内容紹介

『孫子の兵法』を身に付けたもの同士が戦ったら、その勝敗を決するカギは何か?
経営者、スペシャリストからスポーツ選手、芸術家まで、常に抜群の成果を出す「勝負師」たちに共通する思考や行動とは?
累計20万部のロングセラー『最高の戦略教科書 孫子』、待望の続編!


◆『孫子』とは、一言でいえば戦略の本だ。自分が軍隊の将軍だったとして、ライバルの知らないような戦略やかけひきを自分だけが『孫子』から学べるなら、勝てる確率は高くなるだろう。しかし、もしお互いが同じように『孫子』を学んでいたら、こと知識の面では差がつかなくなる。このとき、お互いの戦力も似たり寄ったりだったとしたなら、何が勝敗を決めるのだろう。指揮官の能力に焦点をあててみるなら、非常にプレッシャーの厳しい環境のなかで、人並みすぐれた洞察力や判断力、さらには学んだ戦略に対する応用力を発揮できるかどうかが、大きく問われてくるだろう。

◆大企業同士の競争においては、企業名を隠してしまえば見分けのつきにくい製品やサービス、広告、販売戦略が氾濫している。このように情報が飽和し、お互いが似てしまわざるを得ない状況のなかでも、抜群の成果を生み出してしまう人たちがいる。本書で紹介する「勝負師」たちだ。いったい彼ら彼女らは、なぜそのようなことができてしまうのか。本書では、こうした実社会でも使える知恵を汲み出すべく、「誰しも判断を間違えてしまうような複雑きわまりない状況のなかで、他人よりすぐれた判断ができる人とは、どんな人なのか」を探究ずる。

◆筆者は、この20年間、経営者や起業家、コンサルタント、ファンドマネージャー、弁護士、会計士、自衛隊員、政府関係者、学者、格闘家、芸術家といった方々と、複数の中国古典の勉強会を続けてきた。また、雑誌連載や単行本執筆のために、多くの経営者にインタビューをしてきた。彼らとの対話を繰り返すなかで、「勝負師」と呼ぶべき人々にはいくつかの共通点があることがわかってきた。幅広い知識と教養を持ち、良い意味で予想の斜め上をいく、余人には思いもつかないような発想をする人々――。本書は、そうした「勝負師」たちに共通する思考と行動を、中国古典やビジネス名著を繙きながら明らかにしていく。

目次

まえがき
  『孫子』を読んだ同士が戦ったら、どうなるのか
   AIが判断しきれない状況のなかで
  勝負師たち

I 部 「勝負師」たちの土台――当たり前だけど、当たり前にできないこと

 第一章 ある領域での長く深い経験 ①察知力と直感
  微妙な変化やパターンの感知
  大局観、方向性、ビジョン
  レイヤーの世界観
  境界の垣根が低くなる中で
  当てになる直感、なりにくい直感

 第二章 ある領域での長く深い経験 ②経験の巧みな積み方
  感想戦をなぜやるのか
  直後の振り返りとアウトプット
  上手くいった場合の検証
  プロセスへの没入
  定点観測
  他人の失敗を集める
  プロは成功の経験を覚えている

 第三章 幅広い知識と教養 ①「己を知る」ために
  チンパンジーにも劣る専門家
  「幅広い知識と教養」の四つの意味
  外部への通路としての教養

 第四章 幅広い知識と教養 ②「自分なりの答」を作る道具として
  引き出しの数の幅
  東西の戦略書のバイブル
  かけ離れた領域の知恵

 第五章 幅広い知識と教養 ③「無意識のゆらぎ」のために
  無意識のコミュニケーション
  教養の落とし穴
  自分の勝てる領域で勝つ

Ⅱ部 敵やライバルなんて、本当に存在するのか

 第六章 「競」と「争」の織りなす世界
  「勝負の神」に近づくために
  自分を生きていても、自分のことはわからない
  「競争」の二つの意味
  戦争はあなたに興味がある
  敵が見えにくいビジネス、見えやすい人間関係

 第七章 敵やライバルを知るために
  情報の九五%は公刊の資料から入手できる
  楽しさと、明るさと
  人の逃れられないパターン
  無意識とコストと
  二人の大横綱、千代の富士と隆の里
  「相手の立場だったらレベル」と「人格なりきりレベル」
  喜ばれる贈り物とは
  自分のものの見方の外に出る

 第八章 人の気持ちがわかる「勝負師」たち
  人生の皺を通して初めて思い至るもの
  なぜ「戻るボタン」をつけたのか
  わざわざ持つべき対象としてのライバル

Ⅲ部 未来は誰にもわからない、しかし…

 第九章 環境、そして変わらないもの
  勝負師たちの地道な努力
  「変わらないもの」あっての「変わるもの」
  変化の本質と未来の幅、先行指標
  したたかに生き残る者たち
  変わらぬ本質を見抜く

 第十章 変化の本質を、いかに見抜くか
  変わることが、変わらない
  予言者アラン・ケイ
  不可能といわれた逆転劇
  本質がある中での試行錯誤
  温故知新
  この製品をダメにするものは何か
  時代を超えた勝負師たちの交感
  先取りされた未来としての「他の歴史」と「過去の失敗」

 第十一章 あり得る未来の幅、そして危機管理
  未来の幅を網羅する
  シナリオ・プランニング
  つながりを作るために
  危機管理の手法
  専門性五〇%、人徳五〇%
  知識と教養、そして全体の流れ
  大きな流れを感じる

Ⅳ部 「己を知る」という難問 ①諫言役を持つ

 第十二章 「諌言役」をいかに活用するか
  人はやがて自分を見失う
  「諫言」の三つの効果
  三方向からの諌言
  敵やライバルだからこそ
  諌言する側される側、それぞれの事情

 第十三章 「諌言役」の知恵をバラして使う
  「敵やライバルの視点」の効用
  「レッドチーム」と「ライバルからなるチーム」
  全能感を持たなかった権力者
  現代で魏徴を求めるとしたら
  「何かをなし遂げたい」という動機あってこそ
  「和して同ぜず」の意味

Ⅴ部 「己を知る」という難問 ②もう一人の自分

 第十四章「勝負師」は「もう一人の自分」の夢を見るか
  情報として自分を見る
  トップとそれ以外を分ける差
  離見の見
  心は高く天上に在り
  求められる役割を演じ切る
  働いてくれる「こびとさん」

 第十五章 外部からの眼
  三つの「もう一人の自分」
  視界の精緻化
  バッティング投手とビデオカメラ
  なぜ理屈を説明できるのか

 第十六章 人はもともと分裂している
  システム1とシステム2
  やらかす自分、後悔する自分
  対極を俯瞰する
  複数のアルゴリズムを走らす
  のっぴきならない状況で
  時間や距離が置けなくても
  役割を負った者と、それを批評する者と

 第十七章 「自分を超えた自分」はどこから来るのか
  ひらめきのメカニズム
  確率的アプローチ
  「こびとさん」に働いてもらうために
  無意識の罠
  煩悩を丸ごと抱える

 第十八章 メタ認知の技法
  上司からの教え
  広がる自分の意識
  この本の作者は誰?
  コンサルタントの知恵
  終わった後なら誰でも冷静
  自分が○○だったとしたら
  有限な資源としての心的エネルギー
  定点観測と勝負の瞬間

 最終章 卓越し続けるとは〜「勝負師」のあり方〜
  なぜその道を選べるのか
  歴史の一部としての経営者
  お先にごめんね
  卓越し続ける条件
  人生という名の「作品」


*本書で取り上げる「勝負師」たち

孫子 羽生善治 ルイス・ガースナー 大森義夫(元内閣情報調査室長) 和田洋一(スクウェア・エニックス前代表取締役社長) 酒巻久(キヤノン電子会長) 澤上篤人(さわかみホールディングス会長) 川村隆(日立製作所元代表執行役会長) 楠本修二郎(カフェ・カンパニー代表取締役社長) 相澤利彦(TSUNAGU・パートナーズ株式会社代表取締役) 藤本欣伸(弁護士) ゲーリー・クライン(心理学者) イチロー 森内俊之 落合博満 倉本昌弘 野村克也 カスパロフ(チェスの世界王者)松山英樹 中川誠一郎(中川ワイン)ピーター・ドラッカー タイガー・ウッズ マイケル・E・ポーター 冨山和彦 梅原大吾(プロゲーマー) アラン・プロスト(F1) 千代の富士 隆の里 井原正巳 アイルトン・セナ 大山康晴 ウォーレン・バフェット 永守重信 ゴードン・ムーア アラン・ケイ 中條高徳(アサヒ飲料会長) 雷軍(シャオミ創業者) 渋沢栄一 松岡泰之(シナリオ・プランニング) スティーブ・ジョブズ 曹操 李世民 魏徴 など