内容紹介

◆安倍晋三元総理が7月9日、参院選遊説先の奈良県大和西大寺駅前で銃撃され、死去した。二期通算8年8ヶ月の歴代首相の最長記録を残した安倍元総理は、「強い日本を取り戻そう」と経済や外交・安全保障政策で一時代を画し、国際的に評価された希有の政治家であった。

◆安倍氏は2021年11月に、今や100人近くの議員を抱える自民党最大派閥「清和会」の第10代会長に就任。安倍氏の死去で岸田政権を支える党内基盤に変化の兆しも表れている。誰が清和会を引き継ぐのか、内部抗争で分裂するのか、永田町や霞ヶ関の関係者は目をこらしている。

◆国際秩序が大きく揺らぐ「新冷戦」の下、日本の針路に影響を与える政権与党の中核はいかに形成されたか。本書は、自民党政権を巡る派閥抗争の歴史、歴代領袖の素顔を描き、巨大政策集団の実像に迫ったもの。

◆また国際政治にも大きな足跡を残した安倍元総理を追悼し、内外政策を分析・評価するとともに、故人が「日経ビジネス」誌に寄せた時事コラム「安倍晋三の眼」も収録した。そのほか森喜朗元首相や清和会の髙木毅・西村康稔新旧事務総長のインタビュー、関係資料も掲載している。

◆本書は、清和会創始者の福田赳夫から派閥を引き継いだ第二代会長安倍晋太郎と、晋三親子二代の物語でもある。晋三は、憲法改正を悲願とし、日米安保条約改定に政治生命をかけた母方の祖父、岸信介元首相のDNAも受け継いだ。清和会のプリンスと言われ、対露外交に執念を燃やし、首相の座を目前に病に倒れた晋太郎と、晋三の享年は奇しくも同じ67歳。本書は親子鷹へのオマージュと、悲劇に彩られた「世界のシンゾー」への追悼の詞である。

目次

第1章 自民派閥抗争と清和会の系譜
第2章 日米同盟、崩壊の悪夢と戦った宰相
第3章 検証アベノミクス
第4章 継承と発展(西村康稔 清和会前事務総長/高木毅 清和会事務総長)
第5章 永田町への遺言(森喜朗 元首相インタビュー)
第6章 安倍晋三の眼(「日経ビジネス」連載)
巻末 資料編