『 書店再興 まちの本屋さんのゲームチェンジのために 』(清野由美著)の読みどころを、日経ビジネス編集部の山中浩之が解説します。

【動画】『書店再興 まちの本屋さんのゲームチェンジのために』の読みどころを編集者が解説

映像制作:荻本貴史(ドリームムービー)
 これは福井県敦賀市がつくった公設・民営の書店「ちえなみき」の店内です。
 「ちえなみき」があるのは、北陸新幹線の現時点での終点、敦賀駅の真正面です。写真の中央、斜めの屋根の建物が「ちえなみき」で、すぐ後ろは立体駐車場、その後ろは敦賀駅です。
 新幹線の終点駅の前という超一等地に、敦賀市はショッピングモールでも、タワマンでも、パチンコ店でもなく「書店」を選びました。なぜでしょう?
 『書店再興』の副題は「まちの本屋さんのゲームチェンジのために」です。書店はいま、苦境を伝えられていますが、その中で新しい試みに挑む人々が次々と現れています。ちえなみきはその試みの一つです。地元に愛される場所となっただけではなく、大型観光バスが横付けする観光名所にもなっています。

 Netflixの配信で世界的にヒットを飛ばし、早々に「シーズン2」の制作が決定した『イクサガミ』。原作者の今村翔吾さんが、書店再興を目指してさまざまな活動をしています。
 ひょんなことから今村さんの知遇を得た清野由美さんと私が、今村さんから、自ら経営し、多店舗化を目論んでいるシェア型書店「ほんまる」のお話を伺ったことから、この本の取材が始まりました。今村さんはこの「ほんまる」のビジネスモデルを、まちの書店の復活や、新しい人材育成につなげようとしています。

頑張っているのは、今村さんや敦賀市だけではありません。

 下北沢のまちづくりと連動した店舗開発、ビールを飲みながら本を選ぶという信じられないような至福の時間を過ごさせてくれる、ブックコーディネーター・内沼晋太郎さんの「本屋B&B」。

 IT企業freeeが運営する、スモールビジネスとしての書店経営の実験場「透明書店」。都心での無人運営など、大胆な試みを次々と行って、経営を安定させる手法を提案しています。

 柳下恭平さんが、ドトールコーヒーと組んで池袋に出店した「梟茶書房」。「本を読むには40分のオフラインが必要だ」という発想からつくられた、魅力的な読書空間です。

 書店を支える取次会社の日販の子会社「ひらく」が、箱根に設けた「読書」を中心に据えたホテル「箱根本箱」。本との出会いの場所を広げていく、という日販の戦略のひとつです。

 図書館ではなく書店をあえて公が開設する、という動きの先駆けとなった青森県八戸市の「八戸ブックセンター」。「本を買う」という行為が持つ意味を見つめ直したことが、「図書館ではなく書店」という決定につながったそうです。

 もちろん、書店とそこで働く方々にとって、現在の書籍流通に不合理な部分が多々あることは事実です。その代表例が、大量に入荷する新刊書籍の検品とその在庫管理でしょう。そこへの革新も始まっています。
 ユニクロなどで、商品を入れたカゴを置くだけで精算が行われるレジをご存じと思います。同じRFIDと呼ばれる手法で、取次から届いたコンテナをリーダーでスキャンするだけで、検品が完了する仕組みがすでに開発されています。

 書店を巡る課題は広く深く、物流の効率化だけで解決できる問題ではないことはもちろんです。識者へのインタビューを通して、清野さんからの分析と、経産省の支援制度の紹介なども掲載しています。

 本屋さんを愛する人たちのさまざまな活動やメッセージをお伝えし、「書店」という業態の改革は、日本のビジネスすべての「ゲームチェンジ」に通じるのではないか、という清野さんのメッセージが込められた『書店再興』です。

 その改革の先頭に立つおひとり、梅田蔦屋書店の北田博充店長の言葉で締めたいと思います。
 「全盛期はこれからやってくると信じて仕事をしたい。今が最高だと言える業界にしていきたい」

 『書店再興』の“再興”は、「最高だと言える業界」の“最高”を引っかけています。

<内容紹介>
『書店再興 まちの本屋さんのゲームチェンジのために』(清野由美著)

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