内容紹介

「有言実行」より「有言実現」
「挑戦」と「スピード」で駆け抜けた経営者人生を描く
鴻海出身のシャープ再建の立役者が初めて明かす、知られざる奮闘の日々


2016年、かつて「液晶の雄」と呼ばれるも、液晶事業改革の失敗などにより債務超過に陥っていたシャープに、経営再建の任を受けてやってきた人物がいた。台湾の電子機器受託大手、鴻海(ホンハイ)精密工業の副総裁(当時)・戴正呉である。

創業者・郭台銘とともに、鴻海を電子機器受託生産で世界最大規模の企業に成長させてきた戴は、シャープの社長就任後、わずか1年4カ月で東証1部へのスピード復帰を実現する。彼は何を思い、どのような経営手法でシャープ再生を実現してきたのか。

生い立ちと日本駐在、大同・鴻海での日々、鴻海がシャープへの出資を決めた理由、産業革新機構との出資争い、構造改革への挑戦、悲願の東証1部復帰、「ミスターコスト」の誕生秘話からM&Aの大原則、中国の資源をどう生かすか、そして日本の産業への展望まで。シャープ再建の立役者がいま初めて明かす、自伝的経営哲学。

目次

はじめに

第1章 シャープとの出会い
思い出のシャープ製ラジカセ/香港でのトップ会談/暗礁に乗り上げた出資交渉/産業革新機構との出資争いへ/鴻海にシャープ再建を任せていいのか/「シャープの再建を支援することは、鴻海にとっての『義』だ」/日本への片道切符

第2章 私の経営スタイルと 「シャープ」ブランド
「鴻海・シャープ連合」誕生/「経営基本方針」で伝えたかったこと/「戦闘指揮センター」でスピード経営を実現/黒字化するまでは報酬ゼロ/52本の社長メッセージ/「液晶のシャープ」からアップル型経営へ/「誠意と創意」──創業者の理念に学ぶ/旧本社ビルへの思い

第3章 構造改革への挑戦
「One SHARP」を目指して/「社内カンパニー制」の廃止/「300万円以上」は社長決裁に/信賞必罰の人事制度改革/「人員適正化の12施策」/不合理な契約条件を徹底的に見直す/ITを効率化する/偶発債務リスクに対処する/あらゆる契約の法務審査を徹底する/「罪庫」の管理を厳しく/拠点の統廃合をどう行うか/高コスト体質を変える

第4章 悲願の東証1部復帰
特許改革の6つの方針/鴻海とのシナジーで実現した物流改革/「SHARP」ブランド使用権を取り戻す/ハイセンスとの交渉/米国テレビ市場の教訓/社員のモチベーションをどう高めるか/新たな発想でピンチをチャンスに/「大きな魚ではなく、速く泳ぐ魚を目指せ」/「8KとAIoTで世界を変える」/悲願の東証1部復帰、そして次の目標へ

第5章 生い立ちと故郷宜蘭
台湾・宜蘭県に生まれて/幸福な幼少時代/母の氷菓店で商売の基礎を学ぶ/父の思い出/大同工学院へ/地元での学生時代/「80対20の法則」/囲碁と書道の世界にはまる/日本語との出会い/母の死を乗り越えて

第6章 大同時代と日本駐在
日本駐在のために猛勉強/日本の経済成長をこの目で見届ける/「ミスターコスト」誕生/厳寒の佐渡で、管理システムの真髄に触れる/リーダーシップの礎を築く/半導体工場の教訓

第7章 鴻海とともに飛躍
テリーさんとの出会い/世界最大のコネクターメーカーを目指して/深圳での「海洋廠」の建設/製造工程の垂直統合/「艱難汝を玉にす」/鴻海はなぜEMSの世界最大手になれたのか/プレイステーション受注で事業拡大/「赤字で受注、黒字で出荷」/「4象限マトリクス」/「フォックスコン・ジャパン」と「煙台工場」/中国と欧米に拠点を築く

第8章 シャープは日本の宝
「鉄は熱いうちに打て」/後継者を見つける/東芝ノートPC事業を買収/M&Aの大原則/「日本に液晶パネル産業を残したい、そして日の丸連合を」/東南アジア市場の無限の可能性/中国の資源をどう活用するか/日本の産業界の活路はどこに?/エコシステム形成こそ事業拡大のカギ/会員制ビジネスの拡大と多象限経営/最後のメッセージ

おわりに
解説