『 この保険、解約してもいいですか? 』(日経BP)を刊行。有料の保険相談を長年、続けてきた後田亨氏が、「老後の医療費」について考察する。老後の生活を考えたとき、医療費がかさむのではないかと懸念する人は少なくない。実際にはいくらかかるのだろうか? 具体的な金額を調べてみた。
「老後の医療費って、毎月どれくらいかかると思いますか?」
保険相談にいらしたお客様にこの質問を投げかけると「2万~3万円でしょうか」と返答されることが多い。読者の皆さまは、いくらくらいだと思われるか。
データを探せば、答えは出ている
正解は「多くても7000円未満。70代は6000円未満」だ。
データを示す。
データの出所は、厚生労働省「医療保険に関する基礎資料~令和2年度の医療費等の状況~(令和5年1月)」だ。この資料に、自己負担額が年額で掲載されている。これをグラフにしたのが、上図だ。
グラフにすれば、わかりやすい。年齢が上がるにつれて医療費の自己負担額も上がる傾向にある。それでも、65歳以上も含めて、すべての年齢区分で年額平均8万3000円を超えていない。
年額ではイメージしにくいかもしれない。そこで筆者は、月額に換算した数字を、保険相談のお客様にお伝えしている。グラフにすると次の通りだ。
最も高額になる65~69歳と90~94歳の年齢区分でも月額換算では平均6900円にとどまるのだ。
お客様は「意外です」と反応される。
筆者も、昨年(2022年)、上記の厚生労働省の開示データを確認した際、「医療費の自己負担額は想像以上に低い」と感じた(ウェルスペント代表の横田健一さんから、同社制作の「資産形成ハンドブック」をいただき、そこに記載のあったデータを厚生労働省のホームページで確認した)。
国の医療保険制度のおかげだと思う。特に個人の医療費負担に上限を設けている「高額療養費制度」の存在が大きいはずだ。例えば、70歳未満で、年収が約370万~約770万円の人の場合、仮に月の初めから月末までに「100万円」の医療費がかかっても、最終的な負担額は「8万7430円」となる。70歳以上で年収が約156万~約370万円(年収区分では「一般」に該当)の人であれば、「5万7600円」だ。
このような国の医療保険制度の恩恵で、老後の医療費の支出は、私たちが想像するよりかなり低い。この事実を踏まえて、老後の病気やケガにどう備えるべきか。それでも生命保険に入るべきなのか。結論から言えば、不要だと思う。詳しくは、次回、考えたい。

(次回に続く)
[日経ビジネス電子版 2023年12月14日付の記事を転載]
「保険貧乏 卒業したい人へ/その保険 いる? いらない? 見極めるための最強マニュアル」大反響、重版続々。保険に入りすぎている「五十嵐夫婦」の素朴な疑問に、保険商品の仕組みから業界の裏事情まで知る著者が、とことんやさしく答えていきます。
後田 亨(著)、日経BP、1760円(税込み)


