この保険、解約してもいいですか? 』(日経BP)を、このたび刊行。有料の保険相談を長年、続けてきた後田亨氏が、引き続き、「迷惑な生保販売員」の見分け方と対処法をお伝えする。長寿リスクを理由に終身型の医療保険を勧める論法はおかしい。なぜか?

 迷惑な生保販売員には3つの特徴があると指摘した。

1:「生命保料控除枠のフル活用」を勧める
2:「貯蓄・運用の必要性」を説く
3:「長寿リスク」を説く

 1番目の特徴は、前々回(生命保険を使った控除は得なのか? 「控除枠フル活用」は愚行)、2番目については、前回(控除狙いの「個人年金保険」は得なのか? 優先順位を誤るなかれ)説明した。今回は3番目だ。

迷惑な生保販売員の特徴3:「長寿リスク」を説く

「終身医療保険」は必要か?

 例えば、「一生涯の保障があるので、老後までずっと安心です」と、ケガや病気での入院などに備える「終身医療保険」への加入を勧める販売員がいる。本当に安心なのだろうか。

 常識で考えて、筆者はおかしいと思う。

「一生涯の保障」に潜むリスク

 20代や30代の人が医療保険に加入するケースを想像したらいい。入院給付金などを受け取る機会が増えてくるのは、例えば60代以降、加入から30年後や40年後以降だろう。

 時がたてば、物価も変動し、例えば、入院する際にかかる費用も変わる。「もしもの場合」にかかるコストを、「今」見積もっても、「もしも」が、現実になる「将来」において、その見積もりはだいたい外れる。外れる幅は、1年後より、30年後・40年後のほうが大きくなりやすいに違いない。

 従って、「一生涯の保障があるので、老後までずっと安心」とはいえない。「契約が長期になるほど、保障内容が時代や環境と合わなくなるリスクが高まります」と説明しない販売員は、相手にしないのが正解だ。

 医療保険やがん保険に、一生涯の保障を求めたくなるのは、長寿化のリスクが関係しているだろう。長生きすればするほど、大病を患うリスクが高まり、将来、医療費で生活が破綻するのではないかという不安が高まる。その不安に乗じるかのように、長寿リスクを説く生保販売員は多い。

 医療費だけではない。長寿化が進み、要介護状態になる人や認知症患者が増えていることから、高齢者やその親族に「介護保険」や「認知症保険」への加入を勧める販売員がいる。「介護や認知症は他人事ではないから、保険で備えよう」という論法だ。

 しかし、そもそも保険の利用が向いているのは、「他人事のように思える事態」だ。

長寿リスクに保険で備えるべきか?

 不要な保険を見分けるリスクマップを思い出してほしい。以前にも紹介したが、万一のことが起きる頻度が多いかどうかと、万一のときに必要な金額が多いかどうかで、4つに分けて考える。

保険での備えが向く事象とは?
保険での備えが向く事象とは?

 保険での備えが適切なのはAの場合であって、Bではない。また、CとDは、必要になる金額が多くないので、保険に頼らないほうがいい。「他人事ではない介護や認知症」は、まさにBないしDであり、保険で備えるのには向かない。

 このような子どもでもわかる理屈を無視して、不安喚起にばかり熱心な販売員は迷惑なだけだろう。

 以上、敬遠したい販売員を見分けるポイントを3つ挙げた。彼らを遠ざけるには、どうしたらいいか。たった1つ、ある質問を投げかければいい。

生保販売員を退散させる「たった1つ」の質問

 「会社側の取り分は、どれくらいありますか?」だ。

 営業現場にいる人には、まずわからない。営業現場でわかるのは、販売員の手数料くらいだ。そうであれば「お金の流れが不透明なので、検討すらできない」とお引き取り願える。ぜひ試していただきたい。

(写真:Hyejin Kang/stock.adobe.com)
(写真:Hyejin Kang/stock.adobe.com)

(次回に続く)

日経ビジネス電子版 2023年12月8日付の記事を転載]

【経済評論家・山崎元氏&両@リベ大学長】W推薦

「保険貧乏 卒業したい人へ/その保険 いる? いらない? 見極めるための最強マニュアル」大反響、重版続々。保険に入りすぎている「五十嵐夫婦」の素朴な疑問に、保険商品の仕組みから業界の裏事情まで知る著者が、とことんやさしく答えていきます。

後田 亨(著)、日経BP、1760円(税込み)