その企業の価値を考える時に、見るべきは営業利益率です。ライバル社と比べれば、その企業の強み、弱みも浮かび上がってきます。本記事は、『転換の時代を生き抜く投資の教科書』から抜粋して紹介します。
企業の「利益」の中でも、まずは「営業利益」が大事
企業の利益を考える時、売上高を起点に費用を差し引いていくそれぞれの段階でたくさんの利益があります。「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引き前利益」「純利益」……。もうこの時点で覚えるのが厳しそうという人が多いと思います。
ざっくりですが、覚えておくべきは「営業利益」と「純利益」です。まず営業利益を理解しましょう。
営業利益は売上高から本業にかかる費用を引いたものです。レストランを例にとってみます。レストランの費用として大きいものは「材料費」「人件費」「家賃」「光熱費」などでしょう。
例えば、売上高が1000万円で、費用が900万円なら、営業利益は100万円。営業利益率は10%となります。
少し雑ですが、もし売上高が一気に2倍となったら営業利益率はどうなるでしょうか。材料費はほぼ2倍になるでしょうが、家賃は店舗を拡大しなければ増えませんね。このため、材料費は「変動費」といわれ、家賃は「固定費」と呼ばれることがあります。客が増えれば人手も必要なので人件費が上がるかもしれませんが、2倍にはならなさそうです。光熱費も調理のためのガスの使用量が増えるかもしれませんが、照明やエアコン代は2倍にまでならないはずです。
そう考えると、売上高が2000万円に増えても費用は1600万円程度ならば、営業利益は400万円に。営業利益率は20%に上がるといったことが考えられます。
逆に売り上げが半減した場合も考えましょう。お客さんがこなくても、家賃はかかりますし、バイトに時給は払わねばなりません。売上高が500万円で費用が600万円、営業利益は100万円の赤字となってしまうことも考えられます。
売上高と営業利益はまさに本業の稼ぐ力を表したものです。売上高をどう伸ばせるか、どこにコストがかかっているか、どこに改善余地があるのかが分かります。そして営業利益率をライバル社と比べれば、その企業の強み、弱みも浮かび上がります。
いくつかの著名企業の営業利益率を比べてみましょう。
業種の特性や企業の努力は営業利益率に表れる
クイズです。ご存じの4つの企業、①トヨタ自動車、②JR東海、③任天堂、④セブン&アイ(セブン−イレブンなどを運営)の2022年度の営業利益率は次のうちそれぞれどれでしょうか?
A:31%、B:27%、C:7%、D:4%
日本の主要上場企業の平均は5~7%程度で推移しています。業種にもよりますが10%を超えると収益力の高い企業とみなされることが多いといえます。
では利益率の高い順から答えを見ていきましょう。最も高い31%は任天堂です。世界を代表するゲーム会社ですが、連結売上高が1兆6000億円もあるのに対して、従業員が7317人と少ないんですね。従業員ひとりあたりの売上高が2億円を超えているわけです。
優秀でクリエイティブな人材が集まっていても、人数が少なければ人件費の総額は抑えられます。
そして、任天堂は自社で生産工場を持たない「ファブレス」企業です。外部のパートナーに生産を委託しており、その点でも固定費が抑えられます。
さらに最近はゲームもかつてのようなカセットやディスクではなく、オンラインのダウンロードも増えています。物理的なソフトの生産や配送、販売店のマージンも抑えられます。5000円のソフト1本の利益率が高いことは想像しやすいでしょう。
次の27%はJR東海です。コロナ禍では営業赤字に陥りましたが、2023年3月期は旅行や出張が回復し、一気に高い利益率を回復しました。しかし、JR東日本やJR西日本の営業利益率は10%を下回っています。
なぜこんなに差があるのでしょうか。それは、JR東海は地元在来線よりも、東京~大阪を結ぶ東海道新幹線が大黒柱だからです。東京~大阪間は飛行機も競合となりますが、利便性から新幹線を利用する人も多いでしょう。
東京~名古屋、東京~京都だと、新幹線を選ぶ人が大半かと思います。つまりほぼ独占に近い形となっており、利益率の高い価格設定でもしっかり客席が埋まるビジネスモデルとなっています。
7%はトヨタ自動車です。営業利益は2兆7250億円。2024年3月期には日本企業で初となる約4兆円を見込んでいます。そんなトヨタですが、営業利益率では任天堂などに見劣りしますね。ザ・製造業とあって、従業員は連結で37万人を抱え、工場など製造に関わるコストも大きな割合でかかってきます。任天堂とは対照的といえます。
それでも同業のホンダ(4.6%)、日産(3.6%)に比べると、営業利益率はかなり高くなっています。コスト削減の徹底もあろうかと思いますが、売上高がホンダの4.7倍、日産の14.9倍と大きく、規模のメリットもあるといえるでしょう。
最後の4%はセブン&アイです。日本の小売企業で最も大きな売上高を誇りますが、営業利益率は低めです。小売業は完成品を仕入れて売る、というのが基本的なビジネスです。売上高に対する仕入れ費用の比率が高まるのは仕方ありませんね。
ちなみに小売業で営業利益率が高くて有名なのはユニクロを運営するファーストリテイリングで、直近の決算では13%となっています。アパレルのなかで圧倒的な首位とあって、高いブランド力や商品開発力、さらには原材料を調達する際の交渉力も競合に差をつけています。
営業利益率は高いほうがいいとはいえ、業種によって状況は異なります。既製品を仕入れて販売する小売業だと、利益率が何十パーセントにもなるのは難しいでしょう。こうした業種の特性を踏まえたうえで、その企業の収益力を見たり、ライバル企業と比べたりすることで、会社の稼ぎ方が見えてきます。
後藤達也著、日経BP、1760円(税込み)


