その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は西村仁さんの 『1冊で学ぶ材料・加工・図面の初歩』 です。
【はじめに】
■ 本書の狙い
本書は日経BPの専門情報誌『日経ものづくり』に2019年4月号から2022年2月号まで連載された「ものづくり基礎再入門」を1冊の本にまとめるに際して、構成の変更なども含めて大幅に加筆修正したものです。ただし連載の狙いと本書の狙いはピッタリ合っており、モノづくりのベースとなる基礎知識をお伝えすることです。
業種を問わずモノづくりでは、どの材料を使い、狙いの形をどの加工法でつくりあげるのか、またこれらのモノづくり情報をいかに前工程から後工程に正確かつスムーズに流すのかがポイントになります。
それを理解するための基礎知識が「材料知識」「加工知識」「図面知識」の3つになります。これは開発部門だけに必要な知識ではありません。品質管理部門であれば、図面の情報どおりに過不足なくつくるしくみづくりが使命であり、資材購買部門も図面を読んで適切な加工先に依頼を出さなければなりません。
営業担当者も顧客の求めに対して、どのように応えていくのかを考えるうえで、上記の3つの知識がとても強力な武器になります。
本書はこれら基礎知識として「知っておくべきこと」をまとめたテキストです。
■本書を読んでいただきたい方々
部門を問わず広くモノづくりに携わる方を対象に執筆しました。
[1]いままで基礎知識を学ぶ機会のなかった方々
[2]学生時代に学んだことがあるが、もう一度知識を整理したい方々
[3]新入社員や若手社員の教育教材として活用したい方々
読者には文系出身の方も多くおられると思いますので、専門用語はできるかぎり避けて、経験や事前知識がなくても理解しやすいように図表をまじえて紹介します。また基礎知識として「知らなくても支障のないもの」は思い切って省略、もしくは参考レベルとしての紹介に留めています。
■ 本書の構成
先に紹介した三大基礎知識として「材料編」「加工編」「図面編」の3部構成にしています。
「材料編」では、多くの種類がある中で、開発設計者には材料選定の知識を、モノづくり現場の担当者には、設計者や顧客が何を必要としてこの材料を選んだのかを理解できるようにまとめています。
「加工編」では、材料と同様に多くの種類がある中で、その特徴とともに弱点も紹介し、最適な加工法を選択できる知識の習得を狙っています。
「図面編」では、図面を受け取る読み手にとっての「図面の読み方」を中心に解説しますが、描き手にとっても大切なポイントは事例を用いながら紹介します。
材料編
第1章 材料の全体像
第2章 材料の性質の読み方
第3章 鉄鋼材料
第4章 非鉄金属材料と非金属材料
加工編
第5章 加工の全体像
第6章 削って形をつくる切削加工
第7章 型を使う成形加工と接合加工
第8章 特殊加工と熱処理と表面処理
図面編
第9章 図面の全体像
第10章 形をあらわす図法
第11章 形をイメージしてみよう
第12章 情報の読み方
■ 本書の読み方
どの章からでも読めるように構成していますが、はじめて学ばれる方は第1章の材料編から加工編、図面編へと順に読み進めてください。
各編の冒頭で「全体像」(第1章・第5章・第9章)を紹介することにより、大局をつかんでから細部を理解できるように工夫しました。
もし読んでいて理解が難しい箇所があっても立ち止まらずに、ざっと最後まで目を通してください。一度立ち止まってしまうと次のページを開かなくなるのがもったいないからです。そのうえで疑問点は先輩や上司の方にアドバイスをもらってください。
本書がモノづくりのお役に立てることを願っています。
■ JISの名称について
JISは2019年に「日本工業規格」から「日本産業規格」に改称されました。一般には「JIS」と「JIS規格」の2通りの呼び方がありますが、本書では、JISの Japanese IndustrialStandardsに規格の意味を含むことから「JIS」の名称に統一しました。
■ 図と表の扱いについて
本書では理解を深めていただくために、図と表を多く用いています。本来は図と表は別のものですが、章ごとの通し番号にするために「図」に統一して番号表記しています。
■ 図面の現JISと旧JISの扱いについて
図面はJISの製図規格に基づくことが基本になっています。その一方、JISの改正がおこなわれると、これまで作成した図面は旧JIS扱いになることや、新JISの内容があらゆる読み手に周知徹底されるまでは、図面運用に弊害をもたらすことから、改正後も旧JISを継続して使用する企業もあるのが実情です。
そこで本書の図面編では、現JISといまも日常的に使われている旧JISを紹介することと、旧JISのほうが主流で使われている規格については現JISを参考紹介する方針で解説します。
【目次】