『暮しの手帖』の編集長を9年間務め、エッセイストとして人気の松浦弥太郎さんが、「ものの価値」とは何かについて語ります。『 価値あるもの 衣・食・住・旅 』から抜粋して再構成。第6回。
一日が終わり、ふうと一息をついてベッドに入った時に欠かすことのない習慣がある。
あらゆるものやこと、仕事、人、家族、社会など、そういう自分に関わるすべてに手を合わせて感謝をすることだ。
「今日も一日ありがとうございました」と必ず言葉にして頭を下げる。
いやなことがあった一日も、つらくて涙した一日も、楽しくてうれしかった一日も、そのすべてを学びと捉えて、「いつもありがとう」と感謝をする。そうすると、不思議と気持ちがふわりと丸くなって、それまでのちからが抜けていくのがよくわかる。寝付きもよく、朝もすっきりと目を覚ますことができる。
「ありがとう」という感謝の言葉は、僕にとってすべてのモチベーションであり、起点にもなっている。
だから、自分にとっての基本は何かを考えた時、いちばんに思い浮かぶのが「ありがとう」という言葉だ。

もうひとつ。「はじめてのこころ」という心持ちがある。
「はじめてのこころ」とは、たとえば、働く、人と関わる、食事をする、学ぶ、遊ぶ、考える、作るなど、そういった毎日のいつものことに、出来るかぎり、はじめての気持ちで向き合うということだ。いわば初々しい気持ちを持ち続ける。
毎日、何事に対しても、うきうき、わくわく、どきどき、一生懸命な、初心者であり、新人でありたい。日々そういう心持ちを大切にしたい。
「はじめてのこころ」で向き合えば、なにもかもが自分の学びになっていく。
「ありがとう」と「はじめてのこころ」は、自分をとびきり新しくしてくれる。
毎日、その新しさをちからにして一日いちにちを送っている。
写真/松浦弥太郎
『暮しの手帖』の編集長を9年務め、エッセイストとして人気の著者が、「ものの価値」とは何かを、衣・食・住・旅の4つのテーマでつづりました。ブランドや値段のような指標ではなく、自分の価値観や暮らしに根ざしたものの見方、考え方とは。
松浦弥太郎(著)、日経BP、1760円(税込み)
