その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は八田潤一郎さんの『 私たちはどう投資をするか? 11歳で投資を始めた大学生が見つけた大切な「人生とお金」の考え方 』です。
【はじめに】
大学生の私が本を書く理由
NISA(少額投資非課税制度)、iDeCo(個人型確定拠出年金)と人生100年時代、インフレ……と投資や資産形成に関する言葉が溢れる時代になりました。
でも、若者からするとその多くは不安を煽られているように感じられます。物議をかもした老後2000万円問題に始まり、昨今の物価高騰や賃金低下もあいまって、お金の心配こそが漠然とした将来の不安に通じていると思う人も多いはずです。
「老後に向けてちゃんと投資・資産形成しましょうね」と言われても、老後がかなり先のことだと、未来のために今を諦めろ、自分で何とかしなさい、と社会から冷たく突き放されたようにも感じます。
実際のところ、今を大切にしたい、楽しみたい、というのが大学生でもある私の素直な思いです。だからこそ、「楽しみながら投資はできないのか?」という問いを考え始めたのです。
もちろん、お金の不安は誰しもが抱くものですが、投資は本来、将来への期待や希望を持つからこその行動ですし、そうあるべきだと思います。
そこで本書では、等身大の視点、そして「若者視点」をコンセプトにしました。他の世代が羨むような若い人ならではの投資における強みを紹介しながら、ぴったりな投資方法を一緒に探していきましょう。
この本に書いてあること
私は「若者の金融リテラシー向上」を目的とする金融系学生団体の運営に携わるなかで、若い人たちの投資のリアルを観察し続けてきました。同時に、若者が投資しやすい環境づくりを推進したい想いから、金融業界や官庁との意見交換などにも積極的に取り組んでいます。
そのような活動のなかで思ったこと、それは私たち視点からの投資・資産形成に抱くイメージと社会が思い描くそれらは必ずしも同じではないということです。
社会は漠然とした不安を可視化して、それを解消するための資産形成としての投資を想定していますが、若者からすると、少し強引な結びつけではないかと思います。実際に、不安だからこそ先の見えない将来に投資したくない気持ちもあるはずです。そもそも投資は自己責任で行う行動である以上、自分自身の納得感はとても重要です。
だからこそ、誰かが決めた目的ではなく、自分のための投資目的が必要だと考えます。
本書は、若者が若者に向けて、投資のエッセンスをまとめたガイドブックです。
世界の政治経済や金融・投資をめぐる情勢は日々変化していますし、必要な情報はいつでもどこでも調べられる便利な時代になりました。移り変わりの多いノウハウやテクニックは最低限に、若い世代が持つべき投資の考え方・向き合い方といった揺るがないマインド部分に紙面を多く割いています。
長期投資は人生を通じた投資です。それは、先が見えない世界で、自分なりの正解を求め、一歩ずつ駒を進める作業です。だからこそ、自身が不安になったときはもちろん、大事な人にその大切さを伝えたいときにも読み返せる一冊を目指し、自分に今一度問いかけながら、読者の皆さんと一緒に考えたいと思い筆をとりました。
よくあるお金の本との大きな違い
本書の企画を相談いただいてから、ただの大学生の私に何が伝えられるのか悩み、書店のお金本のコーナーにたびたび足を運びました。そのなかでお金本の伝え方には、大きく2種類あることに気づきました。
一つがファイナンシャル・プランナー(FP)や金融関係者に多い「長期・積立・分散」など、理論をベースにして投資を解説するもの。もう一つは著名な投資家が、自身の成功談や経験をベースに投資への向き合い方を紹介するものです。
当然、どちらがいいということではありませんが、一読者の感想として、前者は「再現性は高そうだし自分にもできそうだけど、あまりワクワク感がない」、後者は「ワクワクして心は高鳴るけど、さすがに真似するのは無理かも」と感じました。
再現性もワクワク感も妥協したくないと思い、本書では、若者なら誰しもが持つ「投資できる時間の長さ」に焦点を当てて、長期投資をする必要性と、同時に投資を「楽しむ」視点を軸としています。
「時間の長さ」と「楽しむ力」が武器に
私自身の話をすると、小学生のときに株式投資の世界に初めて足を踏み入れました。以来、投資と向き合い、かれこれ10年以上が経ちます。その間に株式以外の債券・為替・コモディティ(貴金属など)・不動産・暗号資産など様々な投資商品にふれながら、様々な方法で運用をしてきました。時には大真面目に巷に転がっている怪しい商材を買ったり、オンラインサロンに入ったりもしましたし、もちろん失敗もたくさんありました。
それでもここ10年間で3~7倍程度に成長した日米の株価指数(平均値のようなもの)と同等またはそれ以上に毎年私自身の資産も確実に成長しています。回り道はしたけれど、「時間」を武器にできたわけです。
そしてこの武器を支え続けたのが投資の“楽しさ、面白さ”でした。
「長期投資が大事」「続けることが大切」と言っても、時には暴落や日々の忙しさで興味やモチベーションを失う局面が誰にも訪れます。そのなかで淡々と投資を続けることは想像よりもずっと難しいことです。
私は、誰しもが続けられる投資ができる社会を実現するために、所属する学生投資連合(Union of Student Investment Clubs:USIC)で投資の「楽しさ」、金融を学ぶ「面白さ」を伝える活動に取り組んでいます。
弊団体は元々投資を楽しんでいた学生が集まった団体ではありません。これの意味するところは、最初は投資の知識がなく、怖がっていた人も徐々に投資を楽しめるようになったこと、そして続けられているということ。つまり、投資をするには楽しむことが必要だということです。そして、投資が楽しいから継続できることを裏返せば、「楽しまなければ投資は継続できない」というわけなのです。
投資を楽しむことは投資、ひいては長期投資をするために必要不可欠だと考えました。
私が考える投資の楽しさの一つに、投資を通じて生まれる社会との新しい接点から金融経済を学べる点があります。そうすれば、視野が広がり、世界が変わって見えるでしょう。その楽しさを読者の皆さんにもぜひ味わっていただきたいと思い、本書では頑張って解説しました。
2024年からは新しいNISA制度も始まり、投資はさらに熱を帯びています。これまでよりも大幅に制度が拡充・恒久化され、使いやすくかつお得に投資できるようになったことは間違いありません。私自身も若年層の声を反映させるために、2022年末の新NISAを含む「資産所得倍増プラン」の取りまとめにも深く関わりました。政府分科会の委員の一人として、岸田首相(当時)らに直接提言をしましたが、新制度は予想をはるかに上回る豪華な内容です。そして現在も、さらなるアップデートの検討がなされています。
しかしながら、NISAは“投資の利益を非課税にしますよ”という制度にすぎません。投資を始める後押しにはなっても、利益が出なければ意味がないのです。
世間や制度、誰かが持つ熱ではなく、自分だけの投資熱を灯すために投資について、一緒に一度考えてみる、そんなきっかけに本書がなれば幸いです。
八田潤一郎
【目次】





