投資家みたいに生きろ[増補版] 』(日経ビジネス人文庫)を上梓した藤野英人さん。社長を務めるレオス・キャピタルワークスの「ひふみ投信」シリーズは運用資産残高1兆円を突破した。性善説でも性悪説でもなく「性楽説」を提唱する藤野さんが教える、目標達成の極意。「三日坊主上等」でサボってもぬけぬけと再開する力、8割で満点と割り切る働き方、「準備カット」で上手に時間を生み出すワザ──今をハッピーにしつつ結果を出す秘策を語る。

「三日坊主OK」な目標術

 張り切って2026年の目標を立てたけれども、早くも三日坊主……という人もいるかもしれません。
 目標達成のために必要な力についてお話ししましょう。

 まず、一番大事なのはなるべく簡単なことを設定して、それを続けることです。
 難しいことを設定しても達成できないんですよ(笑)。

 それから成功するためには「習慣化」が重要だといわれますが、「それができれば苦労しないよ」と反論したくもなるでしょう。
 そんな人にお勧めしたいのは「ぬけぬけと再開する力」です。

サボり癖を武器に変える力

 なぜ、三日坊主になってしまうかというと、4日目以降に再開できないから。
 再開できないのは続けられない自分が嫌になってしまったからです。
 「本当はもっとできるはずなのに」と自分を過大評価し、責めてしまうんですね。

 僕はピアノを50年以上弾き続けていますが、1週間練習をサボったとしても、ぬけぬけと再開します。
 自分が適当でいい加減な人間だとわかっているので、サボった自分を責めません。

 英語も一時は集中的にやるけれど、しばらくすると中断。それでも気にせず、たとえ半年後であろうと、ぬけぬけと再開します。

 再開すれば、長い年月で見れば続けたことになり、少しずつでも上達します。
 今年は「三日坊主上等」だと思って、再開力をつけてください。

人生は「性楽説」でうまくいく

 人間の本質については性善説や性悪説といった考え方がありますね。
 僕の人間観は「性楽説」です。

 もともと人間は楽をしたい、サボりたいという動物で、だからこそ進化してきました。
 「楽をしたい」という願いをかなえたのが産業革命で、後に新幹線や洗濯機、インターネットなどの発明を生んだともいえます。

 だから僕はサボっている人を見ても「当然だな」「人間性を発揮しているな」と思うし、自分自身も性楽説を所与のものとして付き合っていくつもりです。

 「自分はスーパーマンみたいに完璧な人間じゃない」ということを前提にすると気が楽になりますよ。

「『自分は完璧じゃない』を前提にすると気が楽になります」
「『自分は完璧じゃない』を前提にすると気が楽になります」
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8割できれば満点

 目標を立てて、習慣化したい。しかし、肝心の時間がない──という人も多いでしょう。
 ここでも大事なのは「完璧」を求めすぎないことです。

 僕は基本的に「8割できれば満点」という考え。ときには95点以上を求められる仕事もありますが、それは全体の数パーセント。日々の業務なら80点で早く仕事を終わらせるほうがいいですね。

 もちろん、60点よりは80点のほうがいいに決まっているので、80点のクオリティーを継続して出すことには注力します。

 0点から80点を取るのは最初はすごく大変だけど、80点を取り続ける力を身につけてしまえば、そこから100点を取るのもそれほど難しくない。

 ただ、ピアノ(※編集部注 藤野さんはアマチュアピアニストとしても活躍し、コンクールなどにも出場している)や芸術作品は100点では足りず、120点、130点を目指さなくてはいけないので、80点になってからもかなりの努力が必要です。

「準備カット」で時間が増える

 日々、「8割でOK」のスタンスで仕事をしていると、時間が短縮できます。

 たとえば講演会があるとして、完璧を目指してぬかりなく準備をしようとするなら、事前の会場視察や打ち合わせをしたほうがいい。でも、僕は話すテーマは自分の専門分野で、アドリブで話したほうが来場者に喜んでもらえる場合も多いので、事前準備はカットします。
 そうすると2時間は浮きます。その時間でもっと別のことをやるわけです。

 何かを続けるには結局、「好きなこと」が一番続きます。
 ハッピーなことであれば苦にならず、続けられます。長く続けたら、結果が出てくることも多いはずですよ。

考えてもムダなことは考えない

 こうした「今をハッピーにしつつ、未来に備える」という生き方については、拙著『 投資家みたいに生きろ[増補版] 』(日経ビジネス人文庫)でも詳しく書きました。

 この本は、2019年に刊行した単行本を文庫化したものです。
 文庫化にあたっては、新型コロナウイルスとAIによって変わった考え方、働き方、生き方について多く加筆しました。

 これらに向き合うとき、「全力を尽くす」がキーワードになります。
 考えても仕方がないことは考えず、今をどれだけハッピーにするか。それが結果的にストレスを減らしたり、未来のパフォーマンスを上げてくれたりします。

 「投資家みたいに生きる」と聞くと株で勝つのが目的かと思われるかもしれませんが、僕がこの本で伝えたかったのは、今をなるべくハッピーにしつつ、未来に備え、長期的に素晴らしい結果を出すための生き方です。

 みなさんが少しでも心を楽にして過ごすために、手に取ってもらえたらうれしいです。2026年は性楽説で生きましょう!

「考えても仕方がないことは考えず、今をなるべくハッピーに」
「考えても仕方がないことは考えず、今をなるべくハッピーに」
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取材・文/三浦香代子 構成/第1編集部 酒井圭子 写真/鈴木愛子

日経ビジネス人文庫『

ベストセラー、大幅加筆で待望の文庫化

「インフレ×AI時代」の不安を打ち破る人生戦略の決定版。「目に見えない資産」を増やす、「可処分時間」を見える化する、「浪費か投資か」を自問する、旅に出て「体験」する、属性をズラして人づき合いする……著名投資家が実践する思考と習慣を大公開!

藤野英人著/日本経済新聞出版/990円(税込み)