2022年12月から2023年11月に刊行された本を対象に、ビジネスパーソンが読むべき本を読者の投票で選出する「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」(フライヤー、グロービス経営大学院共催)が2024年2月13日に発表されました。各部門賞のうち、「自己啓発」「ビジネス実務」「特別賞・ロングセラー賞」について、共催者であるフライヤー代表取締役CEOの大賀康史さんが解説します。また、2024年のビジネス書の展望も聞きました。

前回 「『ビジネス書グランプリ』トレンドの転換を表す受賞作」

「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」の受賞作
「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」の受賞作
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 前回は「ビジネス書グランプリ2024」の「総合グランプリ」(「リベラルアーツ」部門同時受賞)と、「イノベーション」「マネジメント」「政治・経済」の各部門に選ばれた本について説明しました。今回は残る「自己啓発」「ビジネス実務」「特別賞・ロングセラー賞」について紹介します。

自己啓発部門賞『世界一やさしい「才能」の見つけ方』

 大谷翔平選手や藤井聡太八冠のように才能があれば。そして、その才能を世の中を良くするために発揮できれば──と、誰しも一度は思うのではないでしょうか。でも、自分にはそんな才能はなく、AI(人工知能)に仕事を奪われるかもしれない……いったい「自分の才能とは何なのか」と悩んでいる人も多いかもしれません。

 そんなとき、『 世界一やさしい「才能」の見つけ方 一生ものの自信が手に入る自己理解メソッド 』(八木仁平著/KADOKAWA)はタイトル通り「才能の見つけ方」について教えてくれ、その才能の生かし方、伸ばし方についても書かれています。

自己啓発部門賞を受賞した『世界一やさしい「才能」の見つけ方』の著者、八木仁平さん
自己啓発部門賞を受賞した『世界一やさしい「才能」の見つけ方』の著者、八木仁平さん
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 私もフライヤーを立ち上げ、メンバーにはできる限り、その人の才能に合った仕事をしてもらおうと思っています。この本を読んで、実は私も人の才能を見つけるのが好きで、自然とこの本に書かれているような方法を普段から試していたんだな、と気づかされました。

 もしも今、「自分には才能がない」と落ち込んでいる人がいるとしたら、自分が何かすることで予想以上に他人から感謝されたり、あるいは他人がうまくできないのを見てイラッとしたりするときがないか考えてみましょう。その仕事が、自分の才能であることも多いのです。また、我々は「努力すれば報われる」と信じていますが、その努力が報われるのは「才能に基づいた努力だけ」とも書かれており、考えさせられます。

 著者は「才能がない人なんていない」と言っており、この本には才能を見つけるためのチェックリストも掲載されています。自分の才能を見つけたい人に、お薦めの1冊です。

ビジネス実務部門賞『頭のいい人が話す前に考えていること』

 なぜ、みんな「頭のいい人」と思われたいのでしょうか。おそらく「頭のいい人」と「仕事ができる人」は同義で、やっぱりビジネスパーソンは仕事ができる人だと思われたいんですよね。

 『 頭のいい人が話す前に考えていること 』(安達裕哉著/ダイヤモンド社)には、「話し方だけうまくなるな」「承認欲求をコントロールできる者がコミュニケーションの強者になれる」など、頭のいい人の行動特性がかなり詳しく解説されていて、感心させられます。

ビジネス実務部門賞を受賞した『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者、安達裕哉さん
ビジネス実務部門賞を受賞した『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者、安達裕哉さん
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 ビジネススキルを説いた本は数多くありますが、この本が優れているのは「1回読めば理解でき、実践できること」「実例の豊富さ」だと思います。338ページと厚めの本ですが、読みやすい1冊です。

ロングセラー賞『DIE WITH ZERO』

 『 DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール 』(ビル・パーキンス著/児島修訳/ダイヤモンド社)が刊行されたのは2020年9月ですが、2022年末から2023年にかけて、私の身の回りでもかなり話題に上った1冊でした。いつも立ち寄る書店でも平積みにされていましたし、まさにロングセラー賞にふさわしいと感じています。

ロングセラー賞を受賞した『DIE WITH ZERO』の編集担当者、ダイヤモンド社の畑下裕貴さん
ロングセラー賞を受賞した『DIE WITH ZERO』の編集担当者、ダイヤモンド社の畑下裕貴さん
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 私の世代はお金の本というと『 金持ち父さん 貧乏父さん アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学 』(ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター著/白根美保子訳/筑摩書房。2000年刊、現在は改訂版が販売中)が大ベストセラーとなりましたが、その内容は「資本主義の中において、いかに自分の資本=富を増やすか」が焦点でした。

 しかし、総合グランプリに『 きみのお金は誰のため ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」 』(田内学著/東洋経済新報社)が選ばれているように、今や「富を増やす」ことを人生の目的としてしまうと、息苦しい時代でもあります。その点、この本は「(お金を使い切って)ゼロで死ね」と言い切り、本来、人生で大事にすべきなのは経験や思い出であって、お金はそれをかなえるためのツールにすぎないと説いています。

 例えば、35歳で使える1000万円と、75歳で使える1000万円では意味が違います。35歳だったら住宅のローンの頭金や留学、投資にお金を使って豊かな体験をできますが、75歳での使い道は限られてしまいます。

 そうなると確かに早めにお金を使い切って、ゼロで死ぬ──という主張も筋が通っていると感じます。お金に対する新しい価値観がインストールされる1冊です。

2024年はどのような本が登場するか

 ここまで前回と併せて7冊の本を紹介しましたが、2024年はさらに今までの固定観念を打ち破るような、価値観を再構築するような本が現れるのではないかと思います。今回、特別賞・グロービス経営大学院賞に『 冒険の書 AI時代のアンラーニング 』(孫泰蔵著/日経BP)が選ばれましたが、そちらには今まで重視されてきたメリトクラシー(能力主義)を考え直そうという記述もあります。( 「『ビジネス書グランプリ』グロービス経営大学院賞に『冒険の書』を選んだ理由」 参照)

2024年2月13日に行われた表彰式で話すフライヤー代表取締役CEO・大賀康史さん
2024年2月13日に行われた表彰式で話すフライヤー代表取締役CEO・大賀康史さん
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 やはり新型コロナウイルス禍が明け、人々の意識が変わったように感じます。これまでは転職をするにしてもリーマン・ショックや不景気といった恐怖に迫られていることも多かったのですが、今は自己実現のために転職をするのが当たり前。身に付けるスキルも以前は資格でしたが、今はコミュニケーション能力などのポータブルスキルが重視されています。

 変化の激しい時代、ビジネスパーソンが学ぶためにビジネス書が果たす役割はますます大きくなるでしょう。今から2025年にはどんな本が選ばれるかを楽しみにしています。

取材・文/三浦香代子