その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は西條辰義さんの『 実践フューチャー・デザイン 静かな社会革命 』です。「はしがき」をお届けします。
【はしがき】
フューチャー・デザイン(Future Design、FD)とは、将来世代が私たちに「ありがとう」と感謝したくなる社会をデザインし、それを実践することです。FDの核心は、「今」から「未来」ではなく、「未来」から「今」をデザインするというシンプルながら絶大な力を秘めた思考の変革です。
この視点転換が、私たちの思考を「できない理由」から「どうやって実現できたか」へと質的に変え、悲観的な現状から「希望の物語」を紡ぎ出すのです。FDは、人間本来の「将来可能性」を呼び覚まし、思考そのものが超越するのです。
FDは、個人の生活から社会全体まで、具体的な変化をもたらします。長年の喫煙習慣を断ち切った研究者、仮想の食料危機を機に「ライフ・デザイナー」へと転身した農家。岩手県矢巾町で「未来戦略課」が誕生し、まちづくりにFDを導入。宮崎県木城町では職員が独自のFD手法を開発し総合計画を革新。九州大学では約2700人の新入生全員がFDを体験。トヨタのみではなく「世界」を「しあわせ」にする豊田中央研究所のFD。省庁でもFDの採用。ウェールズの「しあわせ法」のコミッショナーのオフィスではじまったFDなど、多様な現場で実践され、関係者自身も自らを変革しています。
市場や民主制、科学・技術といった現代社会の仕組みも、残念ながら将来世代への配慮という点では限界を迎えています。だからこそ、私たちは、人間が本来持っている「将来可能性」を目覚めさせ、未来から「今」を変える「静かな革命」が、今、必要とされているのです。
本書は、その理論と豊富な実践例をわかりやすく解説します。この一冊を手に、あなた自身が「フューチャー・デザイナー」として、希望に満ちた未来を創造する一歩を踏み出してみませんか。
なお、既刊の『フューチャー・デザイン』(日本経済新聞出版、2024)は、「理論」と「実験」に重きを置いた内容でしたが、本書は「実践」のさまざまな例とそのノウハウについて述べたものです。
本書には多くの方々からアドバイスをいただきました。Jane Davidsonさん、文田恵子さん、花立孝美さん、平澤毅さん、Cornelius Holtorfさん、一原雅子さん、石井励一郎さん、大平英紀さん、岡本剛さん、大本エリナさん、高橋雅明さん、山本名美さんに深く感謝いたします。
2025年12月、京都にて
西條辰義
【目次】




