この保険、解約してもいいですか? 』(日経BP)の著者で、保険の有料相談を長年、受けてきた後田亨氏が、入るべき保険と、解約したほうがいい保険の見分け方を説くシリーズ。今回のテーマは「変額保険」。つみたてNISAの人気に便乗するかのような販売手法が近年、広がっているという。

(前回から読む)

 「これは『変額保険』ですね。加入前にお会いできてよかったです」

 過日、保険相談にいらしたお客様から、ある外資系保険会社の「提案書」を見せてもらった際、即答した。

 「営業の人から『つみたてNISAと生命保険のいいとこ取りをしたプランです』と提示された」とのことだったが、悪い冗談のように感じた。

 相続対策ならば分かるが、資産形成を目的とした変額保険の利用は、筆者には考えられない。確かに、変額保険の保険料は、投資信託で運用されるが、販売手数料などの諸費用が高い分、運用に回るお金が少なくなる仕組みだからだ。

保険料を投資信託で運用するのが、変額保険

 変額保険とは、どのような保険か。

 公益財団法人「生命保険文化センター」のホームページを見ると、「株式や債券を中心に資産運用をし、運用実績によって保険金や解約返戻金が変動する保険です」と説明されている。

 保険会社のサイトでは「無理のない保険料で長期投資を始められる」(外資系の生命保険会社)というメリットがあり、「万一のときの保障をしっかり確保しながら、将来の資産形成にお役立ていただける保険」(国内損保系の生命保険会社)といった説明がなされている。

 一般の人たちは、「保険料を投資信託で運用した成果が、解約返戻金や死亡保険金の額に反映される保険」と理解したらいいと思う。なお、死亡保険金には最低保証額がある。

 変額保険には、死亡保障が一生涯続く「終身型」と、一定期間に限られる「有期型」があるが、いずれも資産形成には向かない。理由は先に書いた通り、諸費用が高く、運用されるお金が少ないからだ。

運用成績0%なら、お金が23~26%ほど減る

 分かりやすい数字がある。次の表は、ある外資系生保と国内損保系の生保が販売する変額保険について、パンフレットに基づき、支払う保険料の総額と、解約返戻金(解約時に戻ってくるお金)を比較したものだ。

●ある国内損保系生保の変額保険
●ある国内損保系生保の変額保険
加入者:30歳男性、保険期間・保険料払込期間:35年、基本保険金額:1000万円、月額保険料:1万9130円の場合
●ある外資系生保の変額保険
●ある外資系生保の変額保険
加入者:30歳男性、保険期間・保険料払込期間:30年、基本保険金額:1000万円、月額保険料:2万1840円の場合

 運用成績がゼロのケースに注目すると、よく分かるだろう。解約返戻金(ないし満期金)として戻ってくるお金は、支払った保険料の総額を常に下回り、その差額が、運用に回らないお金の総額と推計できる。

 国内損保系の変額保険から見てみよう。35年間に払い込む保険料の総額803万4600円に対し、満期金の額は596万円となっている。つまり、差額の207万4600円は諸費用に消えると見られる。契約の締結・維持・管理などに不可欠な経費もあるとしても、保険料の25.8%が運用に回らない計算だ。

 外資系生保の表でも、保険料総額787万円に対し、運用成績ゼロの場合、満期金は606万円で、保険料の約23%に相当する181万円が運用に回らない仕組みと見られる。

 営業担当者の説明を聞くまでもない。仮に、100万円を積み立てる場合、23万~26万円の手数料が引かれる口座を利用するようなものなのだ。

 なぜ、保険商品の費用は高いのか。

(写真:Paylessimages/stock.adobe.com)
(写真:Paylessimages/stock.adobe.com)

販売員に支払う報酬が大きい

 変額保険のパンフレットには、保険料の運用先である投資信託の名前が掲載されている。これら投資信託の手数料率は、いずれも1%未満か1%台なので、販売員への報酬が大きく影響していると考えられる。販売員に支払われる報酬について、複数の保険代理店に尋ねたところ、「保険会社に所属している販売員の場合、契約初年度の手数料率が年間保険料の100%という事例もある」そうだ。

 実際、筆者は十数年間、お客様からの保険相談に対応する中で、加入から1年後の解約返戻金がゼロという契約例も見飽きている。

 以上から、資産形成を目的にした変額保険の利用は考えられない。ただし、この結論には様々な反論があるだろう。次回は、想定される反論と、それらに対する筆者の見解を記したい。

(次回に続く)

日経ビジネス電子版 2023年10月25日付の記事を転載]

その保険、あなたに本当に必要ですか? ── 老後に保険は要りません。保険に入りすぎている「五十嵐夫婦」の素朴な疑問に、保険商品の仕組みから業界の裏事情まで知る著者が、とことんやさしく答えていきます。経済評論家・山崎元氏、推薦。

後田 亨(著)、日経BP、1760円(税込み)