『 会社でいちいち傷つかない 認知行動療法が教える、心を守り成果を出すための考え方と行動 』の著者で臨床心理士の中島美鈴さんが、梅雨や夏バテで疲労がたまる時期のセルフマネジメントを紹介します。
認知行動療法で、梅雨、夏バテの不調を防ぐ
今年は早くも5月に猛暑日を記録し、6月には台風上陸、梅雨入りと気候の変化が激しいですね。
梅雨、夏バテの時期は、体調を崩しやすい時期です。寒暖差、気圧の変化、湿気などで体調管理が大変なうえ、休日に休んでも疲れが抜けない人が多いです。連休や祝日に家族サービスで出かけた、ここぞとばかりに遠出した……と心当たりがある人もいるのでは?
そんななか、やっとの思いで出社しようとしたら、朝から雨で気分が落ち込んだり、外はじめじめと暑いのにオフィスは冷房で体が冷えたりして、さらに疲れが溜まる。でも、これは天気が悪いのではなく、自分の疲れに気づけていないのが問題です。

認知行動療法でセルフマネジメントをするなら「可視化」が効果的です。「何にどれだけ時間を使っているか」という24時間のタイムログを書いてみましょう。「そんな時間はない!」という人は「予定を色分け」してみてください。私は紙の手帳を使い、予定が入った段階で4色に書き分けています。
赤:体調を崩した、病院に行ったなど健康面に関すること。仕事のキャンセル、やろうと思ったことの先延ばしなど
青:仕事に関すること
緑:自分のための楽しみ、ご褒美、自分の夢を叶(かな)えるための活動
黒:その他(ゴミ出し、家族の時間、いつものルーティンなど)

実はみなさんにアドバイスしておきながら、ご紹介したように、最近の私の手帳は真っ青。そうなると「体調が悪い」「疲れる」「やたら昼寝がしたくなる」ので、健康面の不安を赤字で書き込んでいます。赤字が続くときは、その1週間ぐらい前の予定を見直すと「真っ青で仕事ばかりしていた」、あるいは「緑が続き、遊び過ぎた」と分析できます。
行動パターンだけではなく、「誰と過ごしたか」もポイント。いくら大好きな友人でも長時間一緒にいると気疲れするときがあります。疲れが抜けないときは一人の時間を取るようにします。
インドア派の人にとって屋外への外出はハードルが高く、夜が弱い人にとって週2回も飲み会があるのはつらいですよね。どんなときに気力、体力を消耗するか「自分なりの法則」が分かっていると自己管理に役立ちます。
特に、毎日忙しいと「青」ばかりで「緑」を書き込みにくいかもしれません。その場合は「ご褒美を先取り」でもかまいません。私は年初に1年分の目標を立て、手帳に書き込みます。4月は予定通り「皮膚科でシミ取り」をしましたし、5月は「大きなパールのピアス」を買い、「美白」もしました。大それたことではなく、むじゃきに楽しめる目標でいいのです。

詳細なタイムログを書くのは大変ですが、予定の色分けなら自分の行動パターンが自動的に蓄積されていくので、おすすめですよ。
また、色分けでタスク管理をしているとはいえ、最優先すべきは「睡眠」と「休養」。疲弊した状態では仕事のパフォーマンスが上がらず、さらに疲れるという悪循環に陥ります。我が家の家訓は「眠いとき、体調が悪いときは、さっさと寝よう」。ぜひ、みなさんも心がけてください。
読書で心の悩みに向き合うのもおすすめ
リフレッシュが大事だとはいえ、梅雨時は疲れやすいので、無理に出かけるよりも自宅で過ごすこともおすすめです。心を落ち着けるには読書もいいですね。ミドル世代のカウンセリングをしていると、「お金の悩み」も多いのですが、私は最近『 DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール 』(ビル・パーキンス著、児島修訳/ダイヤモンド社)を読んで衝撃を受けました。この本は「お金の貯(た)め方」ではなく「お金の使い切り方」に焦点を当てています。人生の各段階を「タイムバケット」に分け、「何をやりたいか」と「いくら使うか(貯めておくか)」を明確にして「DIE WITH ZERO(ゼロで死ぬ)」を目指すのです。
私のカウンセリングを受ける方からは「貯金ができません」という悩みもよく聞きます。何にお金を使っているのか聞くと、資格取得のための書籍(段ボール箱に何箱も!)や推し活に使っている方がいました。それが本当に必要で、心の底から納得してお金を使うならいいのですが、この方たちに共通するのは「劣等感の裏返し」でした。
資格取得の本を、開かずにため込んでいる方は「自分は能力が低いから、資格ぐらい取らないといけない」、推し活をしている方は「自分のことは嫌いだけど、推し活をしている間だけは忘れられる」と言っていました。ちなみに推し活の傾向を見ると、女性は純粋に「好き」という気持ちが強く、男性は投げ銭などで「自分を見て」という自己アピールが入るように感じます。
「自分はダメだ」と考えるのは認知行動療法でいう「スキーマ(思考の型、クセ)」です。すぐに直すのは難しいのですが、「自分はそう考えがちなんだな」と「スキーマを自覚」するのが改善の一歩になります。
「お金が貯まらない」という人は一度、自分が何にお金を使っているのか。なぜ、そのお金を使ってしまうのかを客観視しましょう。そして、「タイムバケット」で本当にやりたいことにお金を使うと自己肯定感も満足度も上がりますよ。
2026年も下半期に入りました。心身の疲労を整えて、暑い夏を乗り切りましょう。
取材・文/三浦香代子 構成/木村やえ
中島美鈴著、日経BP、1760円(税込み)
