その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。 今日は高井宏章さんの 『日経記者YouTuberと学ぶ 投資の教室』 です。


【はじめに】

 唐突ですが、この本は「これだけで、投資や経済のことが分かる」という便利な本ではありません。
 その代わり、この本には「これだけは、まず、投資や経済を学ぶときに知っておいてほしい」と常日ごろ私が考えていることを盛り込みました。

 投資のノウハウや経済・産業のテーマについて、詳しく解説した本はたくさんあります。
 でも、投資商品や制度はわりとコロコロ変わりますし、経済やビジネスは刻々と進化する「生モノ」です。「これだけで」という1冊を読んでも、何年かしたら、また別の「これだけで」が必要になります。

投資家として「軸」を作る

 あわてて「これだけで」に飛びつくより、「これだけは」という勘所、経済や投資を見極める視点を培ってみてはどうでしょうか。
 投資の世界も経済もたえず移りゆくものですが、時代を超えて変わらない本質も確かにあります。
 その勘所を一度押さえてしまえば、「後」が楽になります。
 たとえば日々のニュースで新しい経済の動きに触れたとき。
 自分のお金の使い方や借り方を考えるとき。
 投資や就職など、経済を通じて社会とかかわるとき。
 ちゃんとした「軸」をもっていれば、「ああ、そういうことか」と自分の頭と心(実はこれが大事)でかみくだいて、飲み込むことができます。

 少々自己紹介を。
 私は1995年に日経新聞に入社して以来、ほぼずっとニュースの現場で仕事をしてきました。一番長く見てきたのは、株式や債券などのマーケットとその周辺の証券会社や資産運用会社といった業界です。
 この間に、何千人(数えたことはありません)というプロの投資家やエコノミスト、アナリストに取材をしました。この本には、プロ中のプロたちが語ってくれた経験談や経済観、そしてそこから私自身が感じ、考えたエッセンスが詰まっています。

 マーケット関係のほかには、上場企業の取材と国際ニュースの担当をそれぞれ数年、担当した経験があります。2016年から2年間、ロンドンに駐在していたときには、英国のEU(欧州連合)離脱決定という歴史的瞬間に立ち会うことができました。ロンドンには3人の娘もつれて赴任しました。

YouTube動画と連携

 次にこの本の読み方・使い方について。
 それぞれの項目は独立して読めるコラムになっています。興味のあるテーマから拾い読みしてもらって構いませんが、もしお時間がゆるせば、最初から順に読んでみてください。特に、初めて投資や経済を学ぶ方には、「投資の世界」の全体像をつかむルート案内となるように構成してあります。

 「もっと深く知りたい」と思うテーマが見つかったら、ぜひ各項目にリンクを載せた動画コンテンツも活用してください。動画は日経電子版のマネーセクション 「マネーのまなび(通称まねび)」が展開するYouTubeチャンネル のものです。私が担当する「教えて高井さん」やマネー・エディター山本由里の「なるほどポンッ!」、ゲストを招いたライブトークのアーカイブなど、豊富なコンテンツがすべて無料でご覧になれます。
 その際は、チャンネル登録、高評価、よろしくお願いします(笑)。

投資と経済を楽しく、まじめに

「お金や経済の話は難しくて面倒くさい」
「投資なんてギャンブルでしょ?」
 そんな考え方が日本では根強いように思います。
 でも、それは誤解です。
 簡単だ、とはとても言えませんが、経済やマーケットは面白く、興味をもって向かい合えば、最低限の知識を身につけるのはさほど大変ではないはずです。
 そして、投資はギャンブルではありません。違いは本文の最初ですぐご説明します。
 自分自身のため、社会のためにも、個人が投資と向き合う時代が来ています。本書がそのナビゲーターになれれば、と願います。
 では、早速、「投資の世界」の地図を広げてみましょう。


【目次】

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