人生で成功するためには、自分の強みを知って、それをうまく活用することが必要だ。累計140万部のベストセラー『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 最新版 ストレングス・ファインダー2.0』(ジム・クリフトン、ギャラップ著/古屋博子訳)では、ウェブテストによって自分の強みを34に分類された資質で知ることができ、企業や団体での活用が広がっている。今回は、「よなよなエール」「水曜日のネコ」など個性的なクラフトビールを醸造・販売しているヤッホーブルーイングの高畑健太郎氏、小川拓也氏に本書の活用方法を聞いた。

チームビルディングの一環として導入

 ヤッホーブルーイングは現在約200名のスタッフを擁しているが、その組織はフラット化されている。上司・部下の階層は最小限にして年功序列ではない実力評価を行い、どんな情報もオープンにして誰でも自由に意見が言える組織を目指している。

 人事関連部門としては、社内制度や働く環境を整備する「ヤッホー盛り上げ隊」と、採用や人材開発を通してスタッフのやりがいを醸成する「モチベーションブルワーズ」の2ユニットがあり、両ユニットが共同でチームビルディングプログラム(TBP)を展開、スタッフの結束力強化、ひいては企業の成長を支えている。

 TBPとは、各スタッフがそれぞれパフォーマンスを発揮しながら、目標の達成や課題の解決に取り組めるチームづくりを目指すプログラムだ。2008年、代表取締役社長に就任した井手直行氏が、楽天大学で受講してきたプログラムを参考に、自身が講師となって2009年に社内展開したのが同社におけるTBPの始まりだった。

 元の楽天大学のプログラムの中に、自己理解・他者理解を深めるために書籍『さあ、才能に目覚めよう』で実施できるウェブテスト(クリフトンストレングス)を使うコンテンツがあり、必然的にヤッホーブルーイングでも全社員が1人1冊、同書を持つことになった。当時は20名ほどしかいなかったスタッフが10倍に増えた今でも、TBP、そして本書を利用したコミュニケーション促進は継続されている。

『さあ、才能に目覚めよう』のウェブテスト

 本書に添付されたアクセスコードを使用することで、自分の強みが分かるウェブテスト(クリフトンストレングス)を受けることができる。テストの質問に答えていくと、回答者の強み(資質)が明らかになる。資質は4つのカテゴリーで34に分類されており、テストによって上位5つの資質が分かる仕組みだ。

 各資質の内容やそれを生かすための行動アイデア、各資質を持つ人との働き方については、本書で詳しく解説している。

<34の資質>
○実行力
 達成欲/アレンジ/信念/公平性/慎重さ/規律性/目標志向/責任感/回復志向
○影響力
 活発性/指令性/コミュニケーション/競争性/最上志向/自己確信/自我/社交性
○人間関係構築力
 適応性/運命思考/成長促進/共感性/調和性/包含/個別化/ポジティブ/親密性
○戦略的思考力
 分析思考/原点思考/未来志向/着想/収集心/内省/学習欲/戦略性


各自の資質を全社で共有

 本書のウェブテストによって明らかになった各人の資質(強み)は一覧にされ、社員であればオンラインで誰がどんな資質を持っているのかを確認できるようになっている。また2022年からは、各人が首からさげる名札にも記載されている。この名札は「Donata(どなた)」と命名されており、単に名前を知らせる以上のコミュニケーション・ツールとなっている。

スタッフが携帯する「Donata」。5つの資質が記載され、一目で分かるようになっている
スタッフが携帯する「Donata」。5つの資質が記載され、一目で分かるようになっている
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 資質情報を共有する効果について、採用・育成・組織開発ユニット「モチベーションブルワーズ」でディレクターを務める高畑健太郎氏(ニックネーム:六文)(*1)は、次のように説明する。

 「自身の強みを知ることで自己理解を深めることはもちろん、相手を理解する、また相手に自分を理解してもらうという点で、非常に有効だと思います。例えばチームで一緒に働いていると、『この人、なんでこんなふうにするんだろう』『なんでこんなタイミングで、こんなことを言うんだろう』という疑問がわくことがありますが、そういうときにその人の資質の詳細を本で確認すると、『ああ、自分はこれが普通だと思っていたけれど、あの人の場合は違うんだ』という気づきを得ることができるんです。それによってイライラとかモヤモヤが減り、相互理解に向かいやすくなっていると感じます。

 私はディレクターという立場上、期初に社員各自と面談して目標設定をする機会があるのですが、そのときには『この人は仕事を抱えすぎる傾向がある』とか『この人は突発的な仕事に対応するのが得意』とか、それぞれの資質を考えながら仕事のすり合わせ、目線合わせをするようにしています」

*1 ヤッホーブルーイングでは、スタッフ同士の距離を近づけ、フラットな関係性の構築につなげるためにニックネームで呼び合っている。
高畑健太郎氏(ニックネーム:六文)
高畑健太郎氏(ニックネーム:六文)
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高畑健太郎
ヤッホーブルーイング 採用・育成・組織開発ユニットディレクター
長野県上田市真田町出身。ヤッホーでのニックネームは出身地にちなみ「六文(ろくもん)」。大学卒業後、公益財団法人日本生産性本部で、企業や官公庁の人材開発/組織開発支援、経営者セミナー企画に従事した後、Uターンで、ヤッホーブルーイングに入社。製造部門でビールの充塡・品質管理・製品開発などを担当後、現在は、人事ユニット「モチベーションブルワーズ」で採用・育成・組織開発を担当。よなよなエールとラジオをこよなく愛する、2児の父。

 またストレングス・コーチ(*2)の資格を持ち、システム管制塔(情報システム部)に所属しながら、他部門でクリフトンストレングスに関する講座を開催することもあるという小川拓也氏(ニックネーム:たくあん)はこう語る。

 「当社ではしばしば、様々なユニットから横断的にスタッフを集めてプロジェクトを立ち上げ、商品開発や課題解決に取り組むことがあります。そういう場合、プロジェクト・メンバーの中には普段話さない人がいることもあるので、キックオフの段階で資質に基づいた自己紹介を行い、互いを知るために役立てています。考え方のクセやイラッとするところを共有しておけば、メンバーが安全に意見交換でき、プロジェクトをスムーズに進められるようになります」

 小川氏自身、相手にどう声をかければ気持ちよく動いてくれるか、相手の資質を考えながら言葉を選ぶこともあるという。

*2 強みに基づく人材開発を利用して他者をコーチングできる十分な資格があることを、『さあ、才能に目覚めよう』の著者、ギャラップが認めた人物。
小川拓也氏(ニックネーム:たくあん)
小川拓也氏(ニックネーム:たくあん)
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小川拓也
ヤッホーブルーイング システム管制塔(情報システム部)
2021年春中途入社。前職ではプログラマー(開発)、システムエンジニア(開発)なども経験している。複業として、時折、他のユニットに出張クリフトンストレングス講座をしにいったり社外でアシスタントコーチをしたりしている。

新人研修でも活用、他者の資質を評価するツールも

 同社では、新人研修でもTBPと本書を組み合わせた体感型の学習を実施している。それぞれ違った資質を持ったメンバーがチームを組んで、1つの課題を成し遂げるために意見交換をしたり行動したり、「疑似的な仕事」をしてもらうのだ。

 「新入社員には『新人PJ』という3カ月間のプログラムを用意して、実際に当社の課題解決に取り組んでもらっています。このプログラムからは採用サイトのリニューアル、社歌の作成といった成果も生まれています」(高畑氏)

 学生を対象にしたインターン研修では、『さあ、才能に目覚めよう』を事前に送ってウェブテストを受けてもらい、自身の資質の理解を進められるようサポートしたり、同社での資質活用事例を紹介したりしている。

インターン参加者に送られるキット。同社の商品に加え、『さあ、才能に目覚めよう』が入っている
インターン参加者に送られるキット。同社の商品に加え、『さあ、才能に目覚めよう』が入っている
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 また、広報部門(ヤッホー広め隊)では、お互いの理解を深めるために、新人メンバーが入ってきたタイミングで、自分が持つ資質に当てはまる行動の事例を定例ミーティングで紹介し合っている。さらに、他のメンバーから自分が持つ資質に関するフィードバックを受けることで、自己理解も進んでいるという。

資質に磨きをかけるサポート体制づくり

 高畑氏、小川氏とも、ヤッホーブルーイングには転職という形で入社したというが、前の職場と、TBPと本書をフル活用している現職場との違いについて聞いてみた。

 「前職もいい会社ではありましたが、なぜここで怒るのだろう、と思う場面もありました。今は人が怒るポイント、嫌がるポイント、喜ぶポイントが本の中に言語化されているので、コミュニケーション面での安心感は高いですね」(小川氏)

 「前職は人材開発や組織開発支援の会社だったので、クリフトンストレングスのような自己認識ツールを研修で取り扱っていました。ただ、当社ほど徹底して利用しているところはなかったように思います。全社的にこうした取り組みが浸透しているので、結束感にもつながっていると感じています」(高畑氏)

チームビルディング研修の様子
チームビルディング研修の様子
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 多くの社員が本書を熟読し、コミュニケーション向上、チームによるプロジェクトの円滑化を実現しているヤッホーブルーイング。今後の展望について、小川氏は次のように語ってくれた。

 「健康診断後、医師や栄養士と相談することで病気の改善や健康増進を図れるように、本書で強みを診断したら、それをもっと効果的な強みに育てていけるようなサポート体制をつくっていきたいと思っています」

取材・文/暮 論子 写真/ヤッホーブルーイング提供

ウェブテストで得意なことを見つけよう

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ジム・クリフトン、ギャラップ著/古屋博子訳/日本経済新聞出版/2420円(税込み)