光電融合ブームの火付け役となっているのが「Co-Packaged Optics(CPO)」と呼ばれる技術だ。最先端の半導体技術を駆使して、光と電気による情報伝送を1つのパッケージ基板上で融合する。2030年ごろにかけて全盛期を迎える。本記事は、光電融合をテーマとする書籍『 光電融合 AI×半導体の技術革命 』(日経BP)から抜粋して掲載する。
光電融合の開発を巡っては、米NVIDIA(エヌビディア)と米Broadcom(ブロードコム)が先頭を走る。ブロードコムはCPOの実装技術をいち早く製品化し、2022年から少数顧客への納入を始めた。エヌビディアは2025年3月に同じくCPO製品を発表した。データセンター向け半導体の二大巨頭とされる両社が製品化に乗り出したことで、世界中の視線が光電融合に集まるようになった。
国内ではNTTが2027年1~3月にCPOの商用サンプルの提供を始める。同社は2019年に「IOWN構想」を掲げ、他社に先駆けてCPOを含む光電融合のロードマップを示してきた。ところがここへ来て、エヌビディアなど先行企業を追いかける格好となった。
半導体メーカーが製品化で先行
CPOは光電融合を実現するための手段の1つである。その名の通り、光学部品を1つのパッケージ基板上に半導体チップと混載(コパッケージ)する。ここでいう光学部品とは電気信号を光信号に変える光変調器や、光を受信して電気信号に変える光検出器などを指す。これらを一体化した部品を光エンジンと呼ぶ。
CPOは半導体の製造技術を巧みに利用して造る。中核となるのがシリコンフォトニクスと呼ばれる技術だ。シリコン(Si)のウエハーに微細な電子回路を描く技術を応用して、光の回路を構築する。シリコンフォトニクスの進歩によって光変調器や光検出器を小さなチップに集積できるようになった。パッケージ基板に載せられるサイズに小型化したことで、CPOが実現した。
半導体メーカーにとっては、CPOは既存の半導体製造装置を転用できるため参入しやすい。半導体の量産ノウハウを生かしやすく、大量生産や低コスト化につなげやすい利点もある。エヌビディアやブロードコムなど半導体大手がCPOになだれこむ理由がまさにそれだ。半導体の製造技術で光エンジンを手掛けられれば、これまで光通信企業が担っていた領域を自らの土俵に持ち込める。CPOの設計をエヌビディアなど大手半導体メーカーが担い、製造はファウンドリー(半導体受託生産会社)最大手のTSMCが引き受ける――。そうした分業が定着すれば、光の主導権を半導体業界が握ることになる。
光部品メーカーは巻き返し急ぐ
現在のデータセンターでは、光信号を伝送する部品であるプラガブル光トランシーバーがCPOにおける光エンジンの役割を果たす。プラガブル光トランシーバーのメーカーから見れば、CPOの登場は自らの事業領域が半導体業界に取り込まれる転換点になりかねない。
実はプラガブル光トランシーバーの部品では、日本企業が高いシェアを持つ。三菱電機や住友電気工業、日本ルメンタム(相模原市)などが代表格だ。日本ルメンタムは日立製作所の光学部品事業が分離独立した企業で、現在は米Lumentum Holdings(ルメンタム・ホールディングス)の傘下にある。
全ての通信領域をCPOで置き換えられるわけではなく、プラガブル光トランシーバーの市場もAIの普及に伴って伸びる見込みだ。ただし光部品メーカーは手をこまねいてはいない。
三菱電機や住友電工はCPO向けの光エンジンの開発を進めている。力を入れるのはシリコンフォトニクスとは別の道だ。インジウムリン(InP)という化合物半導体を使った光エンジンで、Siよりも高速かつ低消費電力であることを強みとする。住友電工執行役員伝送デバイス研究所長の小路元氏は、「高速なデータ伝送が求められる用途を狙いたい」と話す。2030年以降の市場参入を目指す。
[日経クロステック 2026年6月22日付の記事を転載・改題]
久保田龍之介、石橋拓馬(著)/日経BP/3300円(税込み)



