このたび、『 この保険、解約してもいいですか? 』(日経BP)を刊行。有料の保険相談を長年、続けてきた後田亨氏が、「保険会社のカモになりやすい人の特徴」を、前回に続き、考察する。

(前回から読む)

 「保険会社のカモになっている」「保険貧乏だ」と自称する人たちの共通点だ。大きく次の3つの特徴があると、前回(「損する保険」を勧める販売員に悪気はない?)書いた。

(1)「人」で決める
(2)「組織」で決める
(3)「返戻率」で決める

 1番目と2番目は、すでに説明した通りだ。個人として信頼できるからといって、販売員として信頼できるとは限らない。また、組織(企業)の規模が大きいとか、名前が知られているといった理由で、その組織が販売する保険商品を信頼することはできない。最後に、3番目の特徴を説明する。

保険貧乏になりやすい人の特徴(3) 「返戻率」で決める

 「返戻率」と書いて「へんれいりつ」と読む。いわゆる「掛け捨て」ではない保険で、満期や中途解約時に生じる返戻金(払戻金)の多寡を「返戻金÷累計保険料×100」で表記している。

 「掛け捨て」ではない保険とは、具体的には、終身保険・養老保険・個人年金保険などが該当する。

資産形成を目的とした高額商品

 特に判断が難しいのは、「保障と貯蓄を兼ねる」と説明されている終身保険と養老保険だろう。前者には一生涯、後者には一定期間の死亡保障があり、なおかつ老後や満期時に解約すると、まとまった額のお金が払い戻しされる。

 どちらも、保険料が高くなりやすい保険だ。実際、毎月5万円、6万円といった保険料を払うケースも少なくない(保険料が高くなる理由を詳しく知りたい方は、過去の記事=「30年後に、お金が39%増える保険」に入ってはいけない=などを、ご参照いただきたい)。

 それでも、加入する人がいるのは、「老後資金」準備目的で案内されているからだろう。数百万円から1000万円単位の老後資金を用意しようともくろむ場合、必然的に、月々の負担額も多くなるわけだ。

 ただ、筆者は、終身保険や養老保険に加入する人がいるのは、何より、契約から一定期間を経過すると、解約時の返戻率が、100%を超える点が要因だと思っている。「損をしない」「長期的には預金よりお金が増える」「投資は怖いけれど、保険は、将来、受け取る金額が決まっているから安心」と思っている人が大半だからだ。

 しかし、本当にそうだろうか?

保険が「安心」とは言えない理由

 確かに、終身保険や養老保険の場合、「何年後に保険を解約したら、いくらが戻ってきます」という金額が、あらかじめ決まっている。例えば、「30年後に解約したら、払い込んだお金に15%をプラスした金額を払い戻します」といった具合だ。一方で、株式投資や投資信託では、30年後に、お金は増えている可能性もあれば、減っている可能性もある。

 しかし、終身保険や養老保険の場合、加入してから一定期間は、解約すると、元本割れになる。この期間は「運用成績はマイナス」になることが「確定」している。このようなリスクについては、すでに説明した(「30年後に、お金が39%増える保険」に入ってはいけない

 投資にリスクがあるのは確かだが、保険にもリスクがある。それなのに、「投資は怖いけど、保険なら安心」と思うのは、「安心できる手段があるといい」という「願望」が影響している。「元本割れ期間はあるものの、長期的には預金より有利」という販売員の説明をうのみにするのも、「預金より有利であってほしい」という願いがあるからだろう。

 多くの保険契約で、短くても10年くらい元本割れ期間が続くのは、契約初年度に発生する手数料が高額だからだ。それでも「長期的にお金が増えるのならいいのではないか」と思う人もいるだろう。そこは常識で考えたい。

「長距離走だからといって、スタート地点で転倒してもいいのか?」
「向かい風は弱いほうが、高成績が出やすいはずだ」
「それは、短距離でも長距離でも同じだろう」

 ……と。

願望を排除しよう

  最後に、保険貧乏になりやすい人の特徴を、おさらいする。

(1)「人」で決める
(2)「組織」で決める
(3)「返戻率」で決める

 以上の3点には相関もある。

 返戻率が語られるのは、資産形成を目的とする保険である。これらの保険は高額なこともあって、専ら対面で販売されている。そうなると、買うかどうかを「人で決める」ということになりやすい。しかも、終身保険や養老保険は、保険の中でも、仕組みが複雑なほうだ。個人年金保険にしても、投資信託で保険料を運用する変額タイプなどは、理解するのが難しい。そうするとますます他人の判断に頼りたくなる。さらに販売する企業や組織の大きさや知名度で決めてしまう傾向も強くなる。これらの判断には、「人柄がいい人なら、悪い商品を勧めないはず」「大きな企業なら、悪いようにはしないはず」といった「願望」が働いている。

 保険貧乏になりやすい人の意思決定には、無意識のうちに願望が混じりやすいという共通点が見受けられる。

 自分の判断に願望が混じっていないか。保険を賢く利用したい人は、慎重になってほしい。

(写真:ggw/stock.adobe.com)
(写真:ggw/stock.adobe.com)

(次回に続く)

日経ビジネス電子版 2023年11月10日付の記事を転載]

【経済評論家・山崎元氏&両@リベ大学長】W推薦

「保険貧乏 卒業したい人へ/その保険 いる? いらない? 見極めるための最強マニュアル」大反響、重版続々。保険に入りすぎている「五十嵐夫婦」の素朴な疑問に、保険商品の仕組みから業界の裏事情まで知る著者が、とことんやさしく答えていきます。

後田 亨(著)、日経BP、1760円(税込み)