X(旧Twitter)フォロワー63万人、SNSで大人気の後藤達也氏が投資の手ほどきをする新刊『 転換の時代を生き抜く投資の教科書 』を出版しました。本書では投資を始めるにあたって改めて知っておきたい「経済のしくみ」についても、基本から分かりやすく解説しています。今回は「株式上場とはそもそも何か」について、抜粋して紹介します。
(前回から読む)株式上場はヤフオクへの出品に似ている
「上場」とは株式が東京証券取引所など、多くの投資家が集まる取引所で売買されるようになることです。
ただ、上場していなくても、株の売買は可能です。例えば、 前回 話した私の会社の株を買いたい人がいて、私がその人に対して売ってもいいと思えば、そこで取引できます。その株をいくらで売るかは双方の話し合いで決まります。
会社が大きくなれば、上場していなくても株主が何百人、何千人となることもあります。しかし、いざ売ろうと思っても、買い手を見つけてきて納得がいく株価で売るのは大変ですよね。
買いたい場合もそうです。大口の株主であれば、個別に相手を見つけてきて、売買することも無理ではないですが、小口の投資家だと手間もかかります。
しかし、上場すれば、この点が一気に便利になります。「1株500円なら売ってもいいよ」という人が東証など取引所に注文を出し、逆に「500円なら買いたい」という人がいれば売買成立です。この時、売る人は買ってくれた人が誰なのかも分かりません。1000株売った場合、何人かがそれらを少しずつ買うこともあり得ます。
上場すれば、「A社株・〇円・〇株」といった条件の下で、いろいろな投資家が売買を繰り返すわけです。
やや単純化すると、ヤフオク(Yahoo!オークション)に出品するのと似ているかもしれません。私物を売りたい時、街でいろいろな人に声をかけて買う人を探すのは大変ですよね。でもヤフオクに出せば、遠く離れた場所に住む顔も知らない人の目にも触れます。そして、その商品を一番高く評価してくれた人が買うわけです。
株も基本的に一番高い買値を申し出た人が買えます。さまざまな評価が入り乱れるなかで、「高くても買いたい人」「安くても売りたい人」たちがせめぎ合い、刻々と価格がついていきます。
こういう状態になったらベンチャーキャピタルも、株を売って利益を確定しやすくなります。創業者がたくさん株を持っているような場合も、一部を売却することで創業者本人の手元に現金が入り、生活を安定させるといったことも可能になります。
新たな投資家も呼び込みやすくなります。未上場の株と違って、売ろうと思えばすぐに売れるわけですから気楽ですよね。対照的に、例えば私が代表取締役を務める小さな会社の株を1株買った場合、いざ売ろうと思っても、買ってくれる人を見つけるのが大変です。
このように売ろうと思った時の売りやすさは「流動性」とも呼ばれます。流動性が高いこと自体、購入のハードルを下げるので、株価にプラスに働くこともあります。
証券取引所は個人投資家や外国人などさまざまな人に取引してもらえるよう働きかけています。投資家の裾野が広がり厚みを増せば、流動性が上がり、取引所の利便性が高まるからです。
上場すれば、追加の資本調達の道がグッと広がる
前回 、「うまく成長ストーリーをアピールできれば、資本家がリスク覚悟でまとまったおカネを投じてくれる」と話しました。企業にとっては、上場することでまた新たな資金調達の道も開けます。
成長ストーリーを語ることはいつでも大切ですが、上場していれば、個別に資本家を見つけてこなくても、取引所でたくさんの投資家が株価を見て売買の判断をしてくれます。魅力的な企業であれば、個人投資家を含めた数多くの人から資本を集められます。
上場での株は、例えば「1株1000円で100万株(計10億円)発行します。10億円調達できれば、有望な事業に活用し将来の利益成長につなげます。投資する価値があると思えば買ってください」というイメージです。
1株1000円の価値があると思えばおカネが集まり、企業は資金を調達できます。幅広い投資家に公に募り、資本を増やすので「公募増資」と呼ばれます。
証券取引所の新規上場は「IPO」と呼ばれます。「Initial Public Offering」の頭文字です。「初めて、公の場で、売りに出す」というイメージです。
「上場」は、企業が大きくなったことの象徴といえます。会社の株が公開の場で取引され、その評価が刻々と変わり、資本調達の可能性も広がるという重要な意味があります。
企業には資本調達の可能性が広がるほか、知名度が上がり、信頼も高まりやすいといったメリットもあります。採用活動がしやすくなると話す経営者も多くいます。
ただ、いいことばかりではありません。業績が悪くなると、株価は下がり、株主からの追及が強まります。経営者は退陣を求められる可能性もあります。
どんな投資家でも、高い価格さえ提示できれば持ち株を増やせるので、創業者や経営陣と意見の合わない株主が勢力を高め、経営変革を求めてくる可能性もあります。また、投資家は10~20年といったスパンより、目先の増益を求める傾向があります。短期的な収益成長へのプレッシャーが強まり、長期戦略を実行しづらくなる面もあります。
後藤達也著、日経BP、1760円(税込み)

