このたび、『 この保険、解約してもいいですか? 』(日経BP)を刊行。有料の保険相談を長年、続けてきた後田亨氏が、「入るべき保険と、解約したほうがいい保険」の見分け方を説くシリーズ。今回のテーマは「終身保険」と「養老保険」。「長期的にお金を増やせる」と、販売員は説明するが、実態を見れば「お金を増やすのに余計な時間がかかる」と捉えるのが正しい。

(前回から読む)

 「老後に受け取る保険金の大半は自腹ですよ」

 筆者が有料で行っている保険相談の場で、「掛け捨てではない保険」について説明する際、たびたび使っている言葉だ。

 具体的には「終身保険」と「養老保険」が該当する。どちらも仕組みは同じで、加入者が死亡した際には、遺族に保険金が支払われる(死亡保障)。加えて、解約の時期によっては、まとまった額のお金が「解約返戻(へんれい)金」として、返金される。

 そのため、保険会社の営業担当者や代理店(以下、販売員と表記)から「掛け捨てではなく保障と貯蓄を兼ねる」などと説明され、老後資金準備のために加入している人が多い。

(写真:beeboys/stock.adobe.com)
(写真:beeboys/stock.adobe.com)

貯蓄目的で保険に入るのは禁物

 しかし、結論から書くと、貯蓄目的での保険の利用は禁物だ。支払った保険料から差し引かれる「販売手数料」などの諸費用が高いため、貯蓄に回るお金が少ないからだ。

 わかりやすい数字がある。次の表はあるお客様に提案された「米ドル建て終身保険」に基づいて作成した。死亡保障15万ドル(約2250万円)に対して支払う保険料の累計額と、解約時に払い戻される解約返戻金の比較表だ。

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 確認すべきは、加入から1年後の返戻率だ。保険会社は、契約から1年間、販売員に支払う手数料を、特に手厚くしていることが多いからだ。

「長期的に増える」のではなく、「余計な時間がかかる」

 この契約では、1年後の返戻率は29.2%だから、1年目の保険料のうち70%強の金が手数料などに消えたと見られる。

 保険会社は保険証券の発行なども行うし、今日明日にでも加入者に万一のことがあった場合、死亡保険金を支払うための費用も発生する。他にも、例えば、システム管理費などは、顧客にとっても必要経費に違いない。

 それにしても、1年目に払う保険料の大半が諸費用に消えるのだ。保険料を、円より金利が高いドルで運用しても、15年間元本割れが続くのは、そもそも貯蓄に回るお金が少ない仕組みになっているからなのだ。

 「元本割れ期間はあっても、長期的にはお金が増える」と、販売員は説明する。先ほどの表で、契約から20年後や30年後の返戻率が、それぞれ111.0%、139.6%になっているのを見て、その説明に納得できる人もいるかもしれない。しかし、「本来、もっと早くお金が増えるはずなのに、初期費用が高額なため、元本回復に余計な時間がかかる」と認識したい。

 そのことを痛感した、決定的な証言もある。

自分で米国債を買うほうがマシ

 ある保険数理の専門家に、「外貨建て保険は、保険料を外国の債券などで運用している。それなら保険会社を介さずに、自分で米国の20年物、30年物の長期国債を買うほうがマシですよね?」と尋ねたところ、「もちろんです!」と即答されたのだ。「投資信託で運用する変額終身保険でも、保険会社を介さずに、投信を買うほうが得に決まっている」とのことだった。

 つまり、資産形成をしたいのなら、終身保険に加入するより、外国債や投資信託を買ったほうが断然いいのだ。

 それにしてもなぜ、「老後に受け取る保険金の大半が自腹」なのかと、いぶかしむ読者もいるだろう。冒頭で指摘したこの論点は、保険を見直す際に重要であると同時に、お客様によっては、理解に時間を要することもある。次回以降、じっくりとご説明したい。

(次回に続く)

日経ビジネス電子版 2023年10月31日付の記事を転載]

その保険、あなたに本当に必要ですか? ── 老後に保険は要りません。保険に入りすぎている「五十嵐夫婦」の素朴な疑問に、保険商品の仕組みから業界の裏事情まで知る著者が、とことんやさしく答えていきます。経済評論家・山崎元氏、推薦。

後田 亨(著)、日経BP、1760円(税込み)