臨床心理士の中島美鈴さんが『 会社でいちいち傷つかない 認知行動療法が教える、心を守り成果を出すための考え方と行動 』をもとに行ったオンラインイベントをまとめました。職場の不平等感や不安に悩む視聴者からの悩みに答えた、連載第3回。
正当な評価が得られない、同僚と比べる…どうすれば?
前回は職場で多い悩みの「上司とのコミュニケーション」「職場の人間関係」について取り上げました。今回は会社にいる限りついて回る「評価」の悩みについて、お答えします。
■自分の努力が正当に評価されていないと感じる
私たちは、どこかで「評価とは言語化されるもの」「誰かがどこかで見てくれていて、評価してもらえるはず」と考えがちで、これもスキーマ(その人に深く根ざした考え方のクセ。簡単には変えられない)の一つです。でも、必要なのは評価制度の透明性と、それに沿った情報共有です。まず、評価する基準を明快にして、上司と部下が共有し、評価制度を透明化することです。その上で、部下は評価されたいのであれば、上司に評価されやすい情報を渡すことを意識しましょう。こまめな報告をして、成果を「見える化」しておくといいですよ。
■会社で言われたちょっとした一言を何度も思い返してしまう
これでは気持ちが休まりませんね。そして、友達や親に話すと「いや、怒っていないと思うよ」「それぐらいで嫌われないよ」と言われてしまう。でも、当人は信じられない。
「不安」という感情は、自分のリスクを回避するために湧き上がってくるものです。不安は生命を危険から守る本能的なもの。だからこそ、気持ちが休まらず、「危険・危険・危険……」と脳が誤作動を起こしてしまうのです。そんなときは、不安を落ち着かせようとするのではなく、「最悪の場合、どうなるのか」を予想するとよいでしょう。
たとえば、上司からの一言を気にしている場合、思い切って「めちゃくちゃ上司に嫌われたとしたらどうなる?」と考えてみましょう。「上司が自分のことを嫌いになって、仕事がやりづらくなって、業務が停滞して、評価がどんどん落ちて、クビになって……そうしたら家賃が払えないし、家も出ていかないといけない」と最悪なストーリーを思い描くのです。そして、「それがどれぐらいの確率で現実的に起こるのか」を考えるのです。自分の想像が非現実的だと思えてきませんか。また、おそらく、今の日本では生活保護などのセーフティーネットがあるし、住むところまでは失わないでしょう。
もう一つ、現実的な対処法として、本当に上司が怒っているとしたらどうなるかを考えるのです。それは自分にはどうしようもないことかもしれません。上司の感情を変えることは困難だと割り切って、早く帰る、帰り道にお茶をするなど、自分の気持ちを切り替える行動を取ったほうがよいでしょう。

■切り替えがうまくできずに頭がぐるぐるしてしまう
気持ちが切り替えられず何も手につかないということがありますよね。そのときに湧き出てくるのはイライラや自己嫌悪でしょうか。この場合、認知行動療法の視点からは「儀式化」がおすすめです。
勤務時間を終えても仕事のことを考え続けてしまうのであれば、カフェにでも入って、ペンとスケジュール帳を用意して、思い切って悩んでいることについて「課題と解決」を考える「オンの時間」にしましょう。
心理学的に、不安は避けるのではなく向き合う方が、しずまるという特性があります。
また、全然別のやり方ですと、ヨガや釣りなど、スマホに触れない習い事をすることもおすすめです。スマホがあるとついメールを見て、仕事のことを考えてしまいます。また、頭と体を使って疲れているときほど、よく眠れます。
■同じチームの同僚が仕事をしない
自分が働く部署に、常に締め切りギリギリで周囲に迷惑をかける同僚がいるのですね。不平等を感じ、「頑張っても無駄じゃないか」とやる気が下がるのも分かります。ただ、そもそも会社は不平等な場所なんです。
性格も違うし、能力差もある。それでも同じ給料というのは報われない気もしますが、仕方がないと割り切ることも必要です。
自分の仕事に集中して「同僚と同じ評価だけど、自分が納得いく仕事をしよう」「評価に見合っただけの仕事をしよう」と切り替えることも一案です。
あるいは、同僚の性格にもよりますが、「この時期にこれをやるといいよ」とその人を立て直す方法もあります。心理的な負担があるかもしれませんが、後から疲弊するよりは日頃から少しずつ「これをやっておくといいよ」と声かけをしていくのもいいかもしれません。

前回、今回と職場で多いお悩みに対してお話ししました。
会社で傷つきやすい人は自分が悪いのではなく、そうなりやすいスキーマ(考え方のクセ)があると気づいてください。今回のアドバイスがみなさんの心を守る助けになれば、幸いです。
取材・文/三浦香代子
中島美鈴著、日経BP、1760円(税込み)
