世代・トレンド評論家の牛窪恵さんは『Z世代の頭の中』(日経プレミアシリーズ)で、令和の若者を深掘りしています。本書でも触れた働き方や恋愛観、政治観について、当事者たちに直接聞いてみようと、担当編集者の幸田華子を含むZ世代4名と牛窪さんによる座談会を行いました。第4回は、Z世代の人生観についてです。

■座談会出席者
Aさん(男性) メーカーでの海外勤務を経て、帰国。副業として古典を紹介するYouTuberとして活動しつつ、今秋には「政治家になる」という夢をかなえるため退職予定。
Bさん(女性) 食品会社のコーポレート本部で広報業務などを担当。
Cさん(男性) メーカーでAIなどのデジタル事業開発に関わる。

結婚していなくても出産のタイミングを考える

牛窪恵さん(世代・トレンド評論家 以下、牛窪) Z世代と聞くと、「結婚や出産に消極的」「恋愛よりも推し活」といったイメージがあります。実際に今回、『Z世代の頭の中』では「仕事と恋愛はトレードオフ(両立できない)」や「結婚すると将来の(仕事の)手札が減る」「出産や子育ては、エベレスト登山やグレートレースのようなもの」と発言した人がいました。みなさんの周囲ではどうですか。

世代・トレンド評論家、牛窪恵さん
世代・トレンド評論家、牛窪恵さん
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Aさん まさに今、自分や周囲の人たちが悩んでいる問題ですね。私自身は妻から「30歳になるまでに出産したい」と言われ、海外赴任をする半年前に結婚しました。出産に関しては、まだ結婚していない周囲の友人たちが「キャリアが中断されるのは大変だから、どのタイミングで生むかを考えている」と言っています。

 ただ、これは都心部での話で、地元の兵庫県では弟が25歳で結婚して義妹は妊娠中ですし、僕のいとこも27歳で3人の子どもがいます。もしかしたら、首都圏とその他の若者では考え方に差があるかもしれません。

Bさん 私も結婚・出産のタイミングは考えますね…実は1年くらい先まで海外出張の予定が決まっていることもあります。結婚・出産を優先するとなると、キャリアアップのルートから外れてしまうのではないかという不安があります。

牛窪 えーっ。いまだに第一線から外れてしまう不安があるとは驚きです。

日経BOOKプラス編集部 海外に赴任している間に出産する人はいたりしませんか。

Bさん 出張だと滞在しても数カ月間なので、出産する方はいないと思います。

Aさん 結婚・出産にも関連しますが、上の世代とジェンダーについての考え方のギャップを感じています。先日、飲み会で彼女がいるのかという話になり、「いない」と答えた同僚に、上司が「ゲイなのか」と言ったんです。今はごく身近にLGBTQ(性的少数者)の人がいるので、「いや、その発言はアウトです」とつい言ってしまいました。

結婚や出産に対しても上の世代とのギャップを感じるときがあると語るAさん(右から2人目)
結婚や出産に対しても上の世代とのギャップを感じるときがあると語るAさん(右から2人目)
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ワークライフバランスの充実よりも人生価値が大事

牛窪 今回、『Z世代の頭の中』の執筆にあたって、55人にインタビューしましたが、とても印象的だったのが、「人生も投資と同じ。リスクを減らしてリターンを大きくするには、長期で運用すべき」「でも、イーロン・マスクだって150歳までは生きられない」「だから僕は、若いうちから人生を倍速で回している」という若者の言葉でした。また別の男性は、SNS(交流サイト)を通じて憧れの有名サッカー選手に連絡を取り、その縁で周囲から投資を得て、大学時代に起業しました。そういう同世代の生き方についてはどう思いますか。

Cさん 僕も自分の人生を早く回していきたいですね。「生き急いでるね」「欲張りだね」と言われることもありますが、仕事でも「あれをやりたい」「これをやりたい」がたくさん出てきます。

Aさん 僕も「この期間でこれをやる」と明確にしています。実は、政治家になるために、今年9月で会社を辞めて、地元の兵庫県に戻るんです。見切り発車感がすごいんですけど、頑張らないといけないなと思っています。

 今の会社に入るときに「政治家になりたい」という夢を話したら、部長からは「とりあえず10年ぐらい働いてみたら」と言われました。自分としては3年か5年ぐらい働くつもりだったので、「長すぎやろ!」と思いましたけど。今は会社を辞めることに関しても理解を示してくれました。

 ただ、本の中に出てくる起業家のエピソードは特殊事例かなと。人生を爆速で回したいというよりは、「今いる職場では将来のためのスキルが身につかない」「ちゃんとスキルを手に入れたい」という思いを持っている人のほうが多いと思います。

Bさん 実は、私も「あなたは早送りで生きてる感じがする」と言われたことが何度かあります。確かに平日休日問わず、朝から晩まで予定を詰め込みがちですが、自分がやりたいことを達成したり、なりたい自分になったりするためには必要なことでもあるので、苦にはなりません。

『Z世代の頭の中』では、若者の働き方についても分析している。画像クリックでAmazonページへ
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牛窪 今は「ゆるブラック」という言葉もあって、居心地は良くてもスキルが身につかないような、ゆるい職場は見切ろう、という動きもありますね。その気持ちは分かりますか。

Aさん はい。今はワークライフバランスが重視されて、どんどんホワイトな世の中に変わってきていますよね。でも、Z世代は単にワークライフバランスを充実させたいわけではなく、ちゃんと自分のスキルや人生価値を上げる仕事を求めているんですよ。

 やっぱり人生は1回しかないので、やりたいことをやりたい。「このままこの会社にいてもスキルが身につかない」という状態のまま過ごすのはしんどいし、生き残れない。僕自身も今はホワイトな労働環境だと思うので、「副業も頑張ろう」と思いますね。

Cさん 同感ですね。僕は自分の市場価値を上げていきたい。でも、この考え方は若手の中でも意見が分かれます。今の世の中は何にでもなれるわけではないけれど、目指せる時代ではある。何か社会に新しい価値を届けられるようなことを目指していきたいですね。

自分の市場価値を上げて、社会にも新しい価値を届けたいと語るCさん
自分の市場価値を上げて、社会にも新しい価値を届けたいと語るCさん
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Bさん 私も同じ感覚です。特に、入社1~5年目くらいの時は強くそう思っていました。働きたいけど働けない、上司も管理監督責任があるので残業されては困る…といった雰囲気がありました。

 最近は、「限られた時間の中で最大限の結果を残す」ことを念頭に仕事をするようになりましたし、自分の時間は私らしくいられるための時間として使おう! という思考になってきました。

取材・文/三浦香代子 写真/鈴木愛子

日経プレミアシリーズ『 Z世代の頭の中
会社をすぐ辞める。恋愛・結婚は面倒。お金を使わない。メディアで語られる若者像はどこまで正しいのか? 実際のZ世代は、何を考え、なぜそう振る舞うのか? 令和の若者1600人への大規模調査と55人への直接取材で、彼らのナゾに迫る。

牛窪恵著/日本経済新聞出版/1210円(税込み)