コツコツ頑張るのが苦手。やらなくちゃと思いながらも、つい先延ばしにしてしまいがち。こういった悩みを抱える人は多いのではないでしょうか。その悩みを解決するヒントになるのが、『努力は仕組み化できる 自分も・他人も「やるべきこと」が無理なく続く努力の行動経済学』(山根承子著、日経BP)と、『「時間術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(藤吉豊・小川真理子著、日経BP)をはじめとする「ベストセラー100冊」シリーズです。今回は著者の藤吉豊氏と山根承子氏に、「努力」について語っていただきました。最終回である3回目のテーマは、「やりたくないのにやらなければいけないこと」と「やりたいのにできないこと」について。努力を多角的に考えます。
やるべきことをするのに、「やる気」は本当に必要か
藤吉豊氏(以下、藤吉) やりたくないことを努力してやらなければいけない場面ってありますよね。そういうときはどうしたらいいでしょうか。
山根承子氏(以下、山根) 私はやりたくないことはやらなくていいと思っています。
藤吉 そうは言っても、例えば、「総合職採用で、本当にやりたい業務ではない部署に配属されてつらい」とか、「本当は興味のある科目ではないけれども、単位としてどうしても必要」という悩みはしばしば聞きます。
山根 そういうことはありますね。それなら、怒られない程度にやればいいと思います。
実際に私は、やりたくないことは「無」の状態でやります。何も感情を挟まない。虚無です。「やりたくないことをやること」と「努力」は切り離していますね。
藤吉 確かに僕も、原稿の書き直しが何度も何度も重なるときは、「自分はロボットだ」と思ってやりますね。「ハイ、ワカリマシタ」と。山根さんの虚無と同じですね。あらがうと気持ちが疲れてしまいますから。
山根 虚無ですが真面目にやってはいるので、はたから見たら努力しているようには見えるかもしれません。
藤吉 一方で、経営者のなかには、「やる気ややりがいを持って働くこと」を求める熱い人もいますが、それはどうご覧になっていますか?
山根 やる気がないとダメなんですかね? 私としては、与えた仕事をやってくれたら何でもいいです。アウトプットが大事なのであって、その人が心を殺していてもやる気満々でも、どちらでも構わないです。やる気を重視する経営者の方は、やる気がないとすぐに辞めてしまうと思い込んでいるのではないでしょうか。
藤吉 やる気がなくても、言われたことをキッチリやるタイプのほうが長く続くというのはありそうです。
トップダウン企業の経営者に取材をしていると、「一番欲しい人材は、社長がやれと言ったらやる人」という話もよく聞きますね。個人をないがしろにするということではなく、決定するのは社長で、実行するのが社員の役割だということです。自分のやりたいことがある人は、転職したり起業したりしてくれ、と思う経営者もいるかもしれません。
山根 そうですね。私もやる気がある人はキャリアアップのために転職すると思います。
それで言うと、やる気と勤続年数、それと業績の関係性を、データで明らかにしたら面白いかもしれませんね。「あなたは仕事中、心を殺していますか?」という質問に「殺している」「おおむね殺している」と答える虚無の人のほうが勤続年数が長かったり実績があるということが明らかになれば、社員や部下に対して「やる気があってほしい」と思っている人たちの勘違いを指摘できそうです。
藤吉 そもそも「こういうことがしたい!」という執着がなければ、希望がかなわなくてもそこまで傷つかないし、仕方ないと気持ちを切り替えられる。だから仕事も続くし働き方にもムラができない、という面がありそうですね。
山根 虚無だとプライベートと仕事の切り分けもしやすいでしょうし、あまり落ち込まないから、仕事は続くと思います。
「こうすべき」と思うから、やりたいことができなくなる
山根 少し話は変わりますが、好きなことのはずなのに、なぜかできないことや苦労することってありますよね。例えば読書がそうです。
藤吉 『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆著、集英社新書)も話題ですね。
山根 私は小説を読むのが趣味で、通勤が長かったときはたくさん読んでいました。でも、通勤がなくなったら読まなくなってしまったんです。家にいるとやることがたくさんあるから、読書は選ばれない。
藤吉 僕も読書が好きで仕事でもプライベートでも本をよく読みますが、読書に充てる時間を取るのはなかなか難しいですよね。
山根 読書を続けるためには、通勤のように「本を読む以外にやることがない」といった環境をつくることが大事なのだと思いますが、藤吉さんはそれ以外に何か工夫されていることはありますか?
藤吉 僕の場合、仕事の資料として読む本を除いて、ビジネス書や実用書は必ずしも「全部読まなくてもいい」と考えているんです。つまり、本の「はじめに」から「おわりに」まで漏れなく読了することを「本を読んだ」とするのではなく、1冊の中からたった1つでも気づきを得たら「本を読んだ」としています。
極端に言えば「はじめに」にとてもいいことが書いてあったら、もうその本は読んだことにする。そして気づきをExcelに書き出してまとめ、自分の学びにしています。
山根 本は、最初から最後まで読まないといけないものではない、ということですね。私の場合も、「読まなきゃ」と思っているから「読めない」と苦労してしまうのかもしれません。
藤吉 今読んでいる本が途中だと、なかなかそれを投げ出して次の本にいけない。それで積ん読(買っただけで読まずにたまっている本のこと)になっている本がたくさんある、という方は多いですよね。
僕ももともとはそうだったのですが、最近では、買ったものの1年間読まなかったビジネス書や実用書は、思い切って処分することにしています。手元にあるにもかかわらず1年間も積ん読になっているということは、今の自分には必要ないということですから。ならば今は処分してしまって、必要になったらまた買えばいいと考えているんです。
積ん読になっていると、本棚を見るたびに「あれも読んでない、これも読んでない」と思ってしまうじゃないですか。そのプレッシャーから解放されます。
山根 その考えは面白いですね。
藤吉 まず、読書に対するハードルが低くなりますよね。
そもそも、なぜビジネス書などを読むのかというと、知りたいことや解決したい課題があるからです。本を読むことが目的なのではなく、書いてあるノウハウを自分に役立てることが目的ですよね。本から答えやヒントを得たら、目的達成のはずです。
もっと言えば、同じ役割を果たしてくれるなら、動画や勉強会などでもいいと思うんです。小説だとそうはいきませんが、課題を解決するためのツールとして本を使っているのなら、必ずしも「読書」に縛られなくてもいいと思うんですよね。
山根 読書に対して構えすぎないことですね。本にこだわらずに、YouTubeなどの動画でもいいというのは、いい切り替え方です。
藤吉 そのほうが「たまには本でも読むか」という気になるはずです。「読書術」なんて言葉もありますが、そういうことは気にせずに、皆さんもっと気軽に読書を楽しんでほしいですね。
文/ミアキス 梶塚美帆、写真/尾関祐治
山根承子(著)/日経BP/1870円(税込み)
藤吉豊、小川真理子(著)、日経BP、1760円(税込み)




