コツコツ頑張るのが苦手。やらなくちゃと思いながらも、つい先延ばしにしてしまいがち。こういった悩みを抱える人は多いのではないでしょうか。その悩みを解決するヒントになるのが、『努力は仕組み化できる 自分も・他人も「やるべきこと」が無理なく続く努力の行動経済学』(山根承子著、日経BP)と、『「時間術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(藤吉豊・小川真理子著、日経BP)をはじめとする「ベストセラー100冊」シリーズです。今回は著者の藤吉豊氏と山根承子氏に、「努力」について語っていただきました。2回目のテーマは、「無駄な努力」は存在するかについて。
「無駄な努力」は存在するか
藤吉豊氏(以下、藤吉) 努力について科学的に分析された山根さんに、今回、ぜひ伺いたい質問があるんです。「無駄な努力」はあるか、ということなんですが、どうお考えですか?
山根承子氏(以下、山根) そうですね……「無駄な努力はない」と言いたいシチュエーションがあると思うのですが、そのような、あえて「ない」と断言したくなるときのほとんどが、無駄な努力かもしれないと思います。実際、『努力は仕組み化できる』の中でも、一度始めた努力がむしろ重荷になって、正しい判断を妨げてしまう現象を「努力のサンクコスト(埋没費用)化」として紹介しました。
ただ、よく分からないまま人から言われてやったことが、後々役に立ったということはありますよね。一見無駄な努力のようだったけれど、伏線回収のように10年後ぐらいに何かに生きることはあり得ると思います。
藤吉 山根さん自身の経験として、何か思い当たることはありますか?
山根 最近だと、過去に「読んで損した」と思った論文が役に立ったことがありました。修士1年生ぐらいのときに、参考文献にしようと思ってある論文を読んだのですが、内容もあまり良くないし、そのときに書こうとしていた論文とも合わなくて使えなかったんです。
ただ今回の本の構想段階のときに、努力という切り口で何を書けるだろうかと考えているなかでその論文を思い出しました。「あの論文の内容って、努力の話とつながるんじゃないか?」とふと思って、もう一度読んだんですね。そうしたら、論文の出来としてはやっぱり良くなかったのですが、努力というテーマに対しては参考になることが書いてありました。当時は読み損だと思ったけれど、20年ぐらいたってから役に立ったんです。
藤吉 当時は使えないと思ったけれども、結果的には無駄にならなかったんですね。
山根 そのときは無駄だと思った経験でも、後で生かせるかもしれないと分かっていると、努力がうまくいかなかったり失敗したりしてもあまりへこまずに済むかもしれませんね。
藤吉さんは伏線回収のような経験はありますか?
藤吉 僕はライターという仕事柄、いろいろな人に会って、その人の考えやエピソードを聞くことが多くあります。そのなかで、別の案件のそれぞれ違ったエピソードが、あるときつながる瞬間があるんです。
山根 というと?
藤吉 例えば以前、あるヒーラーへの取材の仕事を受けたことがあるのですが、その方が、「宇宙からのメッセージを聞いている」というようなことをおっしゃったんです。「宇宙には原理原則があって、それを探るために宇宙と対話している」と。
山根 宇宙、ですか。
藤吉 同じ日の午後、今度は別の仕事で、現実主義の経営者の方に取材をしました。するとその方は、「世の中には原理原則があって、それに従って実行することが大切だ」という話をされていたんです。僕は「あれ? 午前中にも似たような話を聞いたぞ」と気づきました。どんなジャンルであれ、成功している人は物事の原理原則に重きを置いているのかなと思うわけです。
山根 面白いですね。
藤吉 こういう経験が積み重なっていくと、人から聞いた話がどんどんつながっていきます。ジャンルが違っても、いろいろな人が同じことを言っているということは、恐らくそれは真理だろうというインプットになります。そういう伏線回収はよくありますね。
山根 「この努力は意味があるの?」と思ったときにも、いずれ伏線として回収されるかもしれないと思えれば、続けることがそれほど苦にはならないかもしれませんね。
「この努力に、どんな意味があるのか?」と悩んだときの乗り越え方
藤吉 努力を続けていくためには、そこに自分なりの意味を見いだすことは重要ですよね。僕も実は、「ベストセラー100冊シリーズ」を執筆する際には、自分なりにさまざまな意味づけをしながらやっています。
山根 9月刊の『「時間術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』が、シリーズ5作目だそうですね。それぞれのテーマの本を100冊ずつ読んでいるということですから、大変ですよね。ものすごい努力だと思います。
テーマや取り上げる本は、藤吉さんのご興味で選ばれているのですか?
藤吉 いえ、そういうわけではありません。テーマは共著者の小川真理子とで決めるのですが、そのテーマの100冊をどうするかは担当編集者に任せて、なるべく僕たちの主観や好みが入らないようにしています。だから、「この100冊を、どうしても読みたい!」と思っているわけではないんですよね(笑)。
山根 1冊の本を仕上げるために、じっくりと100冊も読むというのは想像もつきません。
藤吉 本に説得力を出すためには100冊は必要だな、しっかり読まないと読者に正しい情報を伝えられないな、スケジュールが遅れたらいろいろな人に迷惑をかけてしまうな……などと考え、いろいろな理由をつけて努力をしています。楽しむ余裕はなくて、大変だと自覚してもがきながら「こうだから、やらなければならない」と頭で納得しているから努力できるし、乗り越えられます。
山根 ポジティブではありますが、言い訳をしながらやっているんですね。
藤吉 そうです。言い訳をして、自分で自分の背中を押していますね。山根さんは、努力を続けるために何か工夫したり、理由づけして取り組んだことはありますか?
山根 それで言うと、私は理由をつけながら努力するタイプではないんですよ。最初にやろうと決めたらあとはやるだけでしょ、というタイプです。 前回 お話しした、大学院の入試や資格試験もそうやって乗り越えました。
藤吉 やるかやらないかではなく、やると決めたんだからやる、例外はない、という考えですよね。組織のトップにもそういう方は多いです。
山根 「やればいいやん、やったらできるやん、やるだけやねん」……これ、言い方を間違えると努力ハラスメントになり得るかもしれませんね、気をつけます(笑)。
「最初の一歩」は小さくてOK とにかく始める
山根 私自身はこういう考えなので、今回の本を執筆するなかでも「そうは言っても努力できない人はどうするか?」という視点は新鮮でした。ちなみに藤吉さんは、100冊読むにあたり、どんな工夫をしていますか?
藤吉 まず、スケジュールを逆算して1日あたりのノルマを決めます。そして「今日はノルマが2冊ある」となったら、その本を見えるところに置いておきます。
山根 見えるところに置いておくのは大事ですね。
藤吉 あとは、薄い本や漫画から読んでいきます。ハードルが低い本からスタートして、調子を上げていきます。
山根 分かります。私が大学の教員だったとき、学生のレポートの採点をやっていました。担当授業に300人も登録していたので、ものすごい量なんですね。大変そうだなと思ったときは、最初にざっと見て、出来が良さそうなものから手を着けていました。出来がいいレポートって、理路整然としていて読みやすいんですよ。採点もしやすいので、次へ次へと進んでいくことができる。
反対に、何を言いたいのかが分からないようなレポートは、何度も読み直して、じっくり考えないと先へ進めません。そのレポートから手を着けてしまうと心が折れてしまうんです(笑)。
だから、まずは読みやすいレポートから始めて、自分なりにペースをつかんできたら、徐々にそうでないレポートを読むことにする。
藤吉 『「時間術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』でも、40位に「すぐに終わることからどんどん片づける」と紹介しました。時間術の達人たちの多くも、山根さんと同じ戦略を取っているようですよ。
文/ミアキス 梶塚美帆、写真/尾関祐治
山根承子(著)/日経BP/1870円(税込み)
藤吉豊、小川真理子(著)、日経BP、1760円(税込み)



