その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は安藤優一郎さんの『 30の名城からよむ日本史(日経ビジネス人文庫) 』です。

【はじめに】

 幕府が築いた日本初の西洋式城郭である五稜郭は、なぜ五角形だったのか?
 朝廷は、なぜ多賀城に国府を置いて東北支配の拠点としたのか?
 家康によって築城された当初の江戸城には、なぜ二つの天守があったのか?
 日清戦争の際に、なぜ広島城内に大本営が置かれたのか?

 江戸時代が終わるまで、城は大小問わず軍事施設であり、権力者の象徴だった。
 城が質的にも量的にも大きく飛躍を遂げたのは、戦乱の時代つまり戦国時代だったことはいうまでもない。その過程を追った城郭史という研究分野もある。
 しかし、城は合戦の舞台として歴史に登場するだけではない。城を舞台に繰り広げられた人間ドラマが歴史上の出来事となることも少なくない。尾張清洲城で開かれた清洲会議は、信長亡き後の権力闘争の舞台であり、秀吉が天下統一に邁進する場となった。

 城の構造ではなく、その場所に築城した理由に注目することで権力者の意図や支配の方式が見えてくることもある。なぜ信長は安土に、秀吉は大坂に、家康は江戸に城を築いたのか。彼らが目指した国造りのグランドデザインが透けてくる。
 一方、泰平の世の江戸時代に入ると、軍事施設たる城は幕府の命により減らされる。城よりも城下町の整備に力が注がれ、むしろ政治・経済・文化の拠点としての性格を色濃くする。
 そして、戊辰戦争(明治維新)を経ることで城は軍事施設としての意義を失う。甚大な破壊力を有する大砲の前には無力だったからだ。明治に入ると、無用の長物として次々と取り壊されていった。

 ところが、往時のままとは限らないが、観光振興のシンボルとして再生される流れが近年顕著となっている。城の象徴・天守閣の再建がメインだが、城下町の復元というレベルでの再建も粘り強く展開されているのが昨今の情勢だ。城ブームは衰えることを知らない。
 一連の城ブームは、世代を越えて城への関心が高まっていることを示すものに他ならない。歴史への関心を呼び起こすきっかけとなっている。

 なぜ、ここに城があるのか。城を舞台にどんな出来事が起きていたのか。城を介して歴史を読み解こうという試みである。
 本書はこうした動向を踏まえ、30の名城を切り口に歴史を読み解くことで、学校では教えられることがなかった日本史の意外な事実の数々を明らかにする。

 本書執筆にあたっては日本経済新聞出版社ビジネス人文庫編集長桜井保幸氏、編集担当の野崎剛氏の御世話になりました。末尾ながら、深く感謝いたします。

二〇一八年十一月
安藤優一郎


【目次】

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