、インタビュー実績は2000人以上。2006年以降は、ビジネス書籍の編集協力に注力し、200冊以上の書籍のライティングに関わる。現在はライターとしての活動のほか、「書く楽しさを広める活動」「ライターを育てる活動」にも注力。「書く力は、ライターだけでなく、誰にでも必要なポータブルスキルである」(ポータブルスキル=業種や職種が変わっても通用する持ち出し可能なスキル)との思いから、大学生や社会人に対して、執筆指導を行っている。共著書に『「時間術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(日経BP)など、単著書に『文章力が、最強の武器である。』(SBクリエイティブ)がある。元野良猫を溺愛する日々。
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山根 私の人生と他人の評価は関係ない、と思うからかもしれません。ただ、確かに何かしらのこだわりを持っている人のほうが多そうですね。以前、大学で勤めていたときに、広報委員として学内誌をつくっていたことがあります。先生方から寄稿してもらって、まとめる仕事です。

 そのときも、何回も直される先生がおられましたね。私も編集の立場から手を入れさせてもらうこともあったのですが、私が修正したものに、さらに修正を入れられる状況でした。

藤吉 分かります。そうなりがちですよね。

山根 新刊『「時間術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』の執筆の際はどうでしたか?

藤吉 それで言うと、僕は自分の名前を冠して発表するものには、かえってこだわりがないかもしれないですね。取材相手がいて、相手の名前が大きく出るような原稿の場合には、僕がきちんとやらないと取材相手のブランドや信頼に関わってしまうからこだわります。でも、自分の名前で出すものに関しては許容範囲が広いと思います。

山根 面白い。自分ですべての責任を負える立場ではないときこそ、こだわりが出るのかもしれないですね。

努力の仕方は千差万別。「正解」は存在しない

藤吉 山根さんは「周囲からの評価は気にならない」とおっしゃっていますね。それでいて、大学院受験など、僕から見たらものすごい努力をされています。そこまで勉強ができるのは、楽しいからですか?

山根 そうですね。大学院に入って研究者になりたかったので、目標に向かっている感じはありました。実は当時、試験を受けることはほとんど誰にも言っていなかったんです。自分の中で全部完結していました。

 でも、考えてみれば、いつもそうかもしれません。例えばコロナ禍で時間があったときに、個人情報保護と知的財産に関する資格を取りました。これも自分の中で完結していて、誰にも言っていなかったです。

藤吉 自己完結型で、他人から見たら努力だと思えることをやっていく。その努力の仕方のタイプは、確かご本にも書かれていましたね。

山根 内発的動機付けのことですね。内発的動機付けとは、自分の内面から湧き上がる「やる気」がベースになっている状態のことです。反対に、外発的動機付けは、金銭報酬や他人からの称賛、評価など、自分以外のものから与えられる「ご褒美」がベースになっている状態のこと。内発的動機付けのほうが、努力の継続に重要な役割を果たすとされています。

藤吉 分かる気がします。

山根 私は内発的動機付けが圧倒的に多いんです。藤吉さんはどうですか?

藤吉 僕も内発的動機付けが多いですね。『 「お金の増やし方のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。 』(日経BP)をつくったときに、改めてお金について体系的に学びたいと思ったんです。それで、ファイナンシャルプランナー試験のテキストを読むことにしました。

山根 誰かに言われたわけではなく、自分でやりたいと思ってやっていることなので、確かに内発的動機付けですね。

藤吉 だけどなかなか読めなかったので、ファイナンシャルプランナー3級の資格試験に申し込むことにしました。お金を払って、試験日が決まったら、後はやるしかない。『 「勉強法のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。 』(日経BP)で得た知識を生かしながら勉強して、合格しました。

山根 具体的な目標を決めてそれに向けて頑張るのは、正しい努力の方法だと思います。

藤吉 他人からの評価の受け取り方は違うものの、僕も山根さんも結果的に努力をしているという点では同じですね。

山根 私は周りの評価を気にせずに、努力を努力と思わずにできるタイプ。藤吉さんは、周りの評価を気にしつつ努力を続けるタイプですね。

 『努力は仕組み化できる』を書いてから、知人から「私はこういう努力をしているタイプ」と言われることがありますが、みんなタイプがバラバラです。努力の方法って本当に千差万別だなぁと感じます。

文/ミアキス 梶塚美帆、写真/尾関祐治

「今度こそ、頑張ろう!」と決意したはずなのに、いつの間にか忘れてしまっていた…そんなことはありませんか? 実は、努力は行動経済学や心理学の観点から捉え直すことで、才能や性格に関係なく、仕組み化することができます。「英語などの勉強で成果を出したい」「資格を取得したい」「子どもに勉強をさせたい」「部下を頑張らせたい」「ダイエット・運動を頑張りたい」「健康的な食事を続けたい」「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を徹底したい」「夏休みの宿題を計画的に終わらせたい」…。本書はこのような悩みに効果を発揮する1冊です。

山根承子(著)/日経BP/1870円(税込み)
シリーズ25万部突破! 100冊分の重要ノウハウを1冊にまとめました。数多くの時間術のベストセラーの著者たちは、「時間は命そのもの」と述べています。時間について学ぶのは、命について学ぶのと同じ。時間をムダにするのは、命をムダにするのと同じです。効率化やスピード化、段取りなどの「ノウハウとしての時間術」と限りある人生の一瞬一瞬に集中して「今を大切に生きるための時間術」を、あなたも身につけてみませんか?

藤吉豊、小川真理子(著)、日経BP、1760円(税込み)