日本では、光電融合と聞けばNTTグループの次世代通信基盤構想「IOWN」を連想することが多い。だが、世界から見た日本の立ち位置は必ずしもIOWNに代表されるわけではない。むしろ、グローバル競争においては「部素材といえば日本」という見方が支配的だ。本記事は、光電融合をテーマとする書籍『 光電融合 AI×半導体の技術革命 』(日経BP)から抜粋して掲載する。

NTTグループの開発するCo-Packaged Optics(写真:加藤 康)
NTTグループの開発するCo-Packaged Optics(写真:加藤 康)
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 光電融合分野の最新技術が集結する、毎年開かれる2大国際イベントがある。光通信技術に関する世界最大級の展示会「OFC」(米国)と光通信技術の国際会議「ECOC」(欧州)だ。どちらも以前は光通信技術全般を扱っていたが、ここ数年は光電融合が主題となりつつある。

 これらのイベントにおける日本企業の存在感は際立ったものがある。例えば大手半導体メーカーの光電融合製品の開発品展示では、日本企業の部素材の採用をうたう例が近年目立つ。両イベントは光電融合関連企業にとっては重要な商談の場で、自社の最新技術をアピールする。

NTTはメーカーでありユーザー

 日本ではNTTグループのほか、富士通や京セラなどが光電融合デバイスの開発を進めている。新興のアイオーコア(東京・新宿)も光電融合デバイスを手掛ける1社だ。TDKや三菱電機、村田製作所は光電融合の最新形態であるCo-Packaged Optics(CPO)への参入を表明した。

 NTTグループは光電融合製品のメーカーであり、同時にユーザーでもある。ハイパースケーラーなどに光電融合デバイスを提供することを目指す一方で、AIデータセンターを運営する通信事業者としては光電融合デバイスのユーザー企業になる。

 光電融合技術で先行する米NVIDIA(エヌビディア)や米Broadcom(ブロードコム)と比べると、NTTグループの取り組みはユーザーとしての視点が入っている点が特徴だ。特に、高い信頼性や製品導入後の運用のしやすさを重視する姿勢がみられる。

 CPOの製品化ロードマップでは現状、NTTグループはブロードコムやエヌビディアに後れを取っている。ブロードコムやエヌビディアはデータセンター向け半導体で高いシェアを持ち、それを生かしたハイパースケーラーとの連携も密だ。半導体と光電融合デバイスのパッケージ製品を売り込みやすい。一方、NTTグループは通信事業を主力としており、ハイパースケーラーとの付き合いはこれまで密とはいえなかった。こうした逆風下、ユーザーとしての視点を生かしてシェアを拡大できるかが問われる。

日本企業、部素材で輝く

 光電融合向けの部素材を手掛ける日本企業は、長年にわたり開発を続けてきた例が多い。光電融合のコンセプト自体は1990年代に提唱され、2000年代から開発が活発化した。光電融合の第2次ブームともいえる現在、培ってきた技術を実製品に生かす段階を迎えた。

 光電融合デバイスを載せる「パッケージ基板」や光信号の通り道となる「光導波路」、光ファイバーと周辺部品などをつなぐ「コネクター」では、日本の部素材メーカーが非常に強い。光信号を生む「レーザー光源」や電気信号を光信号に変える「光変調器」などでは、日本勢と欧米企業がしのぎを削っている。

 これらは素材として化合物半導体が重要な部品だ。国内の化合物半導体メーカーは世界的にシェアが大きく、光電融合分野でも技術開発を積極的に進めている。

 特に半導体関連の企業が多い。パッケージ基板はAGCや大日本印刷(DNP)、新光電気工業(長野市)、京セラなど。光導波路はAGCやパナソニック、レゾナック、日産化学、住友電気工業など、レーザー光源は古河電気工業や住友電工、三菱電機などが手掛ける。光変調器は三菱電機やTDKなどが得意とする。

 半導体関連以外の銘柄では、PICコネクターでセンコーアドバンス米子会社のSENKO Advanced Components(センコー・アドバンスト・コンポーネンツ)、光ファイバーの支持材となるフェルールでは、古河電工の子会社となった白山(金沢市)が開発や大手メーカーへの納入を加速させている。

白山はCPO向けの高密度MT(多心)フェルールを手掛ける(出所:白山)
白山はCPO向けの高密度MT(多心)フェルールを手掛ける(出所:白山)
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 これら日本勢が光電融合向けの部品や部素材に強い背景には、得意とする半導体製造技術を生かしやすいことがある。光電融合の中核技術はシリコンフォトニクスと呼ばれ、半導体技術を光部品などの製造に生かす。日本はもともとウエハーやパッケージ基板など半導体の部素材で世界的に高いシェアを誇っており、そのノウハウを光電融合に生かせる。

半導体装置メーカーが相次ぎ参入

 光電融合に関して日本企業が存在感を発揮できる分野は他にもある。製造装置はその一つだ。CPOの台頭により、光電融合では複雑な製造技術が求められるようになった。

 例えばPICや光導波路の製造には新しいタイプの製造装置が必要になる。薄膜形成、露光・現像、ウエハー接合、チップピッキング、検査などに、伝統的に半導体製造装置に強い日本のノウハウが生きる。製造装置に使う材料でも、光電融合向けに新たな開発が必要だ。国内の半導体材料メーカーが知見を生かして開発を進める。

 半導体成膜装置大手のKOKUSAI ELECTRICや洗浄装置大手のSCREENセミコンダクターソリューションズ、検査装置(半導体テスター)大手のアドバンテストなどが光電融合向けの研究開発を進めている。今後も日本の半導体製造装置メーカーが相次ぎこの分野に参入することが予想される。

日経クロステック 2026年6月26日付の記事を転載・改題]

AI半導体に、「光電融合」と呼ばれる革新技術が押し寄せている。光電融合は今後どのように世界を変えるのか、主要プレーヤーは誰か、日本の勝ち筋は――。光電融合の基本から最新動向まで、豊富な図表を用いて分かりやすく解説する。

久保田龍之介、石橋拓馬(著)/日経BP/3300円(税込み)

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