その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は 『そのビジネス課題、最新の経済学で「すでに解決」しています。仕事の「直感」「場当たり的」「劣化コピー」「根性論」を終わらせる』 です。

【まえがき】

眠れる学知を貪欲(どんよく)に使う

株式会社エコノミクスデザイン共同創業者・代表取締役 今井誠

 経済学をビジネスで活用する動きが、ようやく日本でも活発になってきました。この本はその最前線で活躍する経済学者が、それぞれにできることや、伝えたいことを語っています。目次を見ていただければ、おおよその雰囲気はつかんでもらえるかと思います。

 この本は6人で執筆していますが、わたし以外の5人は大学で研究する経済学者です。わたしたちはエコノミクスデザインという会社を通じ、先端経済学のビジネス実装に取り組んでいます。

 扱う案件は業界を問いません。顧客データを分析して離脱率を調べる。収益を最大化する価格を推定する。商品のよさを測るスコア関数を設計する。ESG投資に必要な非財務データをスコア化する。新しいサービスや商品市場を設計する。これらはすべて企業の収益に直結しています。そして取り組みの一部にすぎません。

 学問の世界には、ビジネスに有益な学知が多く眠っています。「眠っている」というのが、わたしの偽らざる感覚です。学問の世界とビジネスの世界はうまく接続されていません。ビジネスに有益な学知が使われないまま静かに佇(たたず)んでいます。もったいないなあと思っています。

 世の中に、「自分が直面する課題が人類初」ということは、まずありません。きわめて高確率で、過去に同じか類似した課題があり、先人たちが試行錯誤しています。

 学問はそれら過去の経験を整理して、理屈を体系化し、未来に使える道具として拵(こしら)えたものです。「車輪の再発明」で時間を無駄にしないためには、巨人の肩の上に立つ(standing on the shoulders of Giants)ことが賢明です。

 アメリカでは1990年代から、企業が経済学をビジネス活用するという動きが進んできました。日本ではこの動きが2020年頃から活発化してきましたが、まだ社会に浸透したというほどではありません。

 それにはさまざまな理由があるのでしょうが、わたしは一因として、貪欲さの違いがあると思っています。もう少し日本の企業、そしてそこで働く人たちは、学問を利益の源泉にしようと貪欲になればよいと思うのです。これまで使っていなかった分、伸びしろは大きいはずです。

 この本が、眠れる学知を貪欲に使うきっかけになれば幸いです。

2022年3月

【目次】

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