このたび、『 この保険、解約してもいいですか? 』(日経BP)を刊行。有料の保険相談を長年、続けてきた後田亨氏が、「保険のやめ時」を整理する。特に、子どもが成長すると同時に、自身が病気やケガに見舞われることの増える中高年は、ぜひ把握しておきたい。

(前回から読む)

 筆者は、保険代理店に在籍していた2008年から保険相談を有料で行っている。お客様のお悩みで最も多いのは「今入っている保険を解約したいけれど、本当にやめていいのか、今がその時なのか、判断に迷う」というものだ。そこで本稿では、保険の「やめ時」を考える。

 以下の3つのジャンルに分けて整理する。

1.死亡保険
2.医療保険・がん保険・就業不能保険
3.貯蓄・運用目的の保険(終身保険、養老保険など)

1.死亡保険

 世帯主の死亡に備える死亡保険は、通常、子どもが自立したときがやめ時だろう。具体的には、一定期間の保障がある「定期保険」「収入保障保険」などが、該当する。

終身保険は、相続対策に有用である

 例外もある。一生涯の死亡保障がある「終身保険」を相続対策目的で利用する場合だ。遺族に残されるのが、銀行預金や投資信託だと相続税がかかるが、保険金なら一定額まで非課税であり、終身保険は、遺産分割・納税資金準備・税負担軽減に有用である。従って、加入者が死亡し、相続が発生するまで継続するのが正解だと思う。

2.医療保険・がん保険・就業不能保険

 これらは、そもそも加入の必要性が疑われる保険だ。加入している人に「やめ時」を問われたら、「今」と答えたい。

 医療費に関しては、健康保険など、国の医療保険制度のおかげで、個人の自己負担額には上限がある。「大病などにかかると、医療費以外の出費も見過ごせない」という意見もあるが、原則、自費で対応するほうが賢明だ。従って、がん保険も不要と考える。

 あるネット生保の決算情報によると、保険料収入のうち、給付金支払いに使われるお金の割合は55%前後だ。ということは、「医療保険」や「がん保険」から10万円を受け取るには、18万円近い保険料を払うような料金設定になっていると見られる(反論がある向きには、ぜひ、具体的な情報提供をお願いしたい)。それならば、できるだけ自費で対応したい。

 これに対して、中高年の方から、次のような懸念を聞くことがある。

「年齢的には、まさにこれから病気にかかりやすくなり、保険の世話になるはずだ。今からやめたら、損ではないか?」

 こう思う人には、「保険料は、あらかじめ、加齢とともに給付金の支払いが増える可能性を高めに見て設定されています」とお伝えしたい。

 既に給付を繰り返し受けるような健康状態でもない限り、見切りは早いほうがいいはずなのだ。

もしも、うつ病で収入が途絶えたら?

 判断に、少し迷うのが「就業不能保険」だ。就業不能保険は、病気やケガで、長期間、仕事に就けない場合に給付金が支払われる保険だ。

 会社員や公務員であれば、迷うことはない。なぜなら、このような場合、健康保険や共済組合から「傷病手当金」が支払われるからだ。これで、病気やケガへの備えは、ほぼ足りると思う。

 しかも、全国健康保険協会が開示しているデータを見ると、傷病手当金の受給原因となった傷病としては、例年、精神疾患が上位にくる(*1)。だが、就業不能保険では精神疾患の保障は限定的だ。うつ病をはじめとする精神疾患で長期休業した場合も対象になり得るという意味で、傷病手当金のほうが、就業不能保険より頼りになるはずだ。

 迷うのは、自営業者の場合だ。なぜなら、加入しているのが国民健康保険で、傷病手当金がない。

 しかし、傷病手当金の給付状況を見ると、自営業者も、休業状態には自己資金で備えるのが基本だと思える。傷病手当金の支給率は民間の生命保険における死亡保険の給付率と同じくらい低く(*2)、支給期間が1年を超えて長期化するのは全体の1割に満たないからだ(*3)。ここではこれ以上、詳述しないが、興味がある方は、本稿末尾に記載した拙著をご参照いただきたい。

 そんなわけで、医療保険・がん保険・就業不能保険は、必要性に疑問を感じたその日が「やめ時」と考える。本稿の読者の方にとっては「今」なのではないか。

 次回は、3番目の「貯蓄・運用目的の保険(終身保険、養老保険など)」について考える。

*1.全国健康保険協会「全国健康保険協会管掌健康保険 現金給付受給者状況調査報告(令和4年度)」記載のデータ(平成7~令和4年)を参照
*2.全国健康保険協会「全国健康保険協会管掌健康保険 現金給付受給者状況調査報告」(平成24~令和3年度)によると、傷病手当金の給付を受けた人の割合は0.4~0.6%程度で推移。一方、生命保険会社のディスクロージャー誌で確認できる死亡保険の給付率は0.1~0.7%程度(日本生命保険、明治安田生命保険、第一生命保険、ソニー生命保険、ライフネット生命保険のそれぞれについて2019年度の公開資料を参照)。
*3.全国健康保険協会「全国健康保険協会管掌健康保険 現金給付受給者状況調査報告(令和4年度)」参照

(写真:ipopba/stock.adobe.com)
(写真:ipopba/stock.adobe.com)

(次回に続く)

日経ビジネス電子版 2023年11月15日付の記事を転載]

【経済評論家・山崎元氏&両@リベ大学長】W推薦

「保険貧乏 卒業したい人へ/その保険 いる? いらない? 見極めるための最強マニュアル」大反響、重版続々。保険に入りすぎている「五十嵐夫婦」の素朴な疑問に、保険商品の仕組みから業界の裏事情まで知る著者が、とことんやさしく答えていきます。

後田 亨(著)、日経BP、1760円(税込み)