この保険、解約してもいいですか? 』(日経BP)を刊行。有料の保険相談を長年、続けてきた後田亨氏にとって、2003年から放送されたアフラック生命保険のテレビCMは「人生を変えたテレビCM」だった。「よーく考えよう~♪」というCMソングで知られるこのCMが、傑作である理由とは?

 前回、アフラック(*)のテレビCMについて書いた。

 「よーく考えよう~♪ お金は大事だよ~♪」というCMソングを最近、復活させた、あのテレビCMである。

 2003年から放送されたこのテレビCMがきっかけで、筆者は保険販売の仕事を辞めることになった。大げさかもしれないが、筆者の人生を変えたテレビCMであり、傑作だと思う。

 大事なお金についてよく考えた結果、筆者は「保険には極力入らないのが正解」という結論に達したわけだ。前回詳述したが、保険におけるお金の流れは……

●「受け取る給付金」=「支払った保険料」-「保険会社の経費や利益」

 ……である。ということは、加入者全体で見ると、必ず……

●「受け取る給付金」<「支払った保険料」

 ……となる。保険会社が商品設計においてミスを犯さない限り、加入者にとっては「受給<負担」となる。

 これに対して、次のような反論が考えられる。

 「保険以外の分野でも、商品やサービスを供給する側の経費と利益は、受給者が負担する。ことさら、問題視するようなことだろうか?」

 今回は、この点について、よーく考えてみたい。

* 正式な社名は、アフラック生命保険(株式会社)。

保険の場合、受け取るのは「お金」

 例えば、物を買う理由としては、自分では生産できない場合が考えられる。また、自作するより、ほかの誰かに作ってもらって、作り手などが負担した「費用+利益」に相当する金額を払うほうが、時間や労力の面で助かる場合もあるだろう。嗜好品などでは、金銭には変えられない価値を見いだす機会もあるだろうし、それは楽しいことに違いないとも思う。

 しかし、保険の場合、受け取るのは「お金」だ。

 入院給付金をはじめ「各種給付金」という「お金」を受け取るために、「保険料」という「お金」を支払う。「お金」を受け取るために「お金」を支払うのが、保険の仕組みであり、「お金でお金を買う仕組み」といってもいい。この点において物を買うのとは大きく異なる。

 そして、繰り返しになるが、保険料には会社側の経費や利益が反映されているので、「お金(保険料)」を「お金(各種給付金)」に換える際、手数料などが引かれる仕組みなのだ。しかも、ごく一部の商品を除き、手数料が全くわからない。

保険とローンは、何が違うのか?

 「お金」を受け取るために「お金」を払う仕組みとしては、ローンもある(ローンの場合、保険と違って、先にお金を受け取る)。しかし、ローンでは金利が開示されている。従って一定の額のお金を都合するために、別途、どれくらいのお金が必要になるのかがわかる。ところが、保険では、そこがわからないのだ。

 そうであれば、保険の利用法は明快だ。「自力で都合できる金額であれば、保険会社の世話にはならない」と決めたらいい。「自力」の範囲には、国の医療保険制度や勤務先の健康保険なども含まれる。これらの仕組みも無料で提供されるわけでなく、社会保険料などを負担しているのだから、「自力」と言っていい(会社が負担する社会保険料などについては、給料への影響を想像してみたい)。

 もちろん、自力では都合できない大金が保障される保険もある。子どものいる世帯主が加入する死亡保険は、これに該当し、保険の利用が適している。ただし、それ以外の民間の保険は、基本的に無視していい。「お金を都合する際の手数料がわからない時点で怪しすぎる」と判断すべきだ。お金が大事なら当然だろう。

 その際、不安喚起情報を遠ざけるのも重要だ。感情が判断を変える可能性があるからだ。

「条件」を見ないで「金額」だけ見る

 保険のパンフレットや提案書などで「保障内容」を見る際には、「給付される金額」だけに目を向けるといい。「病気・ケガで入院されたとき」「がんと診断確定されたとき」といった「給付の条件」が目に入ると、不安が喚起されがちで、感情が動いてしまうからだ。

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 例えば、「給付の条件」が記載された部分を、紙や手のひらで隠してしまうのも手だ。上図に示したような保険のパンフレットであれば、次のような見え方に変わる。

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 そうすると、仮に「がん一時金」が100万円であっても、「100万円なら持っている。だから、この保険は自分には必要ない」といった判断をしやすくなる。

迷ったら、アフラックのCMソングを思い出そう

 正直、筆者も大病で苦労した方の体験談などを聞くと、心を揺さぶられるときがある。だからこそ、よく考えたいと思う。動揺した状態で「大事なお金」に関する判断を下すのはいかがなものかと疑問に感じるからだ。

 幸い、保険における「負担>受給」の関係は、この先も変わりようがない。これからも、心に迷いが生じたときはアフラックのCMソングを思い出したい。

(写真:Andrey Popov/stock.adobe.com)
(写真:Andrey Popov/stock.adobe.com)

(次回に続く)

日経ビジネス電子版 2024年1月19日付の記事を転載]

【経済評論家・山崎元氏&両@リベ大学長】W推薦

「保険貧乏 卒業したい人へ/その保険 いる? いらない? 見極めるための最強マニュアル」大反響、重版続々。保険に入りすぎている「五十嵐夫婦」の素朴な疑問に、保険商品の仕組みから業界の裏事情まで知る著者が、とことんやさしく答えていきます。

後田 亨(著)、日経BP、1760円(税込み)