その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は井出真吾さんの 『40代から始める 攻めと守りの資産形成』 です。



【はじめに】

 株価上昇・下落、円安・円高、食料品や衣料品の値上げ、ガソリン高騰、賃上げ、年金減額、iDeCo(イデコ)、NISA……など、私たちのまわりにはお金に関する情報があふれています。どれも大事なものですが、豊かな老後のためにもっとも大切なのは、結局のところ「人生の総収入」です。

 本書では、人生の総収入を「人生GDP」と名付け、豊かな老後を送るための人生GDPの増やし方、具体的には投資による資産形成や年金などの総合的な戦略を提言していきます。「無い袖は振れない」ではなく、「思うように振るには袖を大きくすればいい」というポジティブな発想こそが本書の基本コンセプトです。

 人生GDPは大きいに越したことはありません。ですが、年齢や生活スタイルなどに合わせて「無理なく増やす」ことも大事です。そのため本書では攻めと守りを区別しています。

 たとえば一口に「投資」といっても、攻めの投資もあれば守りの投資もあります。私が考える最強の攻めの投資(投機ではありません)は外国株式100%の高リスク投資、守りの投資は国内外の株式を30%以下に抑えた低リスク投資です。

 両者の間に無数のミドルリスク投資が存在するので、第5章にリスク水準別の最適ポートフォリオ(資産配分)を提示しました。バックテスト結果と併せて参考になさってください。また、最近は「ほったらかし投資」なども聞きますが、思わぬリスクを取らぬようメンテナンス(リバランス)が必要です。具体的な方法は第2章で詳しく解説しました。

 そうはいっても「投資はちょっと……」という人は、第7章から読むのもアリです。攻めるばかりが人生GDPの増やし方ではありません。真の資産防衛とは何か、複数の守り方を知った上で、背伸びせずに人生GDPを拡大する「攻めと守りのバランス」も重要です。

 たとえば、金融資産の1割~2割だけ株式に投資して残りは預貯金という方法もあります。金融資産全体の利回りを少しだけ高める「鉄壁の投資」です。

 防御策は多いほど安心なので、公的年金をフル活用して、一生モノの強力な守りを構築する3段活用法も解説しています。資産形成とは別に人生GDPを増やす方法です。安心して長生きするためにも、ぜひこの考え方を自分のものにしてほしいと思います。

 ただ、年金は強力な守りですが、それでも標準的な年金額では「ゆとりある老後」にはだいぶ足りません。試算したところ「新2000万円問題」が浮かび上がってきました。そこで、これをクリアするのに必要な「毎月のつみたて投資額」を逆算しました。ご自身の年齢と照らし合わせて活用していただけるよう、投資期間別の表にしてあります(第7章)。

 私は金融のストラテジスト(戦略家)として、20年以上、機関投資家・個人投資家向けの情報提供を続けてきました。なかでもデータ分析を駆使した戦略立案を得意としています。データは客観的で誰にでも共通です。その経験から得た重要な知見のひとつが「投資期間は長いほど有利」ということです。

 そのため本書のタイトルは「40代から」としていますが、30代以下はもちろん、50代以上の方々にも役立つ内容です。本書を読んでくださった方々の老後資金への不安が少しでも和らぎ、明日から本業に専念できることを願ってやみません。

2022年4月 ニッセイ基礎研究所 上席研究員 チーフ株式ストラテジスト
井出真吾

【目次】

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