その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は小笹芳央さんの『 組織と働き方の本質 迫る社会的要請に振り回されない視座 』です。
【はじめに】
現代は「VUCAの時代」(V:Volatility=変動性、U:Uncertainty=不確実性、C:Complexity=複雑性、A:Ambiguity=曖昧性)と言われて久しく、企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。そのような状況下で、経営やマネジメントや働き方などに関するバズワードが巷に数多く溢れるようになりました。
「働き方改革」「パーパス経営」「人的資本経営」「ティール組織」「ジョブ型雇用」「ダイバーシティ」「女性活躍推進」「キャリアデザイン」「ワークライフバランス」「ウェルビーイング」「リスキリング」「スポットワーク」「副業・兼業」などなど。ここで挙げたのは昨今の社会的要請やバズワードのほんの一部にすぎません。
皆さんは、2017年に働き方改革を狙って始まった「プレミアムフライデー」(=月末の金曜日は、15時に仕事を終えてノー残業に)というキャンペーンが、かつて世の中を賑わせたことを記憶しているでしょうか?
この「プレミアムフライデー」は、まったく浸透することなく早々に消えてしまいました。なぜなら、すべての業界で一律に月末の金曜日をノー残業デーにすることには無理があり、企業現場の実態を知らない経済産業省の官僚や政治家の安易な施策だったと言わざるを得ません。結局、得をしたのはキャンペーンを担当した大手広告代理店だけでした。
このように、「本質を見抜くことなく、表層的な流行に踊らされること」は、企業にとっても、働く個人にとっても、毒にこそなれ薬にはなりません。
私は上場企業の経営者であり、経営コンサルタントです。これまで、実に多くの経営者や管理職層や働く人々が、世の中のバズワードに惑わされ、右往左往している姿を嫌というほど目にしてきました。しかも明確な成果もなく。まさに「労多くして功少なし」といった状況です。先行き不透明な時代に向き合わなければならない不安感や他社に後れを取りたくないという意識が根っ子にあるのでしょう。
そうなってしまうのは、様々な事柄の「本質」を見抜いていないことが主な原因だと思います。
私自身は約40年間、主に組織人事の領域に身を置いてきました。リクルートでの勤務を経て、リンクアンドモチベーションを創業してからは、経営学、社会システム論、行動経済学、心理学などを下敷きに独自の組織変革技術「モチベーションエンジニアリング」を確立して、顧客企業の変革支援に努めています。
そのような経験から、昨今の様々なバズワードを取り入れる企業の姿勢には首をかしげたくなることが少なくありません。各企業は世の中の潮流に乗るためにバズワードに飛びつくのですが、いつの間にかその本質を見失い、「手段」が「目的化」してしまっているケースが多発しているからです。
このままでは、経営者や管理職層、働く人々が徒労感や無力感に襲われてしまうのではないかという憂いと、日本企業の国際競争力がさらに低下してしまうのではないかという危機感を抱くようになりました。私の過去の経験や現在の立場上、どうしてもこのまま世の風潮に対して沈黙していてはいけないという感情に突き動かされたのが、本書を執筆することになった理由です。
本書では、当社に蓄積されたデータや実際のコンサルティング事例、そして私自身の経験を通じて、昨今の社会的要請やバズワードの根源的な意味合い、つまりは「本質」に迫っていきます。
顧客企業との間で秘密保持契約を結んでいるため、本書で取り上げる実際の企業事例については具体的な社名を出せませんが、バズワードに対して、悪戦苦闘している実情をお伝えしたいと考え、いくつか紹介することにしました。
企業に寄せられる社会的な要請にどう向き合っていくべきか、労働市場の変化にどう適応していくべきか、どうすれば組織の変革ができるのか――。そのような悩みを抱いている経営層や管理職層、さらには自身のキャリアや働き方に悩んでいる一般社員の方々にも、本書を通じて解決の糸口を見つけていただければ私としても大きな喜びです。
それでは、一緒に社会的要請やバズワードの「本質」に迫る小旅行に出かけることにしましょう。
【目次】









