新刊『 妻の実家のとうふ店を400億円企業にした元営業マンの話 』の著者、編集Yこと山中浩之氏が日経ビジネス電子版で始めた連載「数字で縛ればやる気が逃げる」。自著の取材を振り返りながら、あれこれ考えを深めていくコラムを日経BOOKプラスでも転載中です。とても面白い記事なのでぜひ読んでいただきたいのですが、せっかく「本の情報」を発信する当サイトですので、元記事には収録されていないオリジナルコンテンツとして、記事の関連箇所を書籍から抜粋して掲載します。本書の主人公たる相模屋食料の鳥越淳司社長と編集Yのテンポの良いやり取り。そこで明らかになっていく「数字の罠」とその飛び越え方。記事と共に、本の魅力もしっかりお伝えできれば幸いです。第15回の本編はキッコーマンの堀切功章会長と鳥越社長の「経営対談」、その後編です。(日経BOOKプラス編集部)
(前編「キッコーマンの堀切会長が読む、相模屋の経営のキモ」から読む)
前回、堀切さんから、社員を「数字で縛らない」ためには、マネジメントの人が現場に精通していることが必要、というお話を伺いました。ただ一方で、偉い人が現場に出て行くと「マイクロマネジメントだ」と煙たがられそう、そう悩む方もいるんじゃないでしょうか。
堀切功章・キッコーマン会長(以下、堀切):これはよくいわれることですけど、私も営業から入って製造も経験しましたので三現主義(現場・現物・現実)なんです。やっぱりすべての答えは現場にあるんですよ。積極的に現場に行かない所属長さんというのは、やっぱりいい仕事ができないです。

だめですか。
堀切:と思いますよ。そこで働いている人たちの顔を見ているか、体調やメンタルはどうか、現場でいま何が問題になっているか。それを所属長が知っているか知らないかで、職場のコミュニケーションがまったく変わってきますよね。どれも、自分の席で数字だけ見ていても分からないことです。
鳥越淳司・相模屋食料社長(以下、鳥越):数字は原因ではなくて、結果ですからね。現実を動かしたいなら、現場に行くしかありません。
堀切:現場にいた頃、例えば「新製品、出しました」となったら、売り上げはどうか気になりますよね。それを部下に尋ねると「スーパーからの数字が明後日上がってきますので」と言うから、いや、毎日棚を見に行けばすぐ分かるよね、と。
分かりますか。
鳥越:そうですね、数日見れば。長くても1週間くらい店頭に行けば分かりますね。
堀切:棚に何本並んでいるか、昨日、この時間に来たときは何本あって、何本売れて、と。ちょっと極端かもしれませんが、そこまでやることもありました。何が言いたいかといいますと、「POSデータを待っています」「データがないから分かりません」という答えがふっとアタマに浮かぶようなら、それは、自分がついつい数字に頼っている印かもしれません。
確かに、つい言ってしまいますね。
つゆ・たれの自社ブランド開発に挑戦
堀切:「数字に頼らない」という話では、プロダクト・マネジャーになって商品づくりをやっているときにも経験があります。1995年に、キッコーマンブランドの「つゆ」を、97年に「たれ」を出したんですよ(商品名は「本つゆ」と「赤だれ」「黒だれ」、後者は2002年以降「わが家は焼肉屋さん」に)。
それまでうちは、つゆやたれのメーカーさんにしょうゆを供給していたんですが、素材としてだと、値段のたたき合いになってしまうんですね。
鳥越:差別化するのが難しいからですね。おとうふは業界を挙げて、店頭でそんな感じになっていました。
堀切:それで、これはやっぱり自分でやらなきゃダメだと参入することになって、その開発責任者を仰せつかった。これが大変でして。
なぜですか?
堀切:第1に、これまでのつゆ・たれのメーカーさんから取引を断られてしまいますでしょう、今後はライバルですから。担当の営業はたまったものじゃないので、びしばしプレッシャーをかけてくる(笑)。「お前のつくる商品で俺たちの売り上げをカバーできるんだろうな」って、そこまでね(笑)。そのくらい営業にとっては大変な事件なわけですよ。
でも、一番つらかったのは製造現場です。だってしょうゆしかつくったことがないんですから。
「数字じゃ味はできねえんだ」
しょうゆと、つゆやたれはそんなに違うものですか。
堀切:当時の商品開発の技術担当者には、東大の農芸化学を出て博士号も持っている人もいました。みんなが「あの人はすごい、任せておけば大丈夫」って言うんだけれど、「うまい・まずい」と、その人の科学的分析の知識がどうもかみ合っていない。
こりゃ、この人に「うまいだし」とはどういうものかを感覚で理解してもらわないと、というので、有名な料亭の料理人のところに「教えてもらってこい」って送り出したんですね。そうしたら、料亭の台所で窒素がどうで塩分がどうでって数字を並べちゃったもんだから「お前、もう帰れ。数字じゃ味はできねえんだ」と言われちゃって(笑)。
どうされたんですか。
堀切:だから、最初の味づくりはみんな主婦の人に協力してもらいました。うちの社員で、家では主婦をやっている人たちが。考えてみれば、家の料理のおいしい、おいしくないに、学術的な知識や経験は全然関係がない。普通の主婦が「あ、これ、おいしいよね。じゃあ、これとこれを足したらもっといいんじゃない?」と思いつく、そこから始めたほうがいい。実体験がないまま、理屈でつくってもなかなかうまくいかないよね、ということです。
ですので当時、僕はその人たちを連れて、大阪の鶴橋に焼き肉を食べに行きました。いろいろ参考にしてもらおうと思って。
焼肉屋さんのようなたれをつくるんだったら、研究所にいるより、焼肉屋さんへ行って、焼肉屋さんのたれで食べないと分からないじゃないですか。商品開発といったら、白い研究服を着て、机の上でこうやってビーカーを振って、ガスクロを分析するのが仕事だと思っているわけですよ。そうじゃないんじゃないの、さっきの料理屋の大将に言われたように、分析するのもいいけれど、自分で「味」をつくる体験を重ねないと。
鳥越:なるほど。自分のつくった「味」が、安全性や、お客さんの支持を得られることを証明するために、分析して数字を付けるのはいいかもしれません。けれど、最初に数字から入ったらこういう商品は、まず、終わりますね。確かに(笑)。

堀切:どうしてそうなるかというと、うちの場合、しょうゆはスタンダード品はだいたい分析値が一緒なんですよ。だからみんながそれをスケールにして、できた商品を評価する。これにもう慣れちゃっているから、数値、窒素分だとか塩分とか核酸がどうでとかで見れば、仕事が完成する。普段の商品、しょうゆならばね。
自分の舌と味で味覚で評価することも、もちろんやりますよ。官能評価はするんだけれども、結局最後は数値的な裏付けがすべてになっちゃう。この姿勢が、新分野の商品開発・製造には大きな壁になるんです。
どんなところがですか。
量産するとおいしくならなかった理由
堀切:先に発売した、濃縮つゆの話になりますが、苦労の甲斐があって、ラボ(実験室)では「もうこれは、一流のそば屋のつゆよりうまい」とか「間違いなく売れる」とかみんなが言うような、いい商品がつくれたんです。だけどそれを工場で製造してみると、全然その味が再現されないんですよ。
鳥越:開発はできても量産はできない。すごくよく分かります。
どのように解決したのでしょう。

堀切:もう朝から工場に行って張り付いて、どこがいけないのかをしらみつぶしに探すしかないです。実は原因は単純なことで、つゆの基本、だしがちゃんとラインで取れてないんですよ。狙った通りのだしがつくれていなかった。
だけどその「だしが取れているか取れてないか」という評価をできる人がいなかったんです。問題はここです。工場の名誉のために言っておきますが、当時のしょうゆの官能検査は身内ながらすごいというか、蔵の違いもすぐ分かる人たちがいたんですよ。だけど、だしの官能検査ってやったことないから、このだしがいいのかどうかって、分からないわけですよ。「つゆなんてつくったことがないから、うまいかまずいなんて分かりません」と。おいおい、ちょっと待てよって。
鳥越:なるほど、仕様書の数字だけじゃ味を再現できない上に、新商品のだしには工場の目利きというか、味利きがいないわけですね。
堀切:なので本当に苦労しましたよ。でも、もう25年以上前に、そのつゆとたれをやっていたおかげで、今はいろいろな味づくりができるようになったんですよ。
鳥越:お恥ずかしいですが私たちの研究開発は、たぶんその当時のキッコーマンさんのレベルまでも行っていないです。安全性は別として、味の評価はほぼ官能評価だけなので「こっちがうまい」「あっちがうまい」とやっているわけです。
おとうふの製造に入ってこられた大手企業さんに「この業界には数字がない」と言われたこともありますね。その会社では、おいしさの数値化をされていて、「甘さ」とか「こく」とか、いくつかの数字でレーダーチャートをつくっておられました。ただ、何というか、そこには「こうすればおいしい」という裏付けは特にないんですよね。となると、数字にしたところで、どういう意味があるんだろうと。
堀切:数字というのはあくまでも後から付いてくる。最初はもう鳥越さんがやっておられるように、まずお客様が食べておいしいかおいしくないかを自分でつくって食べて考える。そもそも、味覚ってそのときの気温とか、もっと言うとその人の体調によっても感じ方が変わってくるわけだから、無限大なんですよ。
例えば少し寒いときに食べる豆腐と、暑いときに冷ややっこで食べる豆腐のおいしさって、同じ豆腐でも全然違うじゃないですか。その違いをどうやって表現するか、あるいはおいしいときにはよりおいしくということができるかどうか。それは数字では捕まえきれないし、そこで商品価値がずいぶん変わってくるんじゃないかと思いますね。
うまい×うまい=うまい、とは限らない
鳥越:先ほどのお話を伺っていて思ったんですけど、私も今、おとうふの総菜をいろいろ開発しているんです。「ひとり鍋シリーズ」とかですね。
私、おとうふの味はもう、いくらでも分かるんですけれども、それを何かのだしに合わせるというのは最初できなくて、「おいしいおとうふとおいしいだしとを組み合わせれば、それはもう完璧においしくなるだろう」と思っていたんです。
堀切:ああ、なるほどね。そう思いますよね。
鳥越:ところが、おいしいもの同士を組み合わせると全然だめで。そして、さっきおっしゃったように、ラボの机の上で食べているときはおいしくても、(量産のために)工場でライン化すると全然、もうまったく違うものになってしまう。お話を聞いて、「これだけ規模が違っていても、悩むところは同じなんだな」と思ったんです(笑)。
堀切:そうですよね、そしてそこがまさにノウハウなんですよ。技術なんです。
鳥越:我々食品メーカーの。はい。
試行錯誤を恐れてはメーカーは成り立たない
堀切:ラボではとてもおいしいものができた。それを理論的に分解して工業的なラインの中で再現するのは、一筋縄ではいかない。だからここがノウハウなんですよね。それを見つけるのは、数字も大事ですが、基本は試行錯誤ですよ、正直。
鳥越:うちが今やっていますのは、「最初から工場の製造ラインでつくってみる」というやり方です。実際につくる場所で、どうだこうだと味を調整しながら開発を進めます。
これをやると、望んでいる味には何が足りない、何が必要なんだということがダイレクトに分かってくるんです。ラボに頼らず現場で試す、そういうふうに変えてから、求める味が商品にどんどんどんどん、反映できるようになってきまして。ただ工場の方は普段の製造もあるので、ものすごく大変なんですけれども。
堀切:それは大変ですよね(笑)。
鳥越:最初は工場側もだいぶ困っていました。でも、新しいものが生まれるんだったらということで、やってくれています。これもある意味、中小企業だからできることかもしれませんね。
「ひとり鍋」シリーズのようにヒット商品が出ると、他のメーカーさんが雨後のたけのこ状態で同じようなものを出してくるんですけれども、まず半年以内に消えますね。味の考え方、つくり方が、数字で考えがちな他社さんより頭一つくらい出ているのかもしれないな、と思いました。
堀切:でもそれは大きいですよ、そのちょっとの違いがどんどん広がっていきますよ。
鳥越さんはやらないということですが、うちの場合はやっぱり商品については消費者調査をかけます。大型商品だったらテストマーケティングってやって、エリアを区切って、あるいはお店を区切って、一定期間、実際に店頭の評価にさらしてみると。
ただ、すべてを消費者調査に頼るわけではない。参考にはしますが。そして初めてのジャンルや、新しい付加価値を求める商品となれば、どんなにデータを取ったところで、最後はもう手探りでやるしかないですね。
鳥越:数字は確認には使えるけれど、新しいものを見つけるためには役に立たない。
堀切:そう、だってまず仮説がなければ、数字で検証することもできません。
数字に頼ると現場が見えなくなる
鳥越:いや、キッコーマンさんみたいなこれだけ巨大な会社さんでも、ポイント、ポイントで苦労する点って一緒なんだなと今日改めて知りました。
堀切:一緒ですよ。
鳥越:すごく新鮮でした。
堀切:製造業は、特に食品製造業は一緒ですよ、基本は。だってやっていること、そんなに違わないじゃないですか。つくっているものは違うかもしれないけど、やっていることは一緒ですよね。
鳥越:はい(笑)。
堀切:だから何か起きると原因はだいたい同じようなところにあるものですよね。
現場に行かずに数字を見ていないか、数字を結果でなく目標にしていないか、と。
鳥越:その数字ですが(笑)、去年の11月に発表された豆腐業界の動向(出所:富士経済)を見ていますと、30年ぶりぐらいに市場が拡大してまして。まあ、下がり続けていたのがちょっと上がっただけですけれども、それでも私らにとってはもう狂喜乱舞なんです。市場が持ち直すことに、我々がちょっとでも貢献ができたのかもしれない、と思っています。
堀切:いや、まだこれからじゃないですか。
鳥越:はい、ありがとうございます。

【日経BOOKプラス限定公開】
本記事に関連する箇所を書籍『妻の実家のとうふ店を400億円企業にした元営業マンの話』から抜粋してお届けします(242~248ページ)。 当該部分は第7章の後半、鳥越社長が新製品開発などにまい進する際に生じる“縁”と、その引き寄せ方についてのお話を。
やりたくてやっている仕事は「縁」を呼ぶ
── お互いが主観と主観でぶつかり合うのって、やたらとエネルギーが必要になりそうですね(笑)。
鳥越:その通りなんですけれど、主観がお互いに噛み合って気持ちよく仕事ができると、エネルギーを放出しながらチャージもしてもらえるようなことってないですか(笑)。そして、そういう仕事って、人と人の意外なつながりを呼び込むんですよね。
── と言いますと。
鳥越:自分の話で言うと、「やりたい、やってみたい」を原動力に、計算抜きの過剰な熱気で、異分野や新商品に突っ込んでいくとですね、これまでだったらとてもお付き合いできなかった大手企業さんと、なぜかお仕事でつながりができてくるんです。先方からも「そういうことはやったことないな、面白いね」と言ってくれる人が前面に出てきて。
── ああ、「類は“類”を呼ぶ」んですね(笑)。向こうにも鳥越さんみたいな人がいて、普段は自分の熱を持て余していて、そこに「何それ、面白そう」な話を持ち込むもんだから火が付いちゃう、ってことじゃないですか。具体例ってありませんか?
鳥越:あります(笑)、すごいのが。20年に「百式とうふ ※5」というのを出したんですけれど。
── あああ、ありましたね。いまのところ、「Gとうふ ※6」の最終版の。
鳥越:Gとうふの究極として開発したんですが、コロナ禍の真っ最中で。それでもいろいろ新しいことができました。百式といえば、金色のモビルスーツ。しかし、さすがに金色のおとうふはつくれない。そして、Gとうふは子どもの頃にガンプラを買ってもらえなかった私の思いの表れでもあるわけです。で、プラモデルといえば、塗装。
── ガンダムが絡むともう手が付けられませんね(笑)。で、塗装?
鳥越:おとうふが金色にできないなら、金色で塗ってしまえばいい。そこで様々なソースを試して、金色にできないか試しました。ひとり鍋シリーズのヒットで、食品メーカーさんから、たれのアイデアの売り込みをたくさん頂けるようになったんですね。でも、なかなかうまくいかない。
「君……何をやっているの?」
ある日、某大手食品会社の役員の方と会食の機会がありまして。その方は特にガンダムにこだわりはお持ちではないのですが、おそらく秘書の方などから「鳥越はガンダムの話をすると喜ぶ」と聞かされていたんでしょうね、シャアのセリフを振ってくださった。
── なんてことを(笑)。
鳥越:そこで、私はすかさず食いついて「御社のお力で、おとうふに塗る金色のカレーソースはできませんか、はい、金色です。光沢がある金色。おとうふをちゃんと塗れるような粘性があるとうれしいです」と。
── さぞ驚かれたでしょうね。
鳥越:かもしれません。でも、ご協力が頂けることになって。というのは、この会社のカレーの主力商品を担当している技術者の方が、ガンダムがお好きで。「よし、何が何でもやってやる」と。
── うわ(笑)。
鳥越:ソースには金粉が入っていまして。
── そりゃ原価がすごそうですね。
鳥越:はい、技術者の方が持ってきてくださったサンプルの小さな袋1つで2500円だそうで。「君……何をやっているの」と、同席した部長さんが思わず口走っていましたね。見事に金色になりましたが、残念ながら味がちょっと。そこから改良を重ねていただいて。
── 無事ソースができたと。
鳥越:そして、おとうふにこのソースがうまく載るようにするところは、例の匠屋の職人さんが頑張ってくれて。
── その方も、もしかしてガンダムが好きなんですか。
鳥越:もちろんです!
── すごいなガンダム。というか、そういうふうに「自分が燃えられる仕事がしたい!」と思う人が何人も、社内で息を潜めている、ということですかね。
鳥越:うちが「この指とまれ」と言ったところで、ネームバリューがないですし。儲けるためだけならもっと楽なお仕事がきっとあるんですよね。
でも、「こういうことがやりたい」と話させていただくうちに、本当の意味での「心の友」ができてくる感じなんですよ。「面白いことをやるんだったら俺も力を貸してやるよ、声かけてくれ」というような。
楽しい「居酒屋トーク」で終わるか、終わらないか
── 企業間のコラボ、というより、その企業にいる「燃えたい」人が、燃える仕事に反応してくる、ってことか。燃えたい人が、大企業の技術力をフルに使って強力してくれるなら、そりゃあ一騎当千でしょう。じゃあどうやったら、そういう人に火を付けられるのかといえば、やっぱり提案する側の真剣さ、本気さ、それが伝わる考えの深さ。
鳥越:居酒屋トークで「こんなことやってみたい」という話って、よくあるじゃないですか。手前みそながら自分が違うのは何かというと、それを実現まで持っていく気でちゃんと考えることだと思うんです。そうすると、居酒屋で話すときも本当の本気モードで話すし、それが周りに伝わると、「どうやったらこれできるんだろうな」とみんなが思うようになる。ザクとうふがそうでした。
── 豆腐じゃないにしても、「ガンダムを題材にして何かやりたい、俺だったらこうするのに」と言う人は日本には少なくないでしょうね。だけど、実現を前提として話しているか、それとも楽しい空想どまりかで、出会いも変わってくる。
鳥越:こっちはどうやったらザクとうふを実現できるかしか考えていないので、そうすると相談先との話も自然と具体的な質問になるし、となれば相手の「できる、できない」のジャッジも真剣になりますよね。
詰まるところ、好きなことを「本当にやる」気持ちでやっているかどうか。これって、最初はすごく小さい差なんですけど……。
── こっちが本気で実現したいことであれば、同じテンションの相手に出会える、あるいは相手が同じテンションになってくる。社内だけでなく、社外もそれで巻き込んでいくことができれば。
鳥越:ものすごく大きな差になってくるんだと思います。
※6 「Gとうふ」は、「ザクとうふ」(2012年)以来相模屋が発売してきた、豆腐でガンダムに登場するモビルスーツ頭部を再現するシリーズ。ザク、ズゴック、ビグ・ザム、ドムと展開し、「百式とうふ」と「ザクとうふ改」で開発は止まっている。専用ページ(https://sagamiya-kk.co.jp/beyond_g_tofu/)には「まだだ まだ終わらんよ!」の名セリフが。復活を期待したい。
(次回に続く)
[日経ビジネス電子版 2024年3月29日付の記事を転載、一部情報を追加]
「前年比」「利益率」などの数値目標がない会社が「失われた20年」で売上高23億円から400億円に急成長している。2012年に「ザクとうふ」で話題を呼んだ相模屋食料だ。率いるのは当時雪印乳業の「営業マン」だった鳥越淳司社長。普通の会社員が会社を燃える集団に変えていった20年間を、本人の言葉で語ります。
山中浩之(著)、日経BP、1870円(税込み)
●本書の内容をさらに詳しく知りたい!という皆さん、日経BOOKプラスにて「はじめに」と「もくじ」も公開しております。
